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第七章 天竜国編

第1話 天竜国にて

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 史郎達十人は、天竜モースの背に乗って、天竜国へ降りたった。

 どうやら、ここは浮遊大陸らしい。下から見てこの大陸が見えないのは、ここが雲の中に隠れているからのようだ。
 俺達は、光り輝く不思議な木々に囲まれている。

 木は半透明で、まるで水晶のようだった。本来の色が分からないほど様々な色彩を映しだしている。それがまた隣の木に映って、森全体が万華鏡のようだ。

 俺達は、一歩一歩色彩が変わる美しい森の中を進んでいく。天竜モースは、二本足でドスドス音を立てて歩く。

 20分ほど歩くと、森がひらけ、大きな崖がそそり立っていた。
 あちらこちらに大きな穴が開いている。
 モースは、崖の下部にある特に大きな穴に入って行く。

 俺達が穴に入ると、巨大な洞窟の中に多くの竜が二列に並んでいた。洞窟の奥から、一際大きな青い竜が、こちらに近づいて来た。
 その竜が、うなり声を上げる。
 モースが、通訳する様だ。

 『ようこそ参られた。我は、天竜の長、黒竜族の事では迷惑をかけたな』

 『こんにちは。シローです』

 俺は、リーヴァスさんから一人ずつ仲間を紹介していった。
 最後に、一番後ろにいたナルとメルの番になった。二人の娘が前に出てくる。

 「パーパ、このおじちゃん誰ー?」

 「おっきいねー」

 二人は、どんな相手でも物怖じしないからね。

 竜の長がピタリと動きを止めた。
 ナルとメルが、おやっという感じで小首をかしげている。
 人間でいうなら早口といえばいいのか、長が、むにゃむにゃと聞こえる声を出している。

 『長は、その方々は、どなたか、と尋ねています』

 『俺とルルの娘だが?』
 
 『そんなはずはない。この方々は、竜に縁がある子供であろう』

 『……』

 さすがに、気がついたか。まあ、竜なら分かるだろうな。竜人ですら分かったんだから。
 俺は、ルルと視線を交わした。ルルが頷くのを見て、ナルとメルに竜の姿になるように耳打ちする。
 二人が竜の姿になったとたん、居並ぶ竜が全員ひれ伏した。膝を折り、首を地面に着けている。

 また、竜の長が、早口でなにかごにょごにょ言った。

 『し、真竜様っ!!』

 モースが、戸惑いながら、長老の言葉をそう伝えた。

--------------------------------------------------------------------

 ナルとメルが竜から人の姿に戻ると、竜達の喧騒は少し収まった。

 そして、驚くことに、何匹かの竜が人の姿になった。おそらく、ナルとメルに合わせたのだろう。人化しなかった竜達は、名残りおしそうに、ナルとメルの方を振りかえりながら、洞窟の奥へ姿を消した。

 「ようこそ、天竜国へ」

 老人の姿になった天竜の長が頭を下げる。どうやら天竜は、人化した姿でなら、竜人の言葉が話せるようだ。

 「真竜様に置かれましては、ご機嫌麗しゅう」

 老人がナルとメルの前に膝まずいて挨拶をする。娘達は、キョトンとした顔をしている。それはそうだよね。そんな難しい言葉で挨拶されてもねえ。
 背後から、二人の肩を抱いたルルが代わりに挨拶した。

 「初めまして」

 長老は、頭を下げたまま、うやうやしく言った。

 「真竜様においでいただくとは、誠に喜ばしき事。どうか、我らの気持ちをお受けとりくだされ」

 彼は、そう言うと、洞窟の奥に向けて歩きだした。ついてこいということだろう。

 一行は、俺とルルに連れられたナルとメルを先頭に、洞窟の奥へと進む。壁に埋め込まれた水晶の光が照らす、広い通路が続いていた。


 やがて、史郎達は、通路から大きな部屋に出た。
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