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第四章 聖樹世界エルファリア編

第2話 ギルド本部

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一行は二時間ほどかかって、ひらけた土地に出た。


小さな村のような集落だが、各家がしっかりした造りになっており、まるで高級住宅地のように見える。
その集落の中心にある、大きな三階建ての建物の前で馬車が止まった。

「ようこそ、ギルド本部へ」

エレノアさんが先に馬車から降り、俺たちをギルドへ招きいれてくれた。

中は大きな教室くらいの広さがあり、丸テーブルが10脚ほど備えつけられている。
カウンターが一つだけあるが、人は並んでいない。
他のギルドと異なり、壁には依頼の紙が貼られていない。
奥の壁には、枠が額縁のように飾られた大きな窓があり、はめ込まれたガラスを通して神聖神樹の姿が見えた。

エレノアさんとレガルスさんは、窓の前に二人並ぶと、手を胸に当てて何か祈っているようだ。

俺達は窓際まで呼ばれ、窓枠の下にある、大きな白銀色のプレートを見せられた。

           聖樹の元に

誰かの手書きの文字を、彫ったものらしい。
俺がもの問い気な顔をしていると、レガルスさんが説明してくれた。


「これが、俺達ギルドの存在理由だ。 ギルドは、元々、神聖神樹、そして神樹を守るために作られたんだ」

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レガルスが、ギルド成立の大まかな歴史を話してくれた。


時は、約200年前。
ポータルズの世界群が、まだ落ちついていなかったときにさかのぼる。
その頃は、各世界の中で、そして、世界間に争いが絶えない時代だった。
それはまた、魔道具の素材として貴重な神樹が、しきりに伐採された時代でもあった。
各世界の神樹が激減し、中にはほとんど採りつくされた世界もあった。

しかし、異世界から現れた英雄によって、事態は一変する。
彼は各世界の争いをそれぞれ収めてまわり、それぞれの世界に神樹を保護する機関を設置した。
これがギルドの始まりである。
先ほど見たプレートは、英雄が書き残したものだそうだ。


史郎は、英雄の偉業に感心するとともに、彼がなぜそこまでして神樹を守ろうとしたのか、そこに思いを巡らすのだった。

-------------------------------------------------------------

ギルドから斡旋された住居は、大木の上にあった。


周囲が30メート以上ある大木が、S字を描いて上空に伸びている。
そのS字の空間部分に、部屋がしつらえてあった。
だから、床と天井、片側の壁は大木そのものである。

開口部には、大きな窓があり、それから外へも出られるようになっている。
これぞ本物のウッドデッキである。

驚くことに、この住居には二階もあって、ウッドデッキ部分から上に梯子が渡してある。
S字が形造る上側の空間へ行けるようになっている。

ナルとメルは、あっという間に梯子を上がってしまった。
コルナが、すぐ後を追った。
上の部屋は、やはり大きな窓があり、そこからは神聖神樹が見える。

子供達は、すでに部屋の中を駆けまわってコルナに遊んでもらっている。
この家が気に入った様だ。

せっかくだから、点魔法で二階と一階とをつなぐエレベーターを作った。 
名付けて、「点ベーター」。
細長いポールに付いたステップを踏むと、自動的に二階に上がってくれる。
二階から降りる時も同様である。

エレノアさんが、それを見て目を丸くしていた。

「前にも、そういうの作ったことあるの?」

「いえ、初めてです」

そう答えると、さらに驚いていた。

一階のリビングのテーブルに、香草茶を出す。
香草茶セットは、常に複数を点ちゃん収納してある。
今回は、「旅の疲れをとる」香草茶である。
エレノアさんとレガルスさんも、美味しそうに飲んでいる。

二階から、ナルとメルが降りてくる。
点ベーターに二人乗りしたらしい。

「パーパ、おっきな木が見えるよ」

「マンマ、お腹すいた」

いつもの二人である。
しかし、それを聞いたレガルスさんの手がピタッと止まる。
手にお茶のカップを持ったままである。

「パーパ、マンマ……ど、どういうことだ」

ルルが説明する。

「この子がナル、この子がメル。 私とシローさんの子供です」

「……。。。」

動かないと思ったら、レガルスさんが白目をむいて気絶していた。
誰かに似てるよね?
エレノアさんが、夫の手からカップを取って自分が飲んでいる。
なんか、自然だね。

「あなたの活躍は、ギルドを通して、かなり詳しく知っているつもりよ。たいしたものね」

「いえ。 全て友人達の助けがあってのことです。
ルルやリーヴァスさんはもちろん、このコルナにも助けてもらいました」

俺がコルナの方を向く。
コルナが珍しく照れて、顔を赤くしている。

「コルナちゃん、あなたも神樹の巫女ね?」

エレノアさんに指摘されたコルナが、びっくりしている。
神樹の巫女?

「すごいわね。 神樹の巫女が三人も揃うなんて」

え?  三人?

「エレノアさん、ルルも神樹の巫女なんですか?」

思わず俺が尋ねる。

「いえ。 ルルも神樹様から加護をもらっているみたいだけど、この子は違うわよ」

となると……

「コルナちゃん、モリーネ姫、そして、私ね」



えっ!?  モリーネとエレノアさんが神樹の巫女?
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