上 下
4 / 56

師匠と弟子の関係

しおりを挟む
 
 
 そう言えば、定期的に大介さんを含む男性陣と集まっていたが、彼らが紳士なのか、それとも私がこんな調子だからかそういうコアな話題は一切したことが無かったな。
 
 貴重だ。
 
 この内藤さんのように嘘偽りの無い意見を言う男が今までいただろうか?…いや、いない!!私に必要なのは、こういう男なのである。ガシッとその右手を私の両手で包み、懇願するかのようにして私は訴えた。

「じゃ、じゃあ内藤さんのことは諦めますっ!でも、また会ってくれませんか?…その、えと、指導!絶対にこのままじゃ誰とも付き合えないと思うんですね、だから男心のレクチャーと、いつか誰かとそういうことが出来るまでの長い道のりを時には励まし、時には叱咤して、私が道を踏み外さないよう見守って欲しいんですっ」
 
 パカーッと内藤さんの口が開けっ放しになった。
 
 どうやら突拍子もない依頼に呆れているらしい。その眉がまるで単独の生き物であるかのようにピクピクと微妙な動きをし、そして一瞬だけ瞼を閉じてから内藤さんは力なく話し出す。
 
「なんか…、負けたよ。香奈ちゃんみたいなコに勝てる気がしない。というかさキミは30歳の穢れたオッサンが失ったものを全部持ってるんだな。いいよ、頑張って恋をしな。オッサンはそれを見守っててあげよう」
「やったあ!有難うございまーす」
 
 経験豊富な遊び人の男と、交際人数ゼロの処女。
 
 普通に生きていれば絶対に交わらない2人が、こうして関わることとなり。数カ月後には誰よりも仲良くなってしまう。なにせ内藤さんは話題豊富で、どんな言葉を投げても的確に答えを返してくれるのだ。
 
 内藤さんの方も、男女の関係にならず純粋に会話だけを楽しむのは私が初めてのようで。共通の話題が増え、タイプが違うからこそ互いに提供する話題はいつも新鮮で興味が尽きず。2人だけの行きつけの店も幾つか出来て、会えない日は電話で語り明かすことさえ有った。
 
 なんかもう、このまま彼氏なんて出来なくてもいい、内藤さんと一生こんな感じでいられれば…などとバカなことを思い始めていた頃、久々に参加した飲み会で久々に大介さんと会うのだ。狙ったワケでは無いが、たまたま隣席になっていつもより飲み過ぎた感じの彼がボソリと呟く。
 
「あのさあ、俺、付き合ってた彼女と別れたよ」
「…はァ、そうなんですか」
 
 さすが私が好きになった人と言うべきか、
 大介さんには切れ目なく彼女がいるのである。
 
 だからこのテの話はよく聞かされていたし、今更『じゃあ次は私を!』とか言う気も無い。どうせ私は恋愛対象にはならないのだし、もしなっても上手く対応出来る気がしない。だから7年間もこの状態のままなのだ。ヘイヘイと適当に相槌を打っていると、予想外の質問が発せられた。
 
「朝日って例の出会いパーティーで知り合ったあの男とまだ続いてんの?」
「え?ああ、内藤さんね?会ってるよ~。あの人ね、すっごくいい人!」
 
 まだまだ内藤自慢をしようと思っていたのに、
 それを遮るかのようにして大介さんは言う。
 
「つ、付き合ってんの?」
「あはは、そういうんじゃ無いよ。あんなモテ男、私なんか相手にしないって。なんか師匠と弟子みたいな感じなんだよね」
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる

ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。 だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。 あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは…… 幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!? これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。 ※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。 「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。

【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~

蓮美ちま
恋愛
最低最悪な初対面だった。 職場の同僚だろうと人妻ナースだろうと、誘われればおいしく頂いてきた来る者拒まずでお馴染みのチャラ男。 私はこんな人と絶対に関わりたくない! 独占欲が人一倍強く、それで何度も過去に恋を失ってきた私が今必死に探し求めているもの。 それは……『Dの男』 あの男と真逆の、未経験の人。 少しでも私を好きなら、もう私に構わないで。 私が探しているのはあなたじゃない。 私は誰かの『唯一』になりたいの……。

