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さよならコトリ⑧~富樫side~
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※誠に申し訳ございません!!『さよならコトリ⑤~⑧』を未投稿のまま、『さよならコトリ⑨』を手違いで先に公開しておりました。先ほど⑧まで公開しましたので、改めてお読みいただけると嬉しいです。ペコペコ。
────
ブブブ…。
ここで安藤弁護士から電話が掛かってきて、関口エミリへの対応を伝えられた。
「ええ、あ、はい、そうですか。名誉棄損で訴えると?それは効果絶大だな。既に校長には連絡済…はい、覚悟しておきます。大丈夫ですよ、教師になるつもりは無いですし。それと、あの…最後に教えて貰えませんか?」
そして俺は先程母と話していたことを短く伝え、泰造氏の真意を探ろうとしたのだが。
「さあ?どうでしょうか」
「あの、知っていることだけでも構わないんで。もし、コトリさんをこのまま放置しておくのであれば、別の方法で救うことを考えなければなりませんし。もしも、泰造氏が妙子さんの悪行を知っていて放置しているのであれば、その理由を是非教えて頂きたいのです」
シーン…。
途端に電話の向こうが静かになり、それからくぐもった声がボソボソと聞こえた。
「もう俺は電話を切ったぞ。もしかして通話のままになっているかもしれないが、俺はそれに気付いていないんだ。さて、独り言を呟こうか」
ワザとらしいその演技に、思わず吹き出す。…そっか、オフレコという意味か。
「えっと、安藤さん、…了解です」
「妙子さんは昔から泰造さんに執着していた。それも病的なまでの執着だ。だが、泰造さんの方はまったくその気が無くて袖にしていたんだ」
「えっ、最初から泰造氏狙いだったってことですか?」
「コラ、独り言に質問してくるな!」
「はい、すみません」
「親同士が知り合いで、子供の頃から顔見知りだったらしいがな。金持ちで見栄えのいい泰造さんが、あのデブスには王子に見えたんだろう」
「うわ、デブスって…」
「デブでブスだってこと…って、話し掛けんな。とにかく粘着質な女でさ、泰造さんが敬子さんと結婚した時は相当荒れて、嫌がらせしまくりだったらしいぞ。んで、アイツ、清会長に矛先を変えてカラダで落としやがった」
えっと、安藤弁護士、どんどん口調が…。
いや、別にいいけどさ。
「へえ、それで?」
「デブスだけど若かったからな。清会長もつい魔が差したんだろうよ。それが2度3度と回数を重ねて見事妊娠だ。挙句の果てにあのデブス、『泰造さんと結婚させろ』と言い出しやがった」
…その頃にはもう、清会長は若い愛人に夢中で、何でも言い成りになっていたのだと。
>奥さんと別れられないのなら、
>息子である泰造さんと私を結婚させてよ。
>そうすればお腹の子も跡取りになれるでしょ。
「うわっ、マジで?」
「それから敬子さんが浮気していると嘘を吐き、犯罪者と結婚していた女なんてロクでも無いと貶しまくって。最終的にはソレを実現したんだ。あの女は蛇みたいに執念深くて、怖いぞ~」
「何だよ、デブスのくせに」
「そう、デブスのくせにな」
あの継母は予想よりもずっと手強いようだ。そして、そのバックについている清会長も。じゃあ、どうすればコトリを守れる??
思わず溜め息を吐くと、安藤弁護士が鼻で笑う。
「おいおい、もう諦めちゃったのか?まあ、そう焦るな。長期戦で行こうって」
「ええ、それはそうなんでしょうけど、でも…」
「とにかくあのデブスは敬子さんに生き写しのコトリさんを目の敵にしているんだ。泰造さんはそれを分かっているから、敢えてコトリさんと距離を置いている。以前、泰造さんがコトリさんと2人きりで外食した時に荒れまくった事が有ったらしくてな。その後で『あの娘を追い出せ』と清会長経由で指示してきたらしい」
「は?追い出せって、何の権限が有って…」
「デブスには権限が無い。だが、清会長の命令は絶対だ。それでも泰造さんは必死で拒否した。…お陰で殴る蹴るの暴行を受けたがな」
「殴る蹴る??だってもう泰造氏は成人どころかいいトシしたオッサンだろ?本気で抵抗すれば清会長なんてヤッつけられるはずなのに…」
本気で呆れる俺に、安藤弁護士は真面目な声で淡々と言うのだ。
「幼い頃から、そうした主従関係が築かれているんだよ。『育ててやった』という恩義を着せて、反抗すると暴力で封じ込める。そんな相手と闘おうなんて、思えるはずが無い。
だけど、泰造さんは彼なりにコトリさんを心配していて。デブスから隔離しようと画策している。でも、それを清会長の言う『追い出す』にすると、悪条件な飼い殺しになると分かっているから。自分もコトリさんを邪険にしていて、仕方なく家から出すというテイにしたいんだ。
