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要領の悪い男
しおりを挟むそれよりも、何なのこの人?
本来の目的は私とモッチーの関係を確認し、モッチーにAさんをお薦めすることなんじゃないの?いきなり好戦的なのはどうして?…ああ、アレか。友人のためというのは建前で、実は自分もモッチーのことが好きだったりするんだな。だから、あわよくばここで自分を売り込んで、選ばれようと目論んでいるに違いない。
いるんだよねえ~。普段は強気で『恋愛なんて興味ない』とか言ってるクセに、本当は誰よりも恋愛に焦がれてる人。こういうタイプは異常なまでに自己評価が高く、常日頃からどうして自分が選ばれないのかを不満に思っていて。自身で導き出す答えはいつだって、『他者が悪い』なのだ。
あんな女を選ぶ男は見る目が無い。
私を選ばない男なんてバカばっかり。
誰も私のことを分かってくれない。
安いプライドでバリケードを作っているクセに、近づいて来ない男たちを悪く言い。彼らと幸せそうにしている女性にまで因縁をつける面倒臭い女。
「あのね、私たちは吉助さんと兼友淑子さんの結婚式の二次会で幹事をするんです。毎日遅くまで残っているのはその打ち合せのためで、別に望月さんを狙っているからじゃ無い。そんなキーキー言ってたら、望月さんに嫌われますよ。この人、群れる女は苦手らしいから」
『えっ?』と4人同時に声を上げ、すがるような目をモッチーに向けた。
「うん、社会人にもなって1人で行動出来ない女性って正直言って気持ち悪いかな。もし付き合ったとしても何か問題が発生するたび、お友達に相談されちゃいそうで怖いし。そんなコはきっとトイレも1人じゃ行けないんだろうなあ。そういうのが許されるのは高校生くらいまでで、社会人としてどうかと思うよね…って、あはは、竹下さんたちがそうだとは言ってないよー」
笑顔なのに目が笑っていないモッチーを見て、女子軍団は明らかに凍り付き。それから無言のまま去って行った。そして、その翌日。
>望月遼太郎は女性を蔑視する最低男!
などという噂が社内を駆け巡ったのである。それが事実かどうかは然程重要では無く、そこに至るまでの対応のまずさが批判されてしまったのだろう。
そんなこんなで、本日。女子軍団を避けるため休憩室には行かないでおこうと決心した私は、帰り支度を終えてからトイレの個室に入った。すると化粧直しが目的の先輩方もドヤドヤやって来て、その件を声高に話し始めたのだ。
>企画開発部の望月くんっているじゃない?
>なんかいつもニコニコして優しそうだけど、
>『群れる女って怖い』とか言ったらしいよ。
>ええっ、何ソレ~?
>ほら、企画開発部の新人ちゃんたちって
>いつも4人で固まってるじゃない?
>ああ、あの純粋培養のお嬢様たちか~、
>確かにアレは怖いよねえ。
>泊りがけの新人研修の時もさ、
>部屋割りの変更を人事課長に直談判したのよ
>『私たち仲良し4人組を同じ部屋に!』って。
>嘘?!うわあ、修学旅行じゃあるまいし。
>そんなこと言っちゃう人たちなんだ?
>そうそう、地雷案件だって評判だったんだ。
>その彼女たちを怒らせるなんて
>望月くんも失敗したよね~。
>ほんと、もっと彼って
>要領のいい男だと思ってたのになあ。
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