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20・神殿味の謎

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 一旦、小休憩を挟んでから浄化石作りに挑んだ。
 これが出来なきゃ穀潰しだからな!


 今度は手の上に薄いタオルを掛けてその上に魔石を乗せる。
 そして、ほんの軽~~い気持ちで流して見ましょう。と言われてやってみたら出来た。

 ビー玉級の魔石は銀色でキラキラ光ってる。
 同じ要領でピンポン玉級のもやってみたら出来た。

 残るは野球ボールサイズ。
 レクラムさん曰く、この大きさは貴重で、二つしか用意出来なかったんだとか、流石にこの大きさの物が割れたら大怪我をするから、時間はかかるが少しずつやってほしいと言われた。が、出来た。


それを手本に留愛も試してみたら問題無く出来た。

 レクラムさんもクルト君も、素晴らしいと褒めてくれて、浄化石は、大・中・小それぞれに報酬金額が付けられた。


 これを以って、国に正式に報告して俺達の存在を認めてもらって、浄化石を正規の物にするらしい。
 俺達の後見人とか保護者的な物はレクラムさんがなってくれるという話もした。

 成人している俺に保護者と言うのも変な話しだが、後ろ盾は必要らしい。

 契約書は等は後日用意するが、できれば浄化石作りは開始してほしいと言われ、小さな魔石が沢山入った箱と、出来上がった浄化石を入れる箱を渡すので、無理の無い範囲で少しずつ作ってほしいと言われた。


 …が、留愛がその箱に触れると、消えた。

 「「「!!!!??」」」

 「留愛?!」

 「大丈夫。僕の中にあるみたい」

 「ど、どういう事だ?」

 「んとね」

 消えた箱が現れた。

 「僕の中に出たり入ったり出来るみたい」

 留愛は何でも無い様に言う。

 「……………。
 空間魔法の類い、でしょうか?
 アーティファクトの一種で、物質の体積を広げ元々の容量以上の収納が可能になる物がありますが、人の身に…というのは…………。」

 レクラムさんは困惑した表情でそう話すが、留愛は頭にハテナを飛ばし、ポカーンとしている。
 その様子に気付いたレクラムさんが続ける。

 「例えば、この箱に入るのは小型魔石百個とします。
 ですが、空間魔法で中の空間を広げれば、見た目は変わりませんが、その何倍も入れる事が出来ます。」

 「えっ!何それ、すごぉいっ」

 「「「…………。」」」

 この時三人は思った。
 自分はもっと凄い事をしたくせに? と。

 「と、言う訳でルア様。
 ルキ様の事と同様、この事は内緒ですよ?悪い人に狙われますからね」

 「はぁい」

 纏めるの上手いな、レクラムさん。
 先生みたいだ。

 と、そこで俺は思い出した。

 「レクラムさん。頼みたい事があるのですが」

 「はい。何でしょう」

 「レシピを書く為の紙とペン。
 あの、それと汚れても大丈夫な動き易い服が欲しいのですが」

 「ああ、なるほど。
 昼食に運ばれた食事は大変美味しかったです。直ぐに用意させましょう。
 服は既製品になるので若干サイズが合わないかも知れませんが、王宮への報告後仕立て屋を呼びましょう。
 それまでは、どうかご辛抱を」

 「え、既製品を用意して頂けるだけで十分…」

 です。と言いたかったが、レクラムさんの綺麗な笑顔の圧で言えなかった。

 で、あの運ばれて行った寸胴鍋の行く先はここだったのかぁ。






 紙やノート、ペン等、一通りの文房具は直ぐに用意してくれた。
 隣の部屋がレクラムさんの書斎で、そこに予備があったからだ。

 留愛がついでにと頼んだスケッチブックは仕立て屋を呼ぶ時に雑貨屋も呼ぶから、その時に購入しましょう。と言われた。

 そんな訳で、ユースが服の依頼と荷物持ち要員を呼んでくる間レクラムさんの部屋で待つ事になった。





 待っている間、俺は気になる事を訊いた。
 神殿の味付けに関してだ。

 外注だと言っていたパンや食事は美味しかった。
 なのになぜ神殿は? と。

 この世界に降臨したばかりの神子様方に不安を与えたく無かったのですが。
 と、レクラムさんは話してくれた。


 「今ではだいぶ少なくなりましたが、それでもたまに治癒スキルを狙った神官さらいや、浄化スキルを狙った神殿騎士攫いがいるのです。

 そういった者達は神官や騎士を希少な存在として大切に扱うどころか、物の様に扱い、それが平民であれば酷い時は奴隷の様な扱いをします。

 一昔前は救出、保護した時には心を壊していた。なんて事はザラだった様です。

 もちろんそれは極々一部の事ですし、中には個人的に雇用契約を結び、治癒スキルや浄化スキルを持った者を雇っている方もいます。
 が、それはしっかり雇用者を保護出来るだけの『力』を持った方だけ。

 そういった事情で、神殿は外部との接触を最低限に抑えているのです。

 治癒をほどこす治癒棟では、神官に護衛を付けたり、建物の警備を強化したり、緊急時以外は出来るだけ予約制にしたりと対策はしているのですが。

 料理の教示については難しいのです。
 何処で誰と繋がっているか分からない外部の者を内に入れる訳にはいきませんし。
 かと言って護衛付きで教わる事も出来ない。
 
 外注で何とかなる物は利用しますが、費用の問題もあり、全てと言う訳にはいきません。

 また人手の問題もありますし…。

 今、お二人が居られる神官棟や騎士棟がある場所は内宮うちみや、と言うのですが、本殿から先は外宮そとみやと言われています。

 外部との荷の受け渡しはその中間で、外宮の警備隊と内宮の騎士隊で行われ、検品もされます。

 そこから更に騎士棟で仕分けされ、各場所に運ばれるのですが…。

 内宮と奥宮に居住する者全ての食事を外注にする事は出来ないのです」

 と、憂いを帯びた表情でレクラムさんは語る。

 そりゃ百二十食近い食事を毎食宅配してもらうのはキツいな。

 しかもそれ全部検品だろ?
 誰がするんだよ。って話になるよな。


 それにしても、希少だからって人攫いに合うのは嫌だな。




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