…ここまでは分かるかな?富樫くん」
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ブブブ…。
ここで安藤弁護士から電話が掛かってきて、関口エミリへの対応を伝えられた。
「ええ、あ、はい、そうですか。名誉棄損で訴えると?それは効果絶大だな。既に校長には連絡済…はい、覚悟しておきます。大丈夫ですよ、教師になるつもりは無いですし。それと、あの…最後に教えて貰えませんか?」
そして俺は先程母と話していたことを短く伝え、泰造氏の真意を探ろうとしたのだが。
「さあ?どうでしょうか」
「あの、知っていることだけでも構わないんで。もし、コトリさんをこのまま放置しておくのであれば、別の方法で救うことを考えなければなりませんし。もしも、泰造氏が妙子さんの悪行を知っていて放置しているのであれば、その理由を是非教えて頂きたいのです」
シーン…。
途端に電話の向こうが静かになり、それからくぐもった声がボソボソと聞こえた。
「もう俺は電話を切ったぞ。もしかして通話のままになっているかもしれないが、俺はそれに気付いていないんだ。さて、独り言を呟こうか」
ワザとらしいその演技に、思わず吹き出す。…そっか、オフレコという意味か。
「えっと、安藤さん、…了解です」
「妙子さんは昔から泰造さんに執着していた。それも病的なまでの執着だ。だが、泰造さんの方はまったくその気が無くて袖にしていたんだ」
「えっ、最初から泰造氏狙いだったってことですか?」
「コラ、独り言に質問してくるな!」
「はい、すみません」
「親同士が知り合いで、子供の頃から顔見知りだったらしいがな。金持ちで見栄えのいい泰造さんが、あのデブスには王子に見えたんだろう」
「うわ、デブスって…」
「デブでブスだってこと…って、話し掛けんな。とにかく粘着質な女でさ、泰造さんが敬子さんと結婚した時は相当荒れて、嫌がらせしまくりだったらしいぞ。んで、アイツ、清会長に矛先を変えてカラダで落としやがった」
えっと、安藤弁護士、どんどん口調が…。
いや、別にいいけどさ。
「へえ、それで?」
「デブスだけど若かったからな。清会長もつい魔が差したんだろうよ。それが2度3度と回数を重ねて見事妊娠だ。挙句の果てにあのデブス、『泰造さんと結婚させろ』と言い出しやがった」
…その頃にはもう、清会長は若い愛人に夢中で、何でも言い成りになっていたのだと。
>奥さんと別れられないのなら、
>息子である泰造さんと私を結婚させてよ。
>そうすればお腹の子も跡取りになれるでしょ。
「うわっ、マジで?」
「それから敬子さんが浮気していると嘘を吐き、犯罪者と結婚していた女なんてロクでも無いと貶しまくって。最終的にはソレを実現したんだ。あの女は蛇みたいに執念深くて、怖いぞ~」
「何だよ、デブスのくせに」
「そう、デブスのくせにな」
あの継母は予想よりもずっと手強いようだ。そして、そのバックについている清会長も。じゃあ、どうすればコトリを守れる??
思わず溜め息を吐くと、安藤弁護士が鼻で笑う。
「おいおい、もう諦めちゃったのか?まあ、そう焦るな。長期戦で行こうって」
「ええ、それはそうなんでしょうけど、でも…」
「とにかくあのデブスは敬子さんに生き写しのコトリさんを目の敵にしているんだ。泰造さんはそれを分かっているから、敢えてコトリさんと距離を置いている。以前、泰造さんがコトリさんと2人きりで外食した時に荒れまくった事が有ったらしくてな。その後で『あの娘を追い出せ』と清会長経由で指示してきたらしい」
「は?追い出せって、何の権限が有って…」
「デブスには権限が無い。だが、清会長の命令は絶対だ。それでも泰造さんは必死で拒否した。…お陰で殴る蹴るの暴行を受けたがな」
「殴る蹴る??だってもう泰造氏は成人どころかいいトシしたオッサンだろ?本気で抵抗すれば清会長なんてヤッつけられるはずなのに…」
本気で呆れる俺に、安藤弁護士は真面目な声で淡々と言うのだ。
「幼い頃から、そうした主従関係が築かれているんだよ。『育ててやった』という恩義を着せて、反抗すると暴力で封じ込める。そんな相手と闘おうなんて、思えるはずが無い。
だけど、泰造さんは彼なりにコトリさんを心配していて。デブスから隔離しようと画策している。でも、それを清会長の言う『追い出す』にすると、悪条件な飼い殺しになると分かっているから。自分もコトリさんを邪険にしていて、仕方なく家から出すというテイにしたいんだ。
…ここまでは分かるかな?富樫くん」
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