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内藤さんは正直者
しおりを挟む当然YESと答えて貰えると思っていたのに、内藤さんは申し訳なさそうな表情を私に向けた。
「ダ、ダメですか?」
「えっと、あのさ、香奈ちゃんって今まで彼氏がいなかったってことは、その、男性経験も…」
「無いです」
「うわっ、そっか、やっぱりかあ。ごめん、女に恥をかかせるのは不本意だけどでも…断るよ」
どうやら私は大いなる勘違いをしていたらしい。だってよく耳にしたのである。『男は好きな女じゃなくても平気で抱ける』と。そしてこうも思っていた。『男は処女が大好き』だと。何故なら銀行の待合室で読んだ週刊誌の記事に処女をオークションにかけた人がいて、非常に高額で売れたと書いてあったからだ。
だから内藤さんも大喜びで承諾してくれると思っていたのに、こんなハッキリキッパリ断られるとは。
恥ずかしいというよりも自分の女としての部分を全否定されたような気がして、なぜだか妙に悲しくなった。
「いや、そういう顔しないで。言い訳をさせて貰うとさ、俺、全然女には困って無いんだよね。それに香奈ちゃんとは今日会ったばかりだよ?よく知らない相手と一晩だけ過ごすとか怖いし」
「えっ…?あの、失礼ですけど、内藤さんってそういう関係に慣れているように見えますけど」
腕組みしながらブンブンと激しく頷き、内藤さんはニカッと笑った。
「仰る通り、ワンナイトラブは得意だねえ。でも、その相手は後腐れの無い女を選んでるよ…いかにも遊び慣れているような感じの女をね。そんな軽い相手と恋愛関係になるつもり無いし、逆に言うと地雷案件は極力避けたいんだなあ」
「地雷…ですか?」
悪びれもなく内藤さんはスラスラと説明する。
「悪いけどさあ、香奈ちゃんって真っ新だろ?そんなのに手を出したら、ズブズブに惚れられそうで怖いじゃん。キミ思い込み激しそうだし」
「私、内藤さんを好きになったりしませんけど」
「いやいや、ヤッてみたら情が湧いたりするんだよな。…初めてを捧げちゃう相手なんだぞ?脳内で勝手に美しい思い出にしようとして相手の姿に補正をかけちゃうモンなんだって」
「補正…ですか」
しかしこの人はなんて正直なのだろうか。
正直過ぎて、段々おかしくなってきた。
「それにさあ、処女って面倒臭いんだよ。ゆっくり解して、『痛くないですか~?』ってちょっとずつちょっとずつ相手に気を遣うのな、しかもその一回が今後の比較対象になるとかさ、責任重大過ぎて全然こっちは楽しくないじゃん。
ハッキリ言っておくけど俺、セックスでストレス発散してるから。だから手軽に気持ち良くなりたいんだよね。そんな気を遣ってご奉仕するとか、絶対無理!
もしその面倒なことをするとしたら、本気で好きになった女にだけするよ。香奈ちゃんも最初は好きな男にして貰いな」
ち~ん
頭の中でおりんの音がした。ほら、あの仏壇に置いてある黄金色のご飯茶碗みたいなアレだ。何となくこの話題の終了を告げられたと同時に、有り難いご高説を拝聴した気がしたのである。
こ、これが男の本音か。
どうやら私は、週刊誌などの偏った情報のみで男という生き物を一方的に決めつけてしまい、生の男の意見というものを知らなかったようだ。
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