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新しい出会い
しおりを挟む「…朝日さん、俺のこと知ってるかな?」
「えっ?はい。企画開発課の望月さんですよね」
重役の息子でしかも仕事も出来ると評判の男だ。以前、私が参加したお見合いパーティーにこの人も参加しており。たまたまそこで一緒になった吉助さんから気に入られたとかで、プライベートでもよく飲みに行ったりしているらしい。
「あのさ、もうすぐ吉助さんの結婚式だろ?披露宴もそうなんだけど二次会もメッチャ人数が多くて、日程をずらして会社関係と友人関係とで分けることになったんだ」
「はあ、そうなんですか」
そんなこんなで、新郎側の会社関係の二次会は望月さんが仕切ることになったのだと。そして、新婦側の幹事候補が私しかいないなどと言う。ちなみに新婦となるヨッちゃんこと淑子さんは今、吉助さんと共に会場内を見回り中だ。
「というワケで、申し訳ないけど幹事をお願い出来ないかな?」
「いいですよ、喜んで」
社交的で理知的で器用な男…そんな印象の望月さんと私はこの後、急接近していくのである。
私思うに、人との関わり合いの醍醐味は離れていた距離が縮まるその瞬間ではないだろうか。見知らぬ他人同士が互いのことを少しずつ理解し始め、相手が自分の味方になっていくような。そう、まるで自分と相手のテリトリーから境界線を無くすことで、自分のテリトリーも広がるような。そんな解放感にも似た不思議な感覚。
内藤さんは私にとって、
その喜びを初めて与えてくれた異性だ。
ぐんぐん近づくその距離を私たちは確かに感じていはずなのに、本格的に交際開始してからはそれが停滞してしまったように思う。片想いの頃はとにかく相手のことが知りたくて、時間さえあれば会いたかったし、どんな小さなことでも知りたがった。
ところが両想いになった途端、身軽だったはずの2人に家族や将来といったような重りが突然ぶら下がり。自分たちのことだけ考えていてはダメなのだと、悲しい現実を突きつけられて。…恋愛初心者の私には、その停滞がとても辛かった。
だからというワケでも無いが、色恋が絡まない望月さんとの時間はあの頃の内藤さんとの時間を彷彿とさせてくれて。疑似恋愛とはまた違う、ときめく時間というか。とにかく、段々と会うのが楽しみになっていったのである。
「あのさ、俺、メンクイだから。朝日さん、先に言っておくけど惚れても無駄だぞ」
「はあっ?!私、こう見えて彼氏いるんでッ。確かに男のクセして綺麗な顔してるけど、女が全員アナタを好きになるとか自惚れないでよッ」
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