1 / 71
1・異世界転移
しおりを挟む
「弟の異世界転移に巻き込まれたようですが、とりあえず俺はメシ炊き男になろうと思います。」
1・異世界転移異
俺は清宮 留輝 現在二十一歳。
両親は二年前に他界し、高校生になったばかりの弟と二人暮しだ、って誰に向けての自己紹介だよってツッコミは置いといて、んっ出来た!
今日から弟の留愛は二泊三日のキャンプ合宿で、初日の昼は弁当が欲しいって言うからいつもより早目に起きて作ったんだ。
近頃の留愛は、友達との付き合いで、昼は学食か購買で食べると言っていて、作らなくていいぶん楽にはなったが、ちょっと寂しかった。
それに、最近の留愛は少し様子がおかしくて気になっていた。でも、思春期というやつかもしれない。と様子を見ることにしたんだ。
それが今回のキャンプ合宿で弁当を作って欲しい。って言われた時は嬉しかった。
さて、後は留愛が起きてるか確認して俺も出勤しないとって思っていたら、階段を降りる音が聞こえて来た。
「兄ぃ~、良い匂い~」
「おぅ、おはよう。 よく起きれたな、朝食は?」
「へへっおはよーっ
楽しみにしてたから、頑張って起きたよ! 朝は牛乳とビスケットでいいー」
「ああ、キャンプ場の近くに湖があるんだったか」
「そっ!スケッチするの!」
相変わらず朝は少食だな。と思いながら楽しそうに話す留愛を横目に、残った弁当の具材を冷蔵庫に仕舞ったりしていたら、玄関に向かうタイミングが重なった。
鍵閉めとくから、先に出ていいぞ。 と言うと「はーい!じゃ、行って来まーす! 」と軽快な返事をして出て行った。
続いて俺も靴を履き、顔を上げると違和感を感じた。
扉が開けっ放しなのは良いとしよう。
この後直ぐ、俺も家を出るからな。
でも、俺達の家は路地の突き当たりだ。ダッシュしたとしても後ろ姿くらいは見えるし、いくら若さがあるとはいえ、あんなデカいリュックを背負って早く走れるとは思えない。
おかしいな。 と思いながら自分の荷物を持って、玄関を一歩出た瞬間。
皆さんお分かり頂けるだろうか。階段を踏み外した時の浮遊感を、段差はもう無いと油断していた時に下りの段がまだ残っていた時の驚きを。
まさに、それ!
しかもここは玄関先。咄嗟に掴まりたい手摺りなど存在するはずも無く、俺はそのまま落ちた。
落ちた距離は体感にして二メートル無いくらい、か。
それでも充分な恐怖を味わったけどな! でも…、思っていたより衝撃は少なかった。
上を見上げれば早朝の白みかかった空。
周りを見渡せば、落とし穴ではなく見通しの良い平原。
どういうことだ? と困惑していたら、下からバフバフと芝生を叩く音がする。
視線を下げると、俺の尻の下でうつ伏せ状態の留愛が、一生懸命芝生を叩いていた。
「っ…留愛?! 悪いっ」
どうやら俺は弟を下敷きにしていたようで、慌てて飛び退いた。
「うぇ~んっ内蔵飛び出るかと思ったぁぁ…っ
もーっ、誰?!ウチの玄関前に穴掘ったの!集合時間に遅れるじゃん!……って、ここ何処?」
「わからん」
「僕達の家は?」
「わからん」
「どうやって帰るの?」
「わからん」
「キャンプは?」
「それも…分からんな」
「じゃあ、じゃあ、なんで兄ぃは銀色なの?」
「それはお前もだ」
「まじで?!」
そう、留愛の髪と瞳は銀色に染まっていた。
そして、留愛の言葉通りなら俺も同じだろう。
体を起こしながら一通り騒ぎ、疑問を投げて来る留愛の問に答えていると、段々絶望的な顔になっていく留愛。
「それって…それってそれって、ラノベでよく見る異世界転生とか転移ってこと!? あれは小説の中の物語として! 自分とは関係無いから楽しんで読めるんだよっ! 主人公がピンチになっても、主人公だから何とかなるって精神で! 実際、いきなりこんな原っぱに召喚されても、自分の立ち位置が分からないんじゃ、どうしょうも無いじゃん! しかも召喚ってこう、専用の部屋で魔法陣の上でパァーって現れて、周りに偉い人達が居て歓迎されるんじゃないの?! なのに、なんでこんな荒野に放り出されるの?!! 上から兄ぃ落ちて来て地味に重かったし! 僕、武器なんて持ってないからモンスターに襲われたって、戦えないよ?! 逃げれる自信だってないしっ早くチート級の能力くれないと、周りに人も町も無いし絶望的じゃん!」
・・・、ノンストップで言い切った我が弟に拍手を贈りたい。
そして、地味に重くて悪かったな。
よくさ、緊急時に必要以上にパニック起こしてる人を見ると冷静になれるって言うだろ?
