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深まる関係
しおりを挟む「いや、一概にはそうと断言出来ないけど俺の場合はそうだったというだけで。望月さんはまだ若いから、そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。失敗して経験値を積んで、本当の相手に出会う…それは誰もが通る道だから。あ、でも、吉助くんと淑子ちゃんは例外だと思ってください。初恋相手同士でくっつくとか滅多に無いでしょ」
「あ~、確かにウチは参考になりませんね」
などと答えながら、少し吉助さんは誇らしげだ。そう、私は知っている。初恋同士で許婚となり、もうすぐ無事に結婚する2人が決して順風満帆では無かったことを。
必ず大なり小なり乗り越えるべき何かが有って、それを越えた勇者のみ幸せへと辿り着けるのだ。ベルトコンベアーみたいな恋愛道なんか無くて、視界の悪い獣道を自分で歩かなければ進めない。ハンパな気持ちじゃ恋愛には挑めないのである。
「苦しめ、望月…」
「えっ?!おい、俺を呪うなよ朝日さんッ。ていうか何で急に呼び捨て?!」
「決めた、今日から呼び捨てにする」
「いや、俺、前から思ってたけど、朝日さんて最強すぎない?!だってあの淑子様が唯一、心を許した女性社員なんだし。っていうか吉助さん、アナタの婚約者、びっくりするほど友人がいないんですけどッ。二次会に参加する社員、ほぼほぼ吉助さんの関係者ですよね??一応、淑子様と同じ部署の女性社員に声掛けしたけど、本当に仲イイのってコイツだけですよ?!」
ちなみに吉助さんは子会社で修業中の身だが、その子会社と本社の共同プロジェクトが進行中で最近はいつも本社に入り浸っているらしい。私と望月がワイワイ騒いでいる間に、内藤さんは吉助さんと何やら仕事の話で盛り上がってしまったので、仕方なく残った2人でボソボソと会話することにした。
「朝日さん、内藤さんを逃したら後は無いよ。せいぜい精進するんだね」
「そんなの余計なお世話です」
「でもまあ、確かに一理あるよな。イケメン俳優とかでもさ、そんな美人じゃない女性と結婚すると好感度がアップするし」
「望月さんって好感度とか気にする人?」
「うーん、…しない」
「じゃあ美人でもいいでしょ…好きな相手なら」
「朝日、いいこと言うじゃん」
「なぜ急に呼び捨て?」
「だってそっちが先に俺を呼び捨てにしただろ」
「ええ、まあ、別に構いませんけどね」
「うん、じゃあ、朝日ッ」
「はいよ、望月ッ」
恋愛が絡まない関係というのは、とても気楽で。この日を境に我らは更に距離を縮め、しょっちゅう会うようになっていくのである。
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