〈短編版〉騎士団長との淫らな秘め事~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~

二階堂まや
恋愛
王国の第三王女ルイーセは、女きょうだいばかりの環境で育ったせいで男が苦手であった。そんな彼女は王立騎士団長のウェンデと結婚するが、逞しく威風堂々とした風貌の彼ともどう接したら良いか分からず、遠慮のある関係が続いていた。 そんなある日、ルイーセは森に散歩に行き、ウェンデが放尿している姿を偶然目撃してしまう。そしてそれは、彼女にとって性の目覚めのきっかけとなってしまったのだった。 +性的に目覚めたヒロインを器の大きい旦那様(騎士団長)が全面協力して最終的にらぶえっちするというエロに振り切った作品なので、気軽にお楽しみいただければと思います。

俺様エリートは独占欲全開で愛と快楽に溺れさせる

春宮ともみ
恋愛
旧題:愛と快楽に溺れて ◆第14回恋愛小説大賞【奨励賞】受賞いたしました  応援頂き本当にありがとうございました*_ _) --- 私たちの始まりは傷の舐めあいだった。 結婚直前の彼女にフラれた男と、プロポーズ直前の彼氏に裏切られた女。 どちらからとなく惹かれあい、傷を舐めあうように時間を共にした。 …………はずだったのに、いつの間にか搦めとられて身動きが出来なくなっていた。 肉食ワイルド系ドS男子に身も心も溶かされてじりじりと溺愛されていく、濃厚な執着愛のお話。 --- 元婚約者に全てを砕かれた男と 元彼氏に"不感症"と言われ捨てられた女が紡ぐ、 トラウマ持ちふたりの時々シリアスじれじれ溺愛ストーリー。 --- *印=R18 ※印=流血表現含む暴力的・残酷描写があります。苦手な方はご注意ください。 ◎タイトル番号の横にサブタイトルがあるものは他キャラ目線のお話です。 ◎恋愛や人間関係に傷ついた登場人物ばかりでシリアスで重たいシーン多め。腹黒や悪役もいますが全ての登場人物が物語を経て成長していきます。 ◎(微量)ざまぁ&スカッと・(一部のみ)下品な表現・(一部のみ)無理矢理の描写あり。稀に予告無く入ります。苦手な方は気をつけて読み進めて頂けたら幸いです。 ◎作中に出てくる企業、情報、登場人物が持つ知識等は創作上のフィクションです。 ◆20/5/15〜(基本)毎日更新にて連載、20/12/26本編完結しました。  処女作でしたが長い間お付き合い頂きありがとうございました。 ▼ 作中に登場するとあるキャラクターが紡ぐ恋物語の顛末  →12/27完結済 https://www.alphapolis.co.jp/novel/641789619/770393183 (本編中盤の『挿話 Our if story.』まで読まれてから、こちらを読み進めていただけると理解が深まるかと思います)

伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】

ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。 「……っ!!?」 気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

この恋だけは、想定外

青砥アヲ
恋愛
工藤清流(くどうせいる)は中学のときに両親を亡くして以来、叔母夫婦に引き取られて育った。 訳あって大学を休学した影響で就職活動が上手くいかず、お見合い結婚をするよう叔母夫婦から言い渡されてしまう。 そしてお見合い当日。 偶然再会したのは、以前海外旅行先で助けてもらった維城商事の御曹司、加賀城洸(かがしろたける)だった。 出世と女除けのためにとりあえずの結婚を望む洸は、就職の面倒をみる見返りにと強引に話を進めようとするも、清流は「絶対結婚はしない」と反発する。 試用期間6ヶ月を条件に、一つ屋根の下で暮らすことになった2人。 少しずつ距離が縮まっていくかに思えたが…? ◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。 ◆他にエブリスタ様にも掲載してます。

処理中です...