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22・告白

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 耐え切れずアージェンの咥内で爆ぜてしまった俺は、乱れた呼吸で何とかワゴンの上に置かれているティッシュの方に指をさして、早く吐き出す様に言った。

 が、アージェンはうっすら笑い、口の中を見せた。

 綺麗な並びの白い歯、先程の行為の所為か淫猥に見える赤い舌。
 でも無い。
 あるであろう筈のモノが無い。
 どこ行った?まさかっ

 「ご馳走様」

 飲んだのか!?
 そんなの全然、ご馳走じゃ無いだろっ!

 俺がオロオロしてる間に、アージェンはウォーターサーバーからグラスに水を注ぎ、俺に渡して脱衣場に入って行く。

 グラスに口を付けると冷たい水が喉を潤し、体の中に残った熱を冷ましてくれる。

 脱衣場から出て来たアージェンは「もう良いのか?」と半分残った水を俺から受け取り、それを一気にあおると絞ったタオルで俺の下半身を拭き始めた。

 自分で拭くと言ったが「どうか任せて欲しい。」とまたもや懇願。

 綺麗な紫水晶が揺れ、乞うようにお願いされれば断る事など出来ず。
 俺は大人しく拭かれる事にした。

 とはいえ、自分の股間を他人ひと様の眼前に晒して丁寧に拭き取ってもらう等、恥ずかしい事この上無い。

 アージェンは善意なのかもしれないが、俺にとったら羞恥プレイなんだけどっ…!

 しかもその刺激でまた反応しそうになる己を誤魔化す為に俺は訊いた。

 「あ、のさ、護衛って、ここまでするの?」

 情けなく震える声で訊ねると、拭き終わったタオルを脇に置き。
 捲れたローブを戻してアージェンは俺の足元に膝まづいた。

 騎士然。とした見惚れる程の綺麗な姿勢で真っ直ぐ俺を見つめて来る。

 「これは、護衛としての仕事じゃ無い。
 愛する者の傷を癒したいと思った」

 あ、愛する、者?

 「えぇっと、でも傷は…」

 「外側の傷は治っても、傷が付いた瞬間の痛み、恐怖、不安は心に残る。
 俺はルキ様の中にあるそういった感情もの全てを癒したい。
 たとえ想いを返して貰えなくとも、その御身と心を護る為。どうか側に侍らせて欲しい」



 切なさを滲ませた瞳。
 目が、逸らせない。
 時間が止まったみたいだ。
 心臓も止まりそう。
 愛する者って言った?
 俺、を?
 側に置いて欲しいって言った?
 アージェンが?

 会ってまだ二日。
 でも、その短い間にアージェンはどれだけ俺を気遣ってくれた?どれだけ甘やかしてくれた?

 それも上辺だけじゃ無い。
 心からだって、俺にも伝わっていた。

 下心を持った奴が心配を装って近づいて来た時は、隙を見せない様に大丈夫。って予防線を引いた。
 
 他人から上辺で心配されても、社交辞令として大丈夫。って答えた。

 留愛が心配してても……留愛は俺が守らなきゃいけない弟だ。
 心配かけない様に大丈夫。って答えて来た。

 でも初めてなんだ。
 問答無用で甘やかしてくれた人。
 安心して、凭れ掛かる事が出来た人。


 アージェンを側に置くんじゃない。
 俺が、アージェンに側に居てほしいと思った。

 これが恋愛なのか、親愛なのか、友愛なのか分からない。…けど、

 「…俺も、側に居てほしい。
 アージェン、側にいて」

 そんな事を口にしていた。





 俺の言葉を聞いたアージェンは目を細め、幸せそうに微笑んだ。
 イケメンの幸福顔。
 とんでもない破壊力だ。

 頭がパンク寸前で動けない俺の手を掬い上げ、指先に軽くキスを落としたアージェン。

 「私。アージェン・ブラッドクロスは何時いつ如何いかなる時も、ルキ様をお護りする事を誓います」

 ゆっくりと視線を上げたアージェンの顔には男臭い妖艶な笑みが浮かんでいて、ああ~この表情には勝てないな。と思った。








 その後。アージェンは部屋の扉を少し開けて何かを受け取っている。

 え゙…、もしかして部屋の前に人居た?!
 声、聞こえてたんじゃ…?

 うそだろ?!
 と思っている俺の所に、扉を閉めて戻って来たアージェンは俺の手を引いて立たせたかと思うと、ローブの背中部分から手を入れ……って、いつの間にファスナー下げたんだ?! ズルリと下に下げてしまった!

 どうやら箇所を止めていたフックや帯等も全て解かれていた様で、足元にローブを落とされた俺はすっぽんぽんっ

 まって!? 部屋の外に人いるんじゃないのっ?
 ナニを致す気??!

 って混乱してたら、頭からバサッと服を着せられた。
 スルスルと袖も通されて、よく見るとシンプルな神官服。

 「汚れた服は洗濯に出し、着替えて厨房に行こう」

 と耳元で囁かれた。
 それ…すっぽんぽんにする前に言って欲しかったな。





 夕飯準備の為、厨房に向かうのに部屋を出ると……やっぱり男性が立っていた。

 うん。朝見た人だ。
 確かレクラムさんの部屋の前でも見たな。
 ユースが連れて来た人だ。
 と、いう事はアレを見られてる。
 うーわー、恥ずかしいっ
 と心の中で悶絶していると

 「ルキ様。
 紹介しておきます。
 俺の補佐として共にルキ様を護衛するアルヴィスです。
 どうぞ荷物運びや雑用として遠慮なく使ってやって下さい」

 「……。アルヴィスです。
 何かあれば気軽に申し付け下さい」

 アージェンの紹介に苦笑いを浮かべながら挨拶をするアルヴィスは、明るくて親しみ易いお兄さんって感じだ。
 そっか、この人も護衛なんだ。

 「こんにちは。ルキ・キヨミヤです。
 宜しくお願いします」

 と挨拶を交わし俺達は厨房へ向かう。




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