上 下
61 / 69

61.イグルド

しおりを挟む
情報を流してから1ヶ月が経過した。


俺が思っていた通り、多くの商人が税金の安さに食い付きやって来た。


それに比例して多くの冒険者や住人が増えていった。


このまま増えると、数週間後には1kmの壁の中には収まりきらなくなりそうだ。


そこで、壁を作ってくれたフェアロスにもう一度依頼した。


今度は俺の領土を囲む3kmの壁である。


「バルト様、お久しぶりです。まさか、バルト様が言っていた通りになるとは……正直半信半疑だったのですが。」


「ここまで上手く行くとは俺も思ってなかったですよ。」


「さて、代金ですが金貨60枚になりますが、よろしいですか。」


「もちろんです。それではお願いします。」


これでさらに人が集まるだろう。


この様子だと、またすぐに一杯になるだろう。


だが、そうなったとしても俺の領土は3kmだけであるから、これ以上広げることは出来ない。


領土を広げるのは簡単ではない。


戦争で功績を上げるか、何かを献上するかしないとダメだ。


何か交渉材料でも有れば良いのだが……





今日は空いた時間を使って、リルの様子を見に行くことにした。


アドバイスをしてからは一度も行っておらず、今どのぐらい進んでいるのか知りたかったからだ。


コンコン。


……ノックをするも返事はなかった。


コンコン。


再度するもやはり返事はなかった。


留守かなともおもったが、試しにドアを開けようとしてみたら普通に開いた。


リルのことだから、実験に没頭しているのだろう。


仕方なくそのまま入ると、ベットで寝ているリルを見つけた。


俺が来たことにも気づかずに気持ち良さそうに眠っている。


この寝顔を見ていると、起こすのが忍びなく感じる。


「リルさん。」


そっと声をかけるもリルは起きない。


今度は軽く揺らして見ると、リルの目がゆっくりと開いた。


「ん、んん~。あれ、バルト様ではないですか。どうしたんですか?」


リルは目を擦りながら、ベットから起き上がった。


「寝ているときにすみません。どこまで研究が進んだかなと思いまして。」


その言葉を聞いた瞬間、リルさんのテンションが一変した。


「なんと!?よくぞ聞いてくれました!いろいろな竹を試して、今のところ最長22日点き続けました!」


22日か、かなり長い。


俺的には1ヶ月を越えれば、商品化しても良いと思っている。


それまでもう少しだな。


「凄いじゃないですか!このままのペースで頑張ってください。」


「はい!ですが、1つお願いがあります。誰か1人助手として雇ってほしいのです。」


話を聞くと、リルはこの2ヶ月近い間あまり寝ていないらしい。


寝ているうちに、切れてしまっていると正確な点灯時間が分からなくなるので、眠れなかったらしい。


実験大好きのリルも、さすがにこのままでは体に負担が大きすぎると判断したようで、こう言ってきたのだ。


「分かりました。明日にでも手配しておきます。このままの調子で頑張ってください。」


俺が思っていたよりも、早いスピードで完成しそうだ。


となると、魔石が大量に必要となる。


魔石は高いから、街の財産ではあまり買うことは出来ない。


だから、専用の冒険者を雇ってダンジョンに向かわせるか、俺自身がダンジョンに行くことになる。


専用の冒険者は、ダンジョンに潜らせるのだからかなりの金額で雇う必要がある。


魔石を売った方が収入が多いと思われれば、誰も雇われてはくれないからだ。


残念ながら、金が乏しいから質の良い専用の冒険者を雇うことは無理である。


なので、俺が行くことにした。


まあ、そっちの方がコストもかからないし、効率も良い。


そんじゃそこらの冒険者よりは強いからな。


今は街も落ち着いてきたし、シルフィがいるから街を出ても大丈夫だろう。


早速屋敷に戻って準備するか。


「シルフィ、明日から少し街を離れるがその間任せても大丈夫か?」


「はい。お任せください。」


おお、二つ返事とはシルフィは頼りになるやつだな。


その日の夜、シャルとクレアにしばらく出ていくことを告げた。


行かないでと駄々をこねられたが、なんとか説得することができた。


シャルとクレアは、あの事件をあまり気にせず元気に過ごしている。


あの日以来、ウィルにはシャルとクレアの護衛をしてもらっている。


2度とあんなことが起きないようにするためだ。


だから、ウィルをダンジョンのある街に連れていくことは出来ない。


次の日、シャルとクレア、シルフィに見送られてダンジョンのある街、イグルドへと出発した。


イグルドまで280kmある。


馬だと早くても4、5日掛かる道のりだ。


だが、俺には強化魔法があるので3時間もあれば着くことが可能だ。


道中、魔物を見かけることもあったが、いちいち戦ってられないので全部無視した。


「ここか。」


イグルドはダンジョンのある街だけあってかなり大きかった。


カルーネよりは確実に大きく、直径20kmは有りそうだ。


街に入ると、武器屋や薬屋などが多く見られた。


そして、辺りを見渡せば冒険者ばかり。


さすがはダンジョン都市だ。


さて、今日のところは、安い宿屋を探して情報集めでもするか。


明日からダンジョンには潜るとしよう。


情報を集めるためこの街の冒険者ギルドを訪れた。


「すいません。この街に初めて来たのですが、ダンジョンに関する情報などは無いでしょうか。」


「初めての方ですね。まず、ダンジョンには安全上Dランクからしか入れませんがそこは大丈夫でしょうか。」


なに、そうだったのか。


ランク上げといて良かったわ。


「はい、大丈夫です。」


そういって冒険者カードを見せる。


「これは失礼しました。Aランクの冒険者様でしたか。Aランクですと30階層から40階層が適性ですね。ですが、これはあくまでもAランクの冒険者が6人パーティーで挑んだときの目安です。私共としてもパーティーを組むことを推奨しております。」


パーティーか……俺には必要ないな。

魔石を集めることが目的だし、このダンジョンを攻略しようなどとは思っていない。


それに、一人の方が気楽だし。


「後はこちらを見てください。階層ごとのモンスターやその特徴が印されています。こちらは無料ですが、地図はマッピングされている分は、1階層ごとに銀貨1枚で販売しております。」


地図は有料か……しかもなかなかの値段だ。


「また、浅い階層では魔石が出る確率が低くなっており質も悪いので、バルト様の実力でしたら深い階層で戦うことをおすすめします。」


それは初耳だった。


ぶっちゃけ、雑魚と戦って質より数で魔石を集めようと思っていたのに……


「ダンジョンを攻略した人はいるんですか?」


「過去に3組攻略されています。ですが、ここ300年ほどは攻略された人はいないですね。」


ギルドで聞けた情報はこれぐらいだった。


最後に、安い宿屋を教えてもらった。


一番の収穫は、浅い階層だと魔石の確率と質が低いってことだったな。


クソ、これである程度強い敵と闘わないとダメになった。


パーティー組んだ方がいいか?


――まあ、何とかなるか。


無理そうだったらパーティーを募集するとしよう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話

亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ぽっちゃりおっさん異世界ひとり旅〜目指せSランク冒険者〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
酒好きなぽっちゃりおっさん。 魔物が跋扈する異世界で転生する。 頭で思い浮かべた事を具現化する魔法《創造魔法》の加護を貰う。 《創造魔法》を駆使して異世界でSランク冒険者を目指す物語。 ※以前完結した作品を修正、加筆しております。 完結した内容を変更して、続編を連載する予定です。

処理中です...