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周知の事実
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「中林さんって、ひょっとして富樫さんと付き合ってるのかな?」
「え?ああ、はい。でもまだ交際を始めて5日しか経過しておりませんが」
榮太郎様が私の私生活を気に掛けるのは、多分、茉莉子さんからの差し金だろう。それにしてもこんなに早くバレるとは。それもこれも、先生が私をあちこち連れ歩くせいだ。いや、私は先生の彼女なのだから、連れ歩いても全然、おかしくは無いのだが。
断っても断っても不死鳥の如く己の提案を実現させようとする浦くんに根負けし、とうとう私は二股交際を受け入れた。何が驚いたって、富樫先生にその旨を報告したところ、とっても軽く『いいよ!』と返事されたことであろうか。自分で言うのもナンだけど、もしや私の周囲には頭のネジが緩い男しかいないのかもしれない。
「ん?でも浦くんとも交際中なんだよね?もしかして二股?あまり無理はしないようにね」
「はい、お気遣い、有難うございます。なるべくご迷惑は掛けないように致しますので」
ね?!ほらッ。
榮太郎様もかなり変でしょ?!
世間一般では許されない行為のはずなのに、この人達は何故これほど二股に寛容なのか。
「ウチの弟もさあ、あ、会ったことあるだろ?そう、あの政親。仕事はデキるんだけど、女性関係が結構だらしなくてねえ。二股どころか、不特定多数って感じで付き合ってるんだよねえ。
昔さあ、政親とその彼女のうちの1人と一緒にゴルフしたことが有ってね。その翌月、得意先の社長令息の披露宴に出席したら、新婦がその彼女でさあ。あれにはちょっと驚いちゃったな。
かなり名家のお嬢様だったそうなんだけど、結婚前に遊び納めしておきたかったんだって。政親もそれを了承していたとかで、その彼女、同時期に4人の男と付き合ってたって話。…それに比べれば中林さんはまだマシだよ」
えっと、なんだろうこのモヤモヤ感は。
だってほら、私の場合は自主的にでは無くて、ムリヤリ二股をさせられている側なのだから。そこんところを強調して榮太郎様に弁解すると、呑気にこう言われた。
「へえ。男2人が中林さんを奪い合ってるのか」
「えっと、はい、そうですね、そうなんです」
茉莉子さんならきっと、私をビシッと叱るはずなのに。この夫婦は本当にバランスが良くて、夫である榮太郎様は乙女のように頬を染めつつ、私を激励してくださるのだ。
「うーん、難しいよねえ。財力が有って大人な富樫さんと体力が有って若い浦くん。俺だったらどっちを選ぶかなあ。ふぅ、これは悩ましい」
『アナタが悩む必要は無いんですけど』と言いたかったが、必死で耐えた。…そしてそうこうしているうちにいつの間にか二股交際は周知の事実となってしまい。
「お疲れ様です、中林さん。今日はどっちと会うんですか?」
「え?あ、はい。年下の方ですけど…あの、剣持さんまでご存知なんですか?」
「ええ、もちろん。秘書室ではもうその話題で持ちきりですよ。モテる女は辛いですね!!さすが中林さんだなって皆んな噂してますから」
「いや…モテるとか、その…ゴニョゴニョ。あの、全然、そういうんじゃないですから」
なんだこの、二股ウエルカムな環境!!
こうして私は驚くほど快適な二股生活を満喫し、気付けばいつの間にか1カ月が過ぎていた…。
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