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第六章 竜人世界ドラゴニア編

第22話 合流

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 パーティ・ポンポコリンと加藤は、二人の竜人に導かれ、都に向かった。

 案内役の二人は両方妻帯者である。未婚の者に任せると、コリーダを巡って血みどろの争いが起きそうなので、村長の判断でそうなったそうだ。
 森が途切れて草原に変わったところで、ルンドという名の竜人が前方を指さす。

 「あそこが、都だ」

 「おお!」

 高い城壁が見える。
 シローがそこにいると思うと、ルルの胸は高鳴った。

 門番と何か話すと、ルンド達は挨拶をして村へ引きかえしていった。

 「こりゃまた、凄い数の迷い人だな」

 門番の大柄な竜人が驚いている。

 「ルンドから話は聞いてる。
 ここを入るとまっ直ぐ行ったところにある、こんな形の門がある建物に行くといい」

 「かたじけない」

 リーヴァスが礼を返した時、コルナが声を上げた。

 「あっ、その袋は?!」

 門の所には、門番が休息するための小さな机と椅子があるのだが、コルナはその机に載ったものを指さしていた。
 机の上には、紙袋が置いてあり、それには丸いマークがついていた。丸いマークの上から二つの三角形が耳のように飛びだしている。

 「なぜ、この印がここに?」

 ルルが思わず声を上げる。自分が尋ねられたと勘違いした門番がそれに答えた。

 「ああ、そりゃ『ポンポコ商会』ってところが売ってるクッキーだぜ。甘くて凄く旨いんだ」

 「こりゃ、ボーの仕業だな」

 加藤が、呆れたように言う。

 その後、ラピと名乗った門番に、『ポンポコ商会』までの道を尋ねた一行は、町に入った。

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 リーヴァス達八人は、教えられた道順に沿って、町中を歩いていく。

 青い髪の竜人達が、足を止めてこちらを見ている。やはり、「迷い人」が珍しいのだろう。特に、コルナとミミが注目を集めている。道端で遊んでいる子供達は、遠慮なく彼女達を指さしたり、耳やしっぽについて話している。

 やがて、道の両側に商店が増えてきた。商業地区へ入ったようだ。
 
 前方に、ひときわ多くの人が並んでいる店がある。列の最後尾で看板を掲げている者を見て、ミミが叫び声を上げた。

 「ポン太!」

 彼女は、物凄いスピードでポルの所に駆けよった。

 「あれ? ミミ、どうしてここにいるの?」

 ポルがのんびりした声で尋ねる。ミミは、膝の力が抜けそうになった。

 「あんたねえ、『どうしてここにいるの?』じゃないわよ!
 ポータルを渡ってきたに決まってるでしょ」

 「へー、そう」

 彼が余りにものんきなので、ミミは本当に膝を着いてしまった。

 「あっ、ポルだ!」
 
 「ぽるっぽー!」

 ナルとメルが、さっそくポルのしっぽを狙う。

 「シローさーん!」

 ポルが悲鳴を上げる。

 並んでいる竜人をかきわけて、シローが姿を現した。

------------------------------------------------------------------

 「シロー!」 

 「お兄ちゃん!」 

 「シロー……」

 ルル、コルナ、コリーダが、俺のところに駆けよる。

「よく来たね、みんな。元気だったかい」

 三人は、涙ぐんでいる。

 ドーン、ドーンとナルとメルが俺にぶつかってくる。

 「「パーパ!」」

 二人の頭を撫でてやりながら、俺はリーヴァスさんに黙礼した。
 これだけの人数を、しかもナルとメルまで連れて、ここにたどりつくのは容易ではなかったはずだ。
 リーヴァスさんの後ろから、思いもかけない人物が現れた。

 「ボー、無事で何よりだ」

 「加藤! お前まで来たのか」

 「おいおい。『お前まで』は無いだろう」

 俺達は、グッと握手した。

 「シロー兄ちゃん、この人達は?」

 店の方から、イオがやってきた。

 「イオ。紹介するよ。俺の家族と友人だ」

 この日、ポンポコ商会ドラゴニア支店は、早々に店じまいした。

-------------------------------------------------------------------

 パーティ・ポンポコリンのメンバーと加藤はイオの家に作った地下室に集まった。

 全員が座って十分な空間が取ってある。

 「リーダーとの再会を祝って乾杯!」

 ミミの音頭で乾杯する。リーヴァスさんは「フェアリスの涙」、他はエルファリアのジュースだ。

 「なにっ、これ!? 凄く美味しい」

 イオはジュースが気に入った様だ。

 「みんな、これを食べてごらん」

 ネアさんが運んできてくれた焼きたてのクッキーに、目の前で蜂蜜をかける。

 「あ、これ、蜂蜜ね?」

 コルナが言う。

 「な、なに!? この味! こんな蜂蜜初めて食べた」

 「だろう。このくらいあるでっかい蜂が作る蜂蜜なんだよ」

 俺が握りこぶしを作って見せる。

 「パーパ。コー姉が、ナルをその蜂から守ってくれたの」

 「シロー、コルナはこの子達を守って蜂に刺されたんですよ」

 ルルが教えてくれる。

 「えっ!? コルナ、大丈夫かい?」

 「ええ。聖女様に頂いた、治癒の魔石で治してもらったの」

 俺は、点ちゃんに頼んで、コルナを診てもらった。

 『↑(Pω・)背中にまだ蜂の針が残ってるから、抜いておくよー』

 点ちゃん、ありがとう。

 「ミミちゃんと、コリーダ姉も、ケガした」

 メルが報告する。

 「二人共、大丈夫?」

 「大丈夫だよ」 

 「ええ、もうすっかり」

 「帰ったら聖女様と女王陛下には、お礼をせねばなりませんな」

 「女王陛下?」

 「シロー、聖女様の力が込められた治癒の魔石は、アリストの国宝だそうよ。女王様からお借りしたの」

 加藤、畑山、舞子が力になってくれたのか。


 史郎は、友人達に、心から感謝した。
 
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