朝日家の三姉妹<1>~香奈の場合~

ももくり

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救ってくれた人

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 一瞬、誰に言っているのか分からなくて。
 ひたすら愛子ちゃんと顔を見合わせる。
 
 えっと、『彼氏』というんだから質問の対象者は女子だな。この定例会に参加している女子は、愛子ちゃんと私の2人だけ。その愛子ちゃんが斉藤さんと付き合っていることは、周知の事実。
 
 と、いう、こと、は??
 
「わ、私?!」
「そう、俺、香奈に言ってんだけど」
 
 いや、でも、大介さんと付き合うと決めてから、今日やっと会えたし。そんな短期間でいったいどんな変化が?それは有り得ないよ~。って、じゃあ前回の定例会から2カ月の間で変わったこと。
 
 …ああ、そうか、内藤さんだ。
 私は彼によって変えられたんだ。
 
 そして力強く頷く。
 
 そっか、そうだよな。だってずっと男という生き物に偏見を持って生きて来た。そもそもあの親戚のオジサンが悪いのだ。
 
 >男はな、美人に優しくブスには厳しいんだぞ。
 >男はな、誰でも美人が好きなんだ!
 >男はな、ブスなんかに一切興味が無いからな。
 
 そんなことを言われれば、男性に対して一線を引くしか無いではないか。だから『興味の無い女と話はしたくないでしょ?』と、『いいですよ、私なんか無視すれば』と、卑屈になってしまったワケで。
 
 >ほんと面白いよなあ、香奈ちゃんは。
 >俺は香奈ちゃんのこと可愛いと思ってるよ。
 
 一緒にいると楽しいと、また会いたいなと。こんな私を認めてくれたから、あの人が傍にいてくれたから、変われたのだと思う。
 
 じーん。
 改めて感動する。
 
 内藤さんという存在が、まるで守護霊のように私を優しく包んでくれる…そんな錯覚までしてしまいそうだ。あの人はいつも私を見ると嬉しそうに笑う。ただでさえタレ目なのにもっと目尻が下がり、口元もフニャッと緩んで。綺麗ごとを並べられるよりも、あの表情でスンナリ信じられたのだ。
 
 …本当に可愛いと思ってくれていると。
 
 それはふとした会話の合い間だったり、何かを食べて美味しいと喜んだ時だったり、お説教を聞かされてフンフン頷く最中だったり。とにかく何をしても彼は嬉しそうに笑った。たぶん、それが自信に繋がったのかもしれない。
 
 こんな私でも愛されるのだと。いや、もちろんそれが恋愛というカテゴリーに括られない感情だったとしても、とにかく内藤さんのお陰で私は救われたのだ。

 
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