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<茉莉子>
その88
しおりを挟むだって妖魔にソックリだから。分身だと言われても納得なその容姿は絶対、
「次男の政親です」
デスヨネー。
慌ててソファから立ち上がり、私も挨拶する。
「初めまして。この度、榮太郎さんと婚約した小椋茉莉子と申します」
友好的な関係を築こうと思ったのに、さすがは妖魔の分身、いきなりこう言うのだ。
「うーん失格。アンタじゃ兄に釣り合わないよ」
思わず目が泳ぐ。
えっと、分かる、分かり過ぎるよ。
見た目でしょ??
天使エイタローと地味女マリコでは、ビジュアル格差が大き…
「ああ見えてウチの兄、すげえ純粋だから」
「えっ、あ、はい。それは知っています」
「世のためヒトのために働こうとか、本気で思い込んでいるような男だから」
「ええ、それも、もう…。本当にカワユイ性格ですよねー」
「『ですよねー』じゃないっつうの」
「あのう…。政親さんは私に対して、何故そんなに攻撃的なのでしょうか?」
正に男版・妖魔!!
「兄貴を本当に好きなら文句は言わないんだよ。でもアンタ、金が目当てなんだろう?まったくウチの母も甘いよな~。165人の中から選んだとか言っておきながら、本人の身辺調査しかしていないんだから」
「…うっ」
そ、そこ??
見た目の話じゃ無いのね??
「アンタんとこの会社、先代社長の無茶な業務拡大のせいでかなりヤバイ状態なんだってな。だから娘を差し出して帯刀グループとの提携でどうにか持ち直そうとしているそうじゃないか」
「はあ、よくご存知で…」
呑気な返事が癇に障ったらしく、クワッと牙を剥くかのように義弟は怒り出す。
「ウチの兄貴は超最高なんだよッ!!優しくて、頭が良くて、しかもカッコイイんだ。あの人、生まれてから誰の悪口も言ったことが無いからなッ。メッチャ心が広いっつうの!!
分かるだろう?世界イチ愛されるべき男なんだ。
そのスーパー・ウルトラ・最高に素敵な兄貴が、なぜ金目的の女と結婚しなきゃいけないんだよ。
生まれた時からずっと、周囲からプレッシャー掛けられまくりでさ、のほほんとしてるように見えるけど、メッチャ苦労してんだぞ?!せめて結婚だけでも一番好きな女と一緒になって欲しいじゃないか。
なあ、俺の言うこと分かるよな?アンタが兄貴を大して好きじゃないってことは、既に調査済みなんだよッ。
お願いだ、兄貴の為に身を引いてくれ。会社を立て直したいのなら、俺も帯刀の人間だ、幾らでも支援することを約束しよう。頼む、兄貴には幸せになって欲しいんだよ…」
うう、何この義弟。
メチャクチャお兄ちゃん大好きじゃない?
「た、確かに最初は好きじゃなかったですけど、今はすごく好きです。だから、わ、別れません」
「はあ?!こんなに言ってもまだ…」
再び牙を剥かれ、対処に困っていると誰かが私と義弟の間に割って入って来た。
…そう、妖魔ことお義母様である。シュバババッと登場し、存在感たっぷりにお義母様は言うのだ。
「政親、余計なことはしないで頂戴。この1番は私が選んだ逸材なのよ」
「逸材って…母さんも聞いてただろ?コイツの会社、潰れかけててさ、それを立て直す為に結婚するんだぞ!」
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