あれって本当なんだなって思ったよ。
「貴方方が『浄化出来る者』ですね」
背後から声をかけられて振り向くと、西洋ファンタジーっぽい司祭服を着た、金髪長身のキラッキラな美形男性が立っていた。
「「浄化?」」
「はい。先程神託が降りて、その直後に裏庭の空間が歪む気配がしたもので、もしやと思い、お迎えに参りました。
ここでお話するのも何ですし、中に入りましょう」
視線で促され、そちらを見ると大きな建物があった。
いくら背後にあったからって、あんなデカい建物が近くにあるのに気付かなかったとは、俺も動揺してたのかな。もっとしっかりしないと。
迎えに来たと言う男性は、俺達を案内する様に少し前を歩き。
さっきの場所は神殿の裏庭で、荒野ではないという事。
街の外には魔獣も出るが、神殿内で過ごす分には安全だし、護衛も付けるから安心してほしいと話した。
どうやら、留愛の混乱振りを見ていたようだ。
ウチの弟がスミマセン。 と言うと、笑って許してくれた。
1・異世界転移異
俺は清宮 留輝 現在二十一歳。
両親は二年前に他界し、高校生になったばかりの弟と二人暮しだ、って誰に向けての自己紹介だよってツッコミは置いといて、んっ出来た!
今日から弟の留愛は二泊三日のキャンプ合宿で、初日の昼は弁当が欲しいって言うからいつもより早目に起きて作ったんだ。
近頃の留愛は、友達との付き合いで、昼は学食か購買で食べると言っていて、作らなくていいぶん楽にはなったが、ちょっと寂しかった。
それに、最近の留愛は少し様子がおかしくて気になっていた。でも、思春期というやつかもしれない。と様子を見ることにしたんだ。
それが今回のキャンプ合宿で弁当を作って欲しい。って言われた時は嬉しかった。
さて、後は留愛が起きてるか確認して俺も出勤しないとって思っていたら、階段を降りる音が聞こえて来た。
「兄ぃ~、良い匂い~」
「おぅ、おはよう。 よく起きれたな、朝食は?」
「へへっおはよーっ
楽しみにしてたから、頑張って起きたよ! 朝は牛乳とビスケットでいいー」
「ああ、キャンプ場の近くに湖があるんだったか」
「そっ!スケッチするの!」
相変わらず朝は少食だな。と思いながら楽しそうに話す留愛を横目に、残った弁当の具材を冷蔵庫に仕舞ったりしていたら、玄関に向かうタイミングが重なった。
鍵閉めとくから、先に出ていいぞ。 と言うと「はーい!じゃ、行って来まーす! 」と軽快な返事をして出て行った。
続いて俺も靴を履き、顔を上げると違和感を感じた。
扉が開けっ放しなのは良いとしよう。
この後直ぐ、俺も家を出るからな。
でも、俺達の家は路地の突き当たりだ。ダッシュしたとしても後ろ姿くらいは見えるし、いくら若さがあるとはいえ、あんなデカいリュックを背負って早く走れるとは思えない。
おかしいな。 と思いながら自分の荷物を持って、玄関を一歩出た瞬間。
皆さんお分かり頂けるだろうか。階段を踏み外した時の浮遊感を、段差はもう無いと油断していた時に下りの段がまだ残っていた時の驚きを。
まさに、それ!
