上 下
24 / 56

あちらの事情

しおりを挟む
 
 
 いきなり受けた謂れのない誹りに、戸惑いを隠せない私。

「やっぱり、その男とそういう仲だったんだ?」
「『そういう仲』とは、愛子ちゃんと一緒に冬物バーゲンへ行った帰り偶然にも内藤さんと再会して中華料理を食べた後『美味しかったよねえ、また今度会えるといいなあ』とか約束もしないまま解散しようとしていたことを指しますか?それとも別の意味が含まれますか?」
 
 >香奈ちゃん、息継ぎして。
 
 内藤さんのアドバイスに『すうはあ』と一呼吸入れていると、尚も大介さんが責めてくる。
 
「そいつは女を平気で弄ぶんだぞ?男慣れしていない朝日なんか平気で騙せるんだ」
「え?でもゴメンナサイ、大介さんだって私を騙してましたよね?人妻である奈々さんと腕を組んだままラブホテルから出て来ておきながら、今さら何も無かったとは言わせませんよ」
 
 いつもは従順な私が反論したため、大介さんは激しく動揺しているようだ。
 
「俺は…そう、俺は相談を受けていたんだ!奈々さんが結婚生活に悩んでいるからと呼び出しを受けて…その、人目が気になると言うから仕方なくあのテのホテルに入ったんだよ!ほら、料金が安いだろ?…だからだよッ」
「嘘でしょ」
 
「嘘じゃないッ」
「相談だけなら、腕を組む必要は無いのでは?」
 
「必要は有る!」
「いったいどんな必要ですかねえ…」
 
「どんな必要かなんて答える必要は無いッ」
「はいはい、何かもうどうでもイイですけど」
 
 さあ、ここで別れを切り出そうと決意したそのタイミングで、奈々さんが突然口を挟んでくる。
 
「あの…香奈ちゃん、このことは…ウ、ウチの旦那に言わないでくれる?こんなことに巻き込んで本当に悪いんだけど…」
 
 それは不倫を認めているとも受け取れるのだが、そこを突くのはヤメておこう。
 
「ちなみに今日、コーチは何してるんですか?」
「…てる」
 
 蚊の鳴くようなか細い声に『はい?!』と問い返すと、大介さんが代わりに返事をしてくれた。
 
「コーチ、また女子マネに手を出してるんだよ」
「ええっ?!」
 
「俺らが知ってるだけでもう3人目だ。遠征だとか合宿だとかすぐバレる嘘を吐いてさ、たぶん今晩も浮気相手と一緒だろうな」
「だ、で、もうコーチ40歳でしょ?」
 
「正確には38歳だよ。ほんと懲りないだろ?」
「そんなの、離婚すればいいじゃないですか…」
 
 再び奈々さんがボソボソと答える。両親の大反対を押し切って結婚したので離婚は出来ないのだと。しかも前妻との間に3人子供がいるため、奈々さんとの間には子供を作らないという約束をコーチと交わしているそうだ。
 
 うわあ…なんか泥沼チックだわ。でもまあ、よくある話よネ…などと、他人事な私に向けて大介さんは再び言う。
 
「分からないのか、朝日!お前もこの男と付き合っていたら奈々さんの二の舞になるんだぞ?!浮気癖はなかなか治らない…というか、そもそも人の本質なんてそう簡単には変わらないんだッ。こうなった今では俺と別れるつもりだろうが、だからと言ってその男と付き合うのは許さない。近い将来、絶対に泣くことになるからな!!」
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お屋敷メイドと7人の兄弟

とよ
恋愛
【露骨な性的表現を含みます】 【貞操観念はありません】 メイドさん達が昼でも夜でも7人兄弟のお世話をするお話です。

孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」 私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!? ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。 少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。 それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。 副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!? 跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……? 坂下花音 さかしたかのん 28歳 不動産会社『マグネイトエステート』一般社員 真面目が服を着て歩いているような子 見た目も真面目そのもの 恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された × 盛重海星 もりしげかいせい 32歳 不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司 長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない 人当たりがよくていい人 だけど本当は強引!?

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【R18】狂愛の獣は没落令嬢の愛を貪る

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
 時は大正。  華族令嬢・猪股椿は、婚約破棄され見捨てられ、没落寸前まで追い詰められていた。  元婚約者・桜庭忍に娼館に売られる寸前、椿を助けに現れたのは、かつての従者であり大富豪に昇り詰めた男・藤島清一郎だった。  清一郎のおかげで娼館行きを免れた椿。復讐が目的だと言い張る清一郎が椿に望んだ対価は、彼女自身――。  倒錯する想い。  彼の本当の目的は、ただの復讐か、身体目当てか……それとも――? ※設定はふんわりしていますので、ご了承いただける方のみお読みください。 ※読者様によってはメリバだと思うかもしれません。ヤンデレ・サイコパス・近親相姦要素ありが無理な人はブラウザバックをオススメします。

快楽のエチュード〜父娘〜

狭山雪菜
恋愛
眞下未映子は、実家で暮らす社会人だ。週に一度、ストレスがピークになると、夜中にヘッドフォンをつけて、AV鑑賞をしていたが、ある時誰かに見られているのに気がついてしまい…… 父娘の禁断の関係を描いてますので、苦手な方はご注意ください。 月に一度の更新頻度です。基本的にはエッチしかしてないです。 こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。

モブ令嬢としてエロゲ転生したら幼馴染の年上隠れS王子に溺愛調教されて困ってます

あらら
恋愛
アラサー喪女が女性向けエロゲの世界にモブとして転生した!

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

処理中です...