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6・二人の護衛

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 留愛の解説を聞いて、ハァーっと溜め息を吐いた時。

 コンコンコンッ

 扉をノックする音が聞こえ。留愛がどうする? って表情で見てきたから。応じて良いよ。って意味で頷いたら「 はーい!」っと答えて扉を開けた!

 残念っそうじゃない!

 確かに対応して良いよ。って頷いたさ。でも、相手を確認せずに開けて良い。とは言ってないっ。
 ほらぁ、訪ねて来た人もびっくりして固まってるぞ。
 お、でも直ぐに持ち直した。

 それにしても背が高い。
 レクラムさんも長身だと思ったが、それ以上だ。

 スラリとした体型に、白地に銀をアクセントとしたラインの騎士服を着こなしていて、格好良い。
 その上。ミルクティー色の髪に薄いピンクの瞳で、甘く柔らかい雰囲気を出している。

 「失礼します。神殿騎士隊より参りました、ユースと申します。
 こちらはキヨミヤ様のお部屋でしょうか」

 「あ、はい、そうです」

 雰囲気が柔らかくても、制服をビシッと着こなした年上男性に、留愛は少し戸惑っているようだ。

 「私はルア様の護衛担当になりましたので、ご挨拶に参りました」

 「…留愛は、僕です」

 「本日より宜しくお願いします。」

 と、肩に手を当て綺麗な礼をする。

 「…。ところで、ルキ様の護衛担当も一緒に来ているのですが、ご挨拶させて頂いても?」

 留愛と挨拶を交わしていたユースさんはチラリとこちらを見て。留愛に許可を求めた。
 留愛がこちらを振り返り。俺がもちろん。と入口に近づくと、ユースさんはスっと横に避け、入れ替わるように現れた男性は……、やっぱり背が高かった。

 見上げると目が合い。透き通った紫水晶の瞳があった。

 整った美貌に、青みがかった銀の髪。制服の上からでも分かる鍛えられた身体。
 たとえ無表情であっても、女の子ならひと目で恋に落ちるだろう容貌だ。

 次々と登場するイケメン達を前に、元々低い俺の自己評価が、どんどん下がっていく…。

 「初めまして。私はルキ様の護衛を担当致しますアージェン。と申します。以後、お見知り置きを」

 低く、滑らかな声だ。
 そして、こちらもまた、綺麗な一礼。

 「初めまして。
 私は、ルキ・キヨミヤです。
 こちらは弟のルア。
 色々とお手数を掛けると思いますが、宜しくお願いします」

 「………。」

 軽く会釈をして頭を上げると、無表情のアージェンさんがじぃっと俺を見下ろしている。
 俺、何か間違った?
 えっ…と、どうしたら良いんだ? この空気。

 俺が困惑していたら、そんな空気をぶち破ってくれる天使がいた!

 「ユースさん! 僕は、ルア・キヨミヤですっ、こちらは兄のルキです。
 色々と……、お世話になります!」

 そう言って留愛は、勢いよくお辞儀をした。
 きっと、先程の自分の挨拶に納得いかなくて、仕切り直したんだろうな。

 ユースさんは目を丸くした後、フワリと笑って「はい。しっかりお世話します」と言ってくれた。

 そして「少し遅くなりましたが、食堂に案内します」と言ってくれて。
 今が何時なのか分からないが、お腹空は空いてるし、喉も乾いていることに気付いた。

 留愛が、それなら兄ぃの作ったお弁当も持って行きたい! とリュックの中から弁当を取り出し、それを持って食堂へ向かった。

 食堂へ向かう廊下では、ユースさんが気を遣ってか、留愛に色々と話し掛けていた。

 「でね、今日はキャンプをする予定だったの。」

 「おや、野外訓練ですか?」

 「ううん、普段行かない場所でね。スケッチ…、絵を描くの。
 楽しみにしてたのに、突然この世界に来ちゃったんだ」

 「ルア様は絵を描くのが好きなのですね。
 では宜しければ、私が神殿の敷地内を案内します。
 結構広いので、ルア様の気に入る場所も見つかるかも知れませんよ?」

 「ホント?! ありがとう。
 でね、楽しみはもう一つあって。今日は兄ぃにお弁当作ってもらったの。
 兄ぃのお弁当、久しぶりだからすっごく楽しみなんだ。」

 その言葉を聞いて、俺の胸の中はじんわり嬉しくなった。

 「そのお弁当は、アニーさんという方が作ってくれたんですか?」

 「ううん、兄ぃは兄。
 留輝兄の事だよ」

 そう、留愛は俺の事を独特な呼び方をする。
 小さい頃、おにいちゃん。が言えなくて『あにいちゃん』になってしまってたんだ。
 それがいつしか、ちゃん。の部分が抜けて『あにい』兄ぃ。になったんだ。

 「ルキ様が作られたのですか。
 それは大切に食べないといけませんね」

 「うんっ僕ね、兄ぃの作るご飯大好きなんだ」

 留愛はすっかりユースさんに打ち解けたみたいだ。
 一方。アージェンさんは黙って俺達の前を歩いていて。白くて広い背中が壁みたいだなぁ。と思った。

 そうして後ろから聞こえてくる留愛とユースさん。二人の会話を微笑ましく思いながら、食堂へと向かった。




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