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5・side レクラム

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 幼少時から神殿入りし、ほぼ毎日祈りを捧げて来ましたが、まさか神託を賜る日が来るとは思っていませんでした。

 今朝はいつもより早く目覚め。一人でベッドにいても仕方がない。と、身支度を済ませ、祈りの間がある本殿へ向かう為に奥宮を出ました。

 『瘴気が濃くなった。 浄化出来る者を呼ぶ』

 突然、声が聞こえたのです。

 疲れから来る幻聴かと思いましたが。それはそれで悲しいな…。と思っていると、その直後裏庭の方角から空気…というか、空間が歪むような感覚がしました。

 私はこれでも神殿の責任者。
 神殿に危険が無いかを確認する必要はありますし。確認を怠れば、ここぞとばかりに重箱の隅をつつく者もいます。
 そうなると面倒だ。と思いながら、私は一人、裏庭に向かって歩き出しました。

 本来なら一人ではなく、護衛を付けなければいけないのですが…。ここから騎士棟へ行き。また引き返して来て、裏庭へ向かう。

 そう考えると、面倒くさかったのです。

 私とて多少の魔法は使えますし、様子を窺って、危険が有りそうであれば、その時は神殿騎士に助けを求めましょう。
 そんな事を考えながら、裏庭に辿り着きました。

 遠目からは、銀髪の少年が二人居て。会話をしている様でした。
 一応人型ですし。暴れている様子もない。
 周囲に魔力の乱れも無く。何より『銀』をまとっている。

 そう思って。私は気配を消して近づきました。
 すると幼い少年の方が、何やら早口で喋っていますが、早過ぎて全ては聞き取れません。

 分かったのはここを荒野と勘違いしている事。モンスター?話の感じからして、魔獣の事でしょうか? に襲われる不安を感じている様ですね。
 先程の『声』の事もありますし。確認の為、声を掛けてみる事にしました。

 振り向いた二人はこれまた見事な銀の瞳。
 近くで見ると、その髪も混じり気の無い綺麗な銀でした。
 ああ、これは間違いありません。
 創成神がお使わしになったのでしょう。

 だとすれば、せっかくこの世界に降りて来て下さったのです。
 誤解を解き、不安要素を消して差し上げなければ。
 私は早々に、ここが荒野ではない事や神殿内は安全だ。という事を伝えました。



 お二人は所作も綺麗で礼儀も正しかった。

 移動中は騒がず静かで、歩き方も優雅。
 入室時も小さく「失礼します」と言って入り。
 私が紅茶を淹れている間も口を開かず、大人しく座って待っていました。

 弟君。ルア様は初めこそ混乱していた様子でしたが、見た目通りの年齢だったとしたらそれも仕方のない事。
 彼はまだ幼さの残る十~十一歳といったところでしょうか。

 それでも、今は静かに思考に耽って居られます。
 兄君のルキ様は成人前後、十四~十五歳くらいでしょうか。

 まだまだ少年。という風貌を残しながらも大変落ち着いて居られる。
 そのせいか妙な色気というか、艶を感じます。

 そして話してみると。
 物事の詳細を尋ねて来たり。鋭い質問をして来られたりと、驚かされました。

 通常の人間。
 特にこの歳の頃は『自分は特別な存在』という事に対して、浮かれ気味になる傾向がありますが、その様な素振りは一切見せず、甘言にも乗って来ない。

 流石は神の使わした神子。
 幼い姿をしていてもしっかりしていると感心致しました。

 正直、初めは私のお願いに二つ返事で返って来ると思っていたのですが、ね。

 私は必要とあらば、兄上である国王陛下をも、丸め込む…ん゙ん゙っ、説得出来る自信があるのですが、このお二人には通用しなかった様です。

 ルキ様は甘言に乗る事なく、時間が欲しいと仰り。ルア様はずっと沈黙を通して居られる。

 その後も、お二人は上流階級の方だろう。と思い、側付の有無をお伺いしたのですが、断られてしまいました。

 基本、神殿の者は身の回りの事は自分でする事になっていますし。人手も足りないので助かりますが、お世話する者が側に居なくて大丈夫なのでしょうか。

 ですが、その慎み深いところにも好感が持てますね。

 少なくとも、兄君の方は人柄も良さそうですし。弟君はまだ幼い。
 これなら憂う事無く囲え…、保護出来そうです。

 最近は瘴気が濃くなっている所為か、貴族達の浄化スキル持ちに対する圧を感じますし。先日も神殿騎士見習いの拉致未遂があったばかり。

 警戒はしていますが、治癒スキルを持った神官を狙う者もまだいるでしょう。

 一部の罰当たり者が何を仕掛けて来るか分かりませんから、警備を強化しないと。



 この後。お二人の護衛の選抜をお願いする為。騎士隊長に事のあらましを説明したのですが…、一人で行動した事に対し、長いお説教が付いて来ました。

 次に同じ事をやったらお仕置きをする。と言われましたが、何なら今夜でも良いのですよ?

 ねぇ、ティグ。




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