上 下
7 / 607
第一章 冒険者世界アリスト編

第5話 勇者の余りもの ー点魔法登場 ー 

しおりを挟む

最高に盛り上がったところで盛り下げる。ええ私ですよ、史郎です。

でも、これって自分じゃどうしようもないじゃん。

「もしかしてすごい魔術を持っているんじゃないか。」

レダーマンがフォローをいれるが、これってフォローになってるんですかね。
だってレベル1ですよ1。

「点・・・点魔法・・」

黒ローブの小さな声が聞こえた。

点魔法って何よ。
あ、これか。
視界中央に青色の小さな点が見える。
まあ、注意しないと見逃すレベル。

「えーっとですね。 視界に小さな点が見えてます」

「・・・」

静寂が辺りを覆う。
こ、怖いよ誰か何か言ってくれ。
私、目が点になっちゃいますよ。
お、うまいこと言った俺、ってそんなことしてる場合じゃないよね。

「お、王様。 とにかく聖騎士、聖女、勇者誕生のセレモニーを行わなくては」

レダーマン、ナイスフォローだが、なぜだか悲しいよ。

「そ、そうだな。 とにかく祝祭の準備じゃ。 レダーマン、ハートン、よろしく頼むぞ。」

黒ローブのおじちゃんの名前はちょっとかわいいハートンちゃん。
ってそんなこといってる場合じゃない? 
ど、どうもすみません。

---------------------------------------------------------------

その日のうちに史郎を除く3人の稀人の居室が王城本棟の中に用意された。
つまり、いま迎賓館のこの部屋には一人だけ。

ぽつ~ん。

部屋が広いだけ余計に、ぽつ~ん。
まあ、のんびりできるのは本望だけどね。

どうするかなこれから。
臨機応変もなにもこれだけ騒ぎになっちゃどうしようもないよね。
三人はすでにがっちり取り巻きに囲まれてるし。


ただ、王の間から別方向へわかれて退室するとき、舞子がすがるような眼でこちらを見てたのが気になるんだよね。

-----------------------------------------------------------------

困ったときの完璧執事さんいってみるか。


メイドさんにリーヴァスさんを呼んでもらう。

能力のことは隠して、王の間でおこった大まかなことを説明する。

話を聞いて、しばらく目を閉じて考えていた執事さんが、静かに目を開け話し始める。

「おそらく国にとって有用な能力を持たないお客様は、近くこの城からお出になることになるでしょうな」

さすが完璧さん。
でもそれくらいわかってるよ。
それから「お出になる」じゃなくて「追い出される」だからね。

「お客様は苦境に立たされるでしょうな。」

「何かアドバイスもらえませんかね。
まだこの国のことすら、ろくに分かっていないんですよ。」

「ふむ・・ お客様のために最善を尽くすのが執事の務め。
そうですな。 とりあえず、お客様にルルをつけましょう。
身の周りの仕事が減るだけでも、ご自身の行く末の準備がしやすくなると存じます」

え? ルルをつけるってことは・・

絶妙のタイミングで、部屋にルルが入ってくる。

「ルルや。 このお方についていく覚悟はあるか。」

「ございます。」

きっぱりって、即答かよ。
どうなっても知らないよ。
大人の階段上がりかけたの、つい昨日のことだよ?

うむ、こうなったら覚悟を決めるか。


どうせ追い出されるなら、自分から出ていこう。

------------------------------------------------------------

身の回りの物って言ってもほとんどないが、地球から着てきた服は綺麗に洗濯されて畳んである。
というよりルルが畳んでくれた。
上履きは置いていけばいいよね。
なんせもう泥まみれだし。
よし、ルルが用意してくれた袋に必要なものを入れて、さあ出発、とドアノブに手をかけるとドアがこちらに向かって開く。

「あぶなっ!」

て、加藤かよ。
畑山女史、舞子もいる。

「あんた、どうする気なの」

いきなり? 
畑山先生それは聞いちゃあ、はっ、ならねえよ~って、何させるの。

「いや、ちょっと散歩に行ってこようかと」

「荷物持ってか」

加藤、いつものお前はどうした。
その鋭さはお前じゃないぞ。

いきなり腹にズシンと衝撃がきたとおもったら舞子だった。

「史郎くん、いか、行かないで・・」

涙をいっぱいにためた目でじっと目詰められる。

ぐはっ。クリティカルダメージ。
もう私のHP残ってませんよ。

「ま、なんだ。ちょっと別行動するだけだ。
必ずお前らに会いに帰ってくるから」

まあ、嘘も方便といいますからね。
このままここにいては、3人の立場を悪くするだけって分かってるからね。
それに、この機会にいろいろ調べたいこともあるから、全くの嘘ってわけでもないしね。

左手で舞子を抱きしめて、右手で頭を撫でてやる。
これはどうしてもの時の必殺技で、舞子のおばあちゃんが亡くなったき以来、使うのは二回目である。

「本当だね。 本当に帰ってくるよね」

「ああ、本当だ」

舞子はその言葉に安心したのか、やっと離れてくれた。

「旦那様、そろそろご用意を」

て、ルルさん。
ここで旦那様はないよね。
こじれるの分かっててやってる?

「だ、旦那様ですって!
あなた史郎に何したの?!」

いや。 むしろ、こちらがしちゃった方なんだけどね。

「あ~なんだ、まだ土地に不慣れだろう。
だからリーヴァスさんが付けてくれたんだ」

「史郎、あんたこの子が目的で城を出るんじゃないの?」

畑山氏、それを言っちゃあ、おしめ~よ~。

とにかく泣きじゃくる舞子をまた必殺技でなだめて、畑山氏の冷たい視線は無視して、加藤と正面から向き合う。

「加藤・・二人は任せたぞ」

俺と加藤の関係なら、この言葉だけで十分だ。

加藤は珍しく真剣な顔でしっかり頷いた。

ほらね。

「で、あの娘との関係は?」



って、やっぱり加藤は加藤だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...