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第三章 学園都市世界アルカデミア編
第26話 証拠
しおりを挟む巨大な半球状の建造物は、円形の底面をゆっくり広場に接触させた。
膨大な質量が動いたはずなのに、地面がピクリとも揺れない。
ここにきて、法廷内の他の人々も、その建造物に気付き始めた。
「な、何だ、あれは!」
賢人たちは、それが何か知っているので、顔色(がんしょく)を失っている。
そ、そんな馬鹿な! どうやって?
五賢人は、その知性が邪魔をして、余計にこの光景を信じることが出来なかった。
「あなたが、求めていた証拠です」
ポルナレフは、証拠を求めていた賢人の顔を、突き刺すように指を向けた。
その時、裁判長の後ろの壁に、突然、巨大なスクリーンが現れた。
「えー、テス、テス。
あれ? これ、もう音が入ってるの?」
法廷内の緊迫した状況に似合わない、間が抜けた大きな声がした。
スクリーン上に映ったのは、猫人族の少女だった。
「えー、こちら、猫人のミミです。 獣人世界のギルドからの依頼で、この放送を行っています。
え? そんなに大きな声でなくても大丈夫? 失礼しました。 では、音量は、このくらいで」
法廷内の人々は、あまりのことに、あっけにとられてポカーンとしている。
自分のことをミミと名乗った少女は、マイクを右手、何かの魔道具を左手に、後ろの壁の方を向いた。
映像が、広角に切り替わる。
少女は、半球状の建造物の前にいた。
「では、これから、この秘密施設の中に入って行きますね」
どうやったのか、半球状建造物の壁の一部が切り取られ、外に倒れた。
「さあ、お見逃しなく」
ミミは、どんどん建物の中心に向かって進んで行く。
5分ほどで通路が終わり、やはり半球状の空間に出た。
底面をぐるりと取り囲むように部屋の窓が見える。
「では、こちらの部屋から、見ていきましょう」
ミミは、左回りに施設を回るようだ。
「おお! これは、なんということでしょう。 沢山のカプセルが置かれています。」
最初の部屋には、ずらりとカプセルが並んでいた。
「では、部屋に入ってみましょう」
クリスタルガラスが、ドア型に綺麗にくり抜かれる。 ミミは、そこから中に入っていった。
カプセルを見下ろす映像が映し出される。
一部、透明なカプセルから見える顔は、さっき証言をした少年と同じ種族の様である。
「まあ! 何ということでしょう。 狸人がカプセルの中に捕らえられています。
このパイプは……なんと、狸人の血が流れているようです」
映像は、カプセルに横たわる狸人を、次々に映し出していく。
「さあ、次の部屋に行ってみましょう」
少女は、次々と部屋を回っていく。
そこに映される衝撃の映像は、人々を驚愕と恐怖に陥れた。
耐えきれず、大法廷の隅で吐いている者までいる始末である。
しかし、誰もそれをとがめる者はいない。
少女は、足早に実験室を回ったが、それでも一時間以上はかかった。
最後の部屋を出ると、画面に向かって挨拶をした。
「さあ、いかがでしたでしょうか。 提供は、獣人世界、ケーナイのギルド。協力は、獣人議会の皆様でした。
あ、忘れてた。 お伝えしたのは、ケーナイのギルド所属、ミミでした。
目下、売り出し中のパーティ「ポンポコリン」も、どうかよろしく。
では、またお会いしましょう。 さよなら。 さよなら。 さよなら」
ミミがこちらに手を振る画像を最後に、スクリーンが暗くなる。
凍り付いていた人々が、動き出した。
それは、賢人も同様だった。
「その施設と我々が関係あるという証拠はあるのか?」
「正式な手続きを踏まない証拠など、無効だ!」
被告人席から飛び出して、裁判長に食って掛かっている。
そのとき、また法廷内が静まり返った。
再び、スクリーンに映像が映し出された。
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