しかもここは玄関先。咄嗟に掴まりたい手摺りなど存在するはずも無く、俺はそのまま落ちた。
落ちた距離は体感にして二メートル無いくらい、か。
それでも充分な恐怖を味わったけどな! でも…、思っていたより衝撃は少なかった。
上を見上げれば早朝の白みかかった空。
周りを見渡せば、落とし穴ではなく見通しの良い平原。
どういうことだ? と困惑していたら、下からバフバフと芝生を叩く音がする。
視線を下げると、俺の尻の下でうつ伏せ状態の留愛が、一生懸命芝生を叩いていた。
「っ…留愛?! 悪いっ」
どうやら俺は弟を下敷きにしていたようで、慌てて飛び退いた。
「うぇ~んっ内蔵飛び出るかと思ったぁぁ…っ
もーっ、誰?!ウチの玄関前に穴掘ったの!集合時間に遅れるじゃん!……って、ここ何処?」
「わからん」
「僕達の家は?」
「わからん」
「どうやって帰るの?」
「わからん」
「キャンプは?」
「それも…分からんな」
「じゃあ、じゃあ、なんで兄ぃは銀色なの?」
「それはお前もだ」
「まじで?!」
そう、留愛の髪と瞳は銀色に染まっていた。
そして、留愛の言葉通りなら俺も同じだろう。
体を起こしながら一通り騒ぎ、疑問を投げて来る留愛の問に答えていると、段々絶望的な顔になっていく留愛。
「それって…それってそれって、ラノベでよく見る異世界転生とか転移ってこと!? あれは小説の中の物語として! 自分とは関係無いから楽しんで読めるんだよっ! 主人公がピンチになっても、主人公だから何とかなるって精神で! 実際、いきなりこんな原っぱに召喚されても、自分の立ち位置が分からないんじゃ、どうしょうも無いじゃん! しかも召喚ってこう、専用の部屋で魔法陣の上でパァーって現れて、周りに偉い人達が居て歓迎されるんじゃないの?! なのに、なんでこんな荒野に放り出されるの?!! 上から兄ぃ落ちて来て地味に重かったし! 僕、武器なんて持ってないからモンスターに襲われたって、戦えないよ?! 逃げれる自信だってないしっ早くチート級の能力くれないと、周りに人も町も無いし絶望的じゃん!」
・・・、ノンストップで言い切った我が弟に拍手を贈りたい。
そして、地味に重くて悪かったな。
よくさ、緊急時に必要以上にパニック起こしてる人を見ると冷静になれるって言うだろ?
あれって本当なんだなって思ったよ。
「貴方方が『浄化出来る者』ですね」
背後から声をかけられて振り向くと、西洋ファンタジーっぽい司祭服を着た、金髪長身のキラッキラな美形男性が立っていた。
「「浄化?」」
「はい。先程神託が降りて、その直後に裏庭の空間が歪む気配がしたもので、もしやと思い、お迎えに参りました。
ここでお話するのも何ですし、中に入りましょう」
視線で促され、そちらを見ると大きな建物があった。
いくら背後にあったからって、あんなデカい建物が近くにあるのに気付かなかったとは、俺も動揺してたのかな。もっとしっかりしないと。
迎えに来たと言う男性は、俺達を案内する様に少し前を歩き。
さっきの場所は神殿の裏庭で、荒野ではないという事。
街の外には魔獣も出るが、神殿内で過ごす分には安全だし、護衛も付けるから安心してほしいと話した。
どうやら、留愛の混乱振りを見ていたようだ。
ウチの弟がスミマセン。 と言うと、笑って許してくれた。
121
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!
迷路を跳ぶ狐
BL
森の中の小さな領地の弱小貴族の僕は、領主の息子として生まれた。だけど両親は可愛い兄弟たちに夢中で、いつも邪魔者扱いされていた。
なんとか認められたくて、魔法や剣技、領地経営なんかも学んだけど、何が起これば全て僕が悪いと言われて、激しい折檻を受けた。
そんな家族は領地で好き放題に搾取して、領民を襲う魔物は放置。そんなことをしているうちに、悪事がバレそうになって、全ての悪評を僕に押し付けて逃げた。
それどころか、家族を逃す交換条件として領主の代わりになった男たちに、僕は毎日奴隷として働かされる日々……
暗い地下に閉じ込められては鞭で打たれ、拷問され、仕事を押し付けられる毎日を送っていたある日、僕の前に、竜が現れる。それはかつて僕が、悪事を働く竜と間違えて、背後から襲いかかった竜の王子だった。
あの時のことを思い出して、跪いて謝る僕の手を、王子は握って立たせる。そして、僕にずっと会いたかったと言い出した。え…………? なんで?
二話目まで胸糞注意。R18は保険です。
死にたがりの僕は言葉のわからない異世界で愛されてる
ミクリ21 (新)
BL
父に虐待をされていた秋田聖(17)は、ある日自殺してしまう。
しかし、聖は異世界転移して見知らぬテントの中で目覚めた。
そこは何語なのかわからない言語で、聖は湖に溺れていたのを森の巡回中だった辺境伯の騎士団が救出したのだ。
その騎士団は、聖をどこかの鬼畜から逃げてきた奴隷だと勘違いをする。
保護された聖だが、聖は自分は死ぬべきだという思いに取り憑かれて自殺ばかりする死にたがりになっていた。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる