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45.圭くんの生立ち
しおりを挟む人間、驚き過ぎると声が出なくなるというのは本当らしい。鯉のごとく口を開けたり閉じたりしていた私だったが、しばらくして漸く言葉を発することが出来た。
「そっか、今日は仏滅だったわね」
「えっ、キヨちゃんそういうの信じるタイプ?」
「信じるに決まってるでしょ!だって仏滅とはお釈迦様の亡くなった日で、万事が凶となる日なのッ」
「ああ、ハイハイ」
「ハイは一回でいいのッ」
「ハイイッ」
だいたいさあ、彼氏と一緒にお風呂でイチャイチャしているところを、その父親に見られたんだよ?!それだけでも衝撃なのに、何事も無かったかのように『どうぞ続けてください』とか言われちゃうし。っていうか、よく考えてみると圭くんのお父さんっておかしくない?いや、よく考えてみなくても絶対におかしいよッ。
そんでもって、この状況で平然と胸を揉んでくる圭くんもどうかと思うッ。
「…そうじゃない」
「えっ?俺どこか変なところ揉んだ?こ、ここかな?それともここ?あ、ひょっとして乳首を捏ねた方が良かったとか?えっ、それも違う?じゃあ、いっそのこと吸っちゃおっか」
オイコラ、思わず『あんっ』って喘いじゃったじゃないの!くっそ、感じ易い自分の体が憎い。
「違うってば!まず、お義父様の立場になって考えてみましょうよ。ハイ、長旅で疲れて帰って来ました。久々の我が家なのに、息子は入浴中でスグには出て来れません。よし、じゃあ驚かせてやろうかな。というワケで浴室に顔を出してみたところ…なんと!見知らぬ女性が一緒に入っていました!
ワオ!リアリィ?
ここんとこは海外生活の長いお義父様に合わせて英語にしてみたわ。えっと、とにかくこんなはずじゃなかったんだ、許しておくれ我が最愛の息子よ!…と瞬時に思ったでしょうね。そして、それと同時に『なんだよあの女、さっさと服を着て俺に挨拶に来ねぇのかよ』と普通なら思うはずでしょう?」
圭くんはエロタイムを中断されたことが不服なのか、口を尖らせて反論してくる。
「違うよ。だってウチの父親、普通じゃないし。ていうかさ、ウチの両親は2人ともまともじゃないから。そもそも俺、育児放棄されてたんだ。物心ついた頃からさ、謎のオバさんが食事とかの世話をしてくれてて。しかもそれ、一日のうちの数時間だけなんだぞ。中学に入ると同時にそのオバさんすら来なくなって、テーブルの上に1カ月分のお金がポンと置かれてたという」
「へ?あの…、じゃあご両親はいったい何処で暮らしていたワケ?」
どうやら圭くんは、自分が育った環境に負い目に感じているらしく。一瞬だけ口籠り、それから再び口を開く。
「母親の方は元々イギリスの人で、俺を産んですぐそっちに帰国した。父親の方は研究に命を懸けていたから、研究所に寝泊まりしていたと聞いている。つまり2人とも家庭というものに興味が無いというか、それはいま現在も進行形だな。ねえ、キヨちゃん。親らしいことをして貰っていないのに、こちらが息子らしいことをする義理は有ると思う?無いよね?だから俺はあの人をいないものとして、通常どおりの生活を続けるんだ」
こ、これは。
圭くんが意外とヘヴィな人生を送ってきたことを知り、戸惑いを隠せない私。なんと答えればいいのか、もう頭の中がウネウネだ。
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