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第四章 聖樹世界エルファリア編

第39話 ダークエルフ侵攻2

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200人のダークエルフ軍、魔術部隊を率いるプーダ将軍は、森の中を南東から王城に近づいていた。


攻撃成功の合図が、魔獣部隊、グリフォン隊それぞれから入る予定なのだが、いくら待っても連絡がない。
痺れを切らした将軍は、自分の部隊単独で、大規模魔術をエルフ王城に打ちこむことにした。

森の中に展開した200人の魔術師が、詠唱を始める。
プーダ将軍自らが担いだ魔道武器の先端が白く光りだす。

今こそ時は来た。エルフに目にもの見せてやる。

彼は、大規模複合魔術『メテオ』発射の呪文を唱えた。
強い光を放ち輝く魔道武器の先端部分が発射される。
光は、王城上空に向け、飛んでいく。


光は、放物線の最も高い位置まで来ると、はじけて巨大な火の玉となった。

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ギルド近くの屋台を冷かしていたエルフの冒険者パリスとロスは、上空で音がしたのでそちらを見た。


城の上空に巨大な火の玉が浮かんでいる。

祭りに来ている民衆から、歓声が上がる。
しかし、パリスは、そのあまりの大きさに恐怖を感じていた。

次の瞬間、シュポッと音を立てて、火の玉が消えた。

祭り用の大きな魔術花火だわ、きっと。


彼女は気を取りなおし、次の屋台へ向かった。

---------------------------------------------------------------------

プーダ将軍は、魔術が消えて呆然としていた。


な、何が起きた!?

しかし、消えたと思っていた『メテオ』は、意外な場所に現れた。

最初に魔獣が森から出てきた荒れ地のすぐ上に巨大な火の玉が浮かぶ。
火球が地面と接触した。

ズウーンッッ

腹に響くような振動が森の中を走る。
解放された魔術の力から生み出された突風が、森の中を吹きあれる。
魔獣を避け、木の上に登っていたダークエルフの多くが、風に吹きとばされた。

「ええいっ! 諦めるな! 二発目を用意しろ」

プーダ将軍の掛け声で、再び200人のダークエルフが詠唱を始める。
二人の兵士が、箱に入った魔道武器を将軍のところまで運んでくる。
箱から太い槍のような魔道武器を出した将軍は、再びエルフ王城に狙いを定めた。

魔道武器の先が、王城へ向けて飛んでいく。
再び、空に巨大な火球が生まれた。

ショポッ

再び消える。

プーダ将軍は、髪の毛を掻きむしった。魔道武器は、あと一つしかない。
しかし、このまま諦めることは出来なかった。

三度の詠唱、そして、魔道武器の先端が王城に向け、美しい弧を描いて飛んでいく。

空中に火炎の花が咲く。

シュポッ

さすがのプーダ将軍も、がっくりと地面に両手を着いた。

「な、なぜだ……」


彼の言葉が、魔術部隊全員の気持ちを代弁していた。

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二万人の兵が吹きとばされた森の上空から声がした。


『ダークエルフの諸君、諦めて降参したまえ。君達の命は保証しよう。
降参しないなら、先ほどの魔術を君達の真上で使うぞ』

無機質な声が、森の木々の間を通りぬける。

『降参を決めた者は、武器を捨て、森から城側の空き地に出たまえ』

森の中に、武器を地面に落とす、ガチャガチャという音が響く。
兵士達は、両手を上げ、森から出てきた。

いつの間に現れたのか、エルフの軍勢が、城側の荒れ地に並んでいる。


ダークエルフの兵士達は、むしろ一様にほっとした表情をしていた。

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ダークエルフの統合本部上空からも同じ声がした。


スコーピオ総帥は戦闘の続行を諦めた。
大規模魔術『メテオ』の威力は、彼自身が一番よく知っている。
あれを頭上に落とされたら、生き残れるはずはない。
今は、恥を忍んでも生き残るのが先だ。


彼は、そう考えて降伏を決めた。

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プーダ将軍は、空から聞こえてきた声にホッとするとともに、武人として自分の身をどう処するか考えていた。

部下を生きのびさせるためにも、投降するのは仕方がない。
しかし、自分自身の事となると話は別である。彼自身の矜持がそれを許さなかった。



プーダ将軍は部下に投降するよう呼びかけると、空からの声が指示したように王城に向けて歩きだすのだった。

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