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28・side ティグリス 1
しおりを挟む毎朝の日課である朝の巡回をしている時に、それは感じた。
いつもは獣化して王都周辺に魔獣が居ないか見回る。
番が暮らす王都だ。少しでも安全に保ちたい。
その後は神殿周りを見回り、浄化と牽制をする。
番の居る神殿に『銀の虎』有りと知らしめる為だ。
だが、その日は王都周辺の巡回中に神殿…奥宮の裏庭付近から強い浄化力を感じた。
近づいて来た訳ではなく、突然現れた浄化力。
場所が場所なだけに俺は神殿に引き返した。
様子からして、どうやら強い浄化力は神官棟に留まって居るようだ。
状況確認の為、奥宮宮殿へ向かうと玄関口で番と鉢合わせをした。
番も丁度、騎士棟へ行くところだったようで、俺達はそのまま番の部屋で朝食を取る事にした。
番の食事は自分で作るか、手の空いた見習い神官が作るのだが、とても薄味だ。
薄味を好む訳では無い。
下手な事をして、おかしな味にしたくない。という神官ならではの慎重さから来る物だ。
だから番は食事が口に合わなかった時の為に、自室にマヨネーズとコンソメ粉を常備している。
これがあれば全て解決するらしい。
因みに、飲み物は全て、湯に溶かせば完成する物ばかりだ。
飲み物を凝縮させた粉を湯に溶かす姿は様になっている。
カッカッカッと軽快に混ぜ解く指は靱やかで綺麗だ。
今日の朝食もテーブルにパン、レタス、カットフルーツにコンソメスープと並び、マヨネーズがドンっと置かれている。
だが、どんな食事の前でも番と一緒であればご馳走に見えてしまう。
さて、
俺の番。レクラムの話では、今朝神託を受けたと言う。
他の者が聞けば疑うかも知れないが、俺は疑わん。
なんたって俺の唯一、俺の番、俺の嫁の話だ。疑う余地など無い。
例え、レクラムが晴れた日に雨だと言えば雨なんだ。
なんなら雨雲を呼び、降らせたって構わない。
………まあ、俺の番はそんな我儘は言ってくれないが。
その神託に従い裏庭へ行くと、髪も瞳も見事な銀を纏った少年が二人居たらしい。
二人は兄弟で恐らく創成神の神子だろうと。
今は神官棟で休まれているが、奥宮宮殿に二人の部屋を用意したい事。
二人に付ける護衛のお願いをされた。
番の願いとあらば容易い事だ。
そんな事より、確認したい事がある。
とても重要な事だ。
「レクラム、裏庭には誰を連れて行ったんだ?」
「……………、一人…」
「ん?」
「一人です」
「ほう?」
「…聞いて、ください」
ああ。聞くとも、番の話ならいくらでも。
俺は聞く体勢を取る為、レクラムの隣に席を移す。
「神託を受けた時、既に神子様方は降臨していた。
しかも手入れの行き届いていないあの裏庭だ。
そんな所に長く待たせる訳には行かないでしょう?現に弟君の方は荒野と勘違いしてパニックを起こしていた。
私が到着するのがもう少し遅れていたら、癇けを起こしていたかも知れない」
俺はレクラムの話をよく聞く為、更に距離を詰める。
詰め過ぎてつい、押し倒してしまったが、まぁ良いだろう。
「創成神の神子様にその様な事はあっては…いけないでしょ?
それに、ほらっ林の方へ入られても大変だっ…ぁっ、ちょっ…」
「うん、それで?」
番の匂いに引き寄せられて首筋や耳を舐めるぐらい許してほしい。
話はちゃんと聞いている。
「はっ…あんっ、だからっい、急いで、て…んぅっ」
「そうか、それは仕方無かったな。
だがな。お前の身に何かあれば俺は正気ではいられない」
そう、この首筋の下の動脈や、この胸の下の心臓が脈打ってるからこそ、俺は正常を保てる。
「あっあ…、ティグっ、乳首吸っちゃだめ…っまだ、各所…にっ連絡をっ…」
「そうだな。連絡は大事だ。
でも、その前に俺がどれだけお前が大切で、どれだけ心配したか、知る義務があるだろう?」
「そ、それは…ぁっああんっ」
「大丈夫。最後まではしない」
そう、お前が俺の腕の中で生きている事を確かめるだけだ。
その後。散々焦らして、啼かせてからイかせてやり。
「次に同じ事をやったらお仕置きだぞ」と言った俺に。
誘う様な眼差しで「その日の内にお仕置きされないと学習出来ないかも…」とか言い出した番の為、俺はその日の仕事を急いで終わらせるハメになった。
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