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~ファンタジー異世界旅館探訪~
【第1章】第29話「出発準備と買出し」(1)
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「アルヴァーさんは、これからすぐにミラーレでしたっけ……近くの都市に戻るんですよね?」
優希が昨日聞いていた予定を確認すると、アルヴァーは少し考え込んでから答えた。
「――いや、昨日までとは状況が変わってしまった。急いだ方が良いのには違いないが、そちらにも準備が必要だろう。急な話で驚くだろうが、優希も一緒にミラーレに同行して欲しい」
「え? どういう事です?」
突然の提案にテーブルに着いていたほぼ全員がアルヴァーに注目した。榛名ちゃんだけはご飯に夢中だった。
「昨日までは、ここの存在を知られないように準備を進めるつもりだった。しかし、深夜、魔術師クルアランが来訪した事によって、この場所の存在が領主に露見してしまった」
「にゃにゃ! あの紅蓮のクルアランが居たのかにゃ!?」
「何ですか、その物騒な二つ名!?」
「にゃ? 知らないのかにゃ? 魔獣の群れを森ごと焼き払った事からそう呼ばれるようになったらしいにゃ」
『怖っ! そんな人に刀で戦いを挑んだ自分自身にびっくりだった』
脱線しそうになった流れを修正するように、アルヴァーは続けて語った。
「その、魔術師クルアランによって、私の生存が伝えられるだろうから、こちらの都合だけなら急いで帰還する必要はなくなった。だが、不足がある内に、権力者と交渉しなければならなくなるのは、歓迎出来るものではない」
「つまり、その不足分を補うために、坊ちゃんに同行して欲しいと?」
ゲンさんは、料理以外で珍しく、険しい目つきをアルヴァーに向けた。恵子も心配そうに優希を見ていて、そんな二人を撫子が好ましい視線を向けていた。アルヴァーは、そんな広瀬館の面々を説得するために話を続けた。
「――そういう事になる。これは出来るだけ早めに、しかもなるべく多く集める必要があるだろう」
「……集めるんですか?」
優希は、今の時点で何を集めるのか全く見当が付かなかったので、自然に口にしていた。
これに対しアルヴァーの返答は明確だった。
「そう、この交易通貨をだ」
そういって、昨日、見せた交易通貨を再び取り出した。そしてもう一枚、今度は大振りで厚みがある楕円形の金の塊らしきものを取り出してテーブルの上に置いた。
と、それを見たノーチェの耳がピクッとしたかと思うと勢い良く立ち上がって叫んだ。
「にゃにゃ! 王金交易通貨にゃ! もの凄い大金だにゃ!!!」
騒がしいノーチェに比べて、優希達は価値が分からなかったので静かだったが、撫子の瞳孔が驚きからか大きく開かれたのを見ると、持ち運ぶには大金過ぎるのだろうと思われた。
その王金交易通貨を、アルヴァーは恵子の方に押し出すと意外な言葉を口にした。
「とりあえずの宿泊費をこちらで支払っておく。――もし今後、不足と感じたなら追加を用意しよう」
その言葉にノーチェは卒倒しそうになったが、何とか踏ん張ると、急に辺りを見回しプルプルと震えだした。
「にゃにゃ! もしかして、ここは、ものすごーくお高い宿屋だったのかにゃ?」
その様子の変化に皆が注目していると、懐を探って、お財布らしい小さな革袋を取り出した。そして中身を確認すると、耳をペタンとさせて小さく呟いた。
「そんなに持ち合わせがないにゃ。このままじゃ破産まっしぐらにゃ~……」
その変わりやすい表情に、皆は思わず表情を綻ばせた。
優希が昨日聞いていた予定を確認すると、アルヴァーは少し考え込んでから答えた。
「――いや、昨日までとは状況が変わってしまった。急いだ方が良いのには違いないが、そちらにも準備が必要だろう。急な話で驚くだろうが、優希も一緒にミラーレに同行して欲しい」
「え? どういう事です?」
突然の提案にテーブルに着いていたほぼ全員がアルヴァーに注目した。榛名ちゃんだけはご飯に夢中だった。
「昨日までは、ここの存在を知られないように準備を進めるつもりだった。しかし、深夜、魔術師クルアランが来訪した事によって、この場所の存在が領主に露見してしまった」
「にゃにゃ! あの紅蓮のクルアランが居たのかにゃ!?」
「何ですか、その物騒な二つ名!?」
「にゃ? 知らないのかにゃ? 魔獣の群れを森ごと焼き払った事からそう呼ばれるようになったらしいにゃ」
『怖っ! そんな人に刀で戦いを挑んだ自分自身にびっくりだった』
脱線しそうになった流れを修正するように、アルヴァーは続けて語った。
「その、魔術師クルアランによって、私の生存が伝えられるだろうから、こちらの都合だけなら急いで帰還する必要はなくなった。だが、不足がある内に、権力者と交渉しなければならなくなるのは、歓迎出来るものではない」
「つまり、その不足分を補うために、坊ちゃんに同行して欲しいと?」
ゲンさんは、料理以外で珍しく、険しい目つきをアルヴァーに向けた。恵子も心配そうに優希を見ていて、そんな二人を撫子が好ましい視線を向けていた。アルヴァーは、そんな広瀬館の面々を説得するために話を続けた。
「――そういう事になる。これは出来るだけ早めに、しかもなるべく多く集める必要があるだろう」
「……集めるんですか?」
優希は、今の時点で何を集めるのか全く見当が付かなかったので、自然に口にしていた。
これに対しアルヴァーの返答は明確だった。
「そう、この交易通貨をだ」
そういって、昨日、見せた交易通貨を再び取り出した。そしてもう一枚、今度は大振りで厚みがある楕円形の金の塊らしきものを取り出してテーブルの上に置いた。
と、それを見たノーチェの耳がピクッとしたかと思うと勢い良く立ち上がって叫んだ。
「にゃにゃ! 王金交易通貨にゃ! もの凄い大金だにゃ!!!」
騒がしいノーチェに比べて、優希達は価値が分からなかったので静かだったが、撫子の瞳孔が驚きからか大きく開かれたのを見ると、持ち運ぶには大金過ぎるのだろうと思われた。
その王金交易通貨を、アルヴァーは恵子の方に押し出すと意外な言葉を口にした。
「とりあえずの宿泊費をこちらで支払っておく。――もし今後、不足と感じたなら追加を用意しよう」
その言葉にノーチェは卒倒しそうになったが、何とか踏ん張ると、急に辺りを見回しプルプルと震えだした。
「にゃにゃ! もしかして、ここは、ものすごーくお高い宿屋だったのかにゃ?」
その様子の変化に皆が注目していると、懐を探って、お財布らしい小さな革袋を取り出した。そして中身を確認すると、耳をペタンとさせて小さく呟いた。
「そんなに持ち合わせがないにゃ。このままじゃ破産まっしぐらにゃ~……」
その変わりやすい表情に、皆は思わず表情を綻ばせた。
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