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第一章 冒険者世界アリスト編

第4話 王城での出来事

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食事を終えた史郎達は、食事処まで迎えに来た白騎士に先導され、天蓋付きの馬車で大通りを城へと移動していた。馬車の窓から見える街の風景は落ち着いており、治世の安定をうかがわせるものがあった。

ただ、市民の雑然とした生活力のようなものが欠けているようにも感じていた。

人々がこちらに向ける視線がどこか冷たく、王家の紋章を付けた馬車に対する反応らしくないような気もしていたが、これは考え過ぎだろうか。

城を取り囲む堀のところまで進んだ一行は、跳ね橋が下りてくるのを待つと、城門へ向かって静々と進んでいった。巨大な城門は前にたたずむものに拒絶と絶望そしてゆるぎない権威のメッセージを明確に伝えていた。
ありえないほどの質量をもつ城門が音一つ立てずに開いていく様は圧巻だった。
指輪で気づいたが、この国は魔術を確固たる技術体系に編み上げているようである。

城門から入ってしばらくすると馬車は右側へと方向を変えた。

「これから皆様が滞在するのはこの国の迎賓館となります。」

レダの説明は簡潔で、わかりやすい。
そうすることで、必要以上の情報を出さないようにしているのではないか、と史郎は考えていた。

修学旅行で見た美術館を思わせる重厚な石造りの洋館の前で馬車が止まる。

「どうぞ、ここからはこの者が案内いたします。」


馬車を降りたところには数人のメイドと黒い服を見事に着こなした執事らしき人が立っていた。

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体を腰のところからきっちり折り曲げる見事な礼をした後、老人が深いバリトンで話しかけてくる。


「今回お世話をさせていただきます。
リーヴァスと申します。
どうぞよろしくお願いいたします。」

スキがない。 完璧執事さんと呼ぼう。

彼に案内されて洋館の二階に上がる。

「こちらでございます。」

案内された部屋は、ホテルのスイートのようなつくりになっており、部屋内にさらにカギがかかる寝室が二つある。各寝室にベッドが2つずつあるので、男女で別れて利用することにする。

大きいほうの寝室はさっそく女子二人に押さえられてしまった。
まあ、部屋割りは実質畑山女史の一人舞台だったわけだが。
さすが学級委員長。

浴室は部屋に一つとあと、大浴場があると伝えられる。

女性二人はさっそく大浴場を利用するらしい。
お風呂に関しては女性は揺るがないよね。
こちらはまず加藤、そして次に俺が内風呂を使うことにする。

先に入浴を済ませた加藤がバスタオルを巻いただけの姿で寝室に入ってくる。

「落ち着かねえ、落ち着かねえ。」

真っ赤な顔でベッドの上にダイブしている。
湯あたりしたのか?
ちゃんと水気をぬぐってから横になれよ。
といってもわれらが加藤に、それを期待するのは酷というものだろう。

お湯をためた湯船に身を沈めていると、突然ドアがすうっと開いた。

だれ? メイドさん?

「お背中、流させていただきます」

おいおい、これは日本の高校生にはきついだろう。
まちがっちゃうと、お風呂で大人の階段上っちゃうよ。

ははあん。 加藤はこれやられたんだね。
で、真っ赤になったと。 
ウブダネ~。
まあ、でも確かにこれは落ち着かないな。

「お名前は?」

「え?」

「君の名前は?」

「ルルですが・・」

「どうしたの?」

「今までお客様に名前を聞かれたことがなかったもので・・」

なるほど、ガチガチの身分制度があるみたいだな。

「ルル。 この部屋の無粋な湯気は君には似合わない。
隣の部屋で待っていて。
そこで君の美しい顔を、よく見せておくれ。」

「!っ」

顔を真っ赤にさせてルルが浴室から出ていく。
ふう、作戦成功。
加藤、君のカタキはとったぞ。
言葉は結果が全て。
これで落ち着いて入浴できるよ。

入浴が終わって共用スペースに出てきた史郎を待っていたのは、うつむいてもじもじしているルルだった。
こ、これどうすれば?
言葉は結果が全て?
すみませんでしたー。

よくわからない男子たちのイベントをよそに、畑山と舞子の二人は、広~~~い(畑山談)お風呂をのんびり楽しんだようだ。

入浴って、本来くつろぐためのものだよねぇ。

男子部屋をリーヴァス執事が訪れた時、二人は疲れと忘れたい入浴体験から逃避するためぐっすり眠っていた。

「食事の用意が整いました。」

二人ともピンク色の夢を見ていたようで、顔を赤くしてうつむいている。

「こちらにお召し変えください。」

さすが完璧執事、眉毛ピクリとも動かさずに出て行ったよ。

用意された服に着替えて食事用のホールに案内されると、すでに席に座っている畑山女史から冷たい視線が。
ええ、エスコートしませんでしたよ。
それが何か? 
ピンクの夢が悪いんです。
私が悪いのではありません。

食事のほうは、なかなかのものだったが、昼に食べた食堂のインパクトが強すぎたためか、まあ、こんなものかなって感想だった。
コースで次から次へいろんな料理がでるのは面白かったけどね。

フォークの歯が二本だけだったり、包丁のようなナイフが出てきたりと、そういった点ではかなり楽しめた。
何に使うかわからない道具が何点かあったけど、食事するのが4人だけだからか、誰も尋ねなかったんだよね。

史郎はルルに聞きたいことがあったが、目を合わせるたびに彼女が真っ赤になって下をむいてしまうから、話しかけるタイミングを逃していた。

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城ではどこに耳があるかわからないから、深い話はしないようにしようってことだった。
だから、暇になっちゃって、あちこちうろついてみた。

その結果、迎賓館の中では、廊下と自分たちの部屋はOK。
一回階は×。
庭に出るのも×。
行けないところに行こうとすると、どこからともなくメイドさんが現れる。
本当はキッチンでこの世界の食材とか確認したかったんだけど、これじゃあね。

まあ、ついでだから緊急時にどこから外に出られるか、きっちりチェックして冒険終了。

ベッドに入るとすぐ眠ってしまった。

バナナはおやつにはいりますか?


ピンクの夢は睡眠時間に入りません。

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遅い朝食を食べた後は、謁見の準備である。
完璧執事さんから王様の前での振る舞いをいろいろ習う。

とにかくやってはいけないこと。
礼をした後、自分から頭をあげること。

そのうえ絶対、絶対やってはいけないことが、王と目を合わせること。
これは一度で死罪になるらしい。
怖すぎるよ異世界。

さて、いよいよ謁見の時間である。
みんな準備はいいかな。
臨機応変だよ。

控室から王の間の前までは紫色の花が撒かれていた。
この花はこの国の国花らしく、初代国王が愛してやまなかったそうだ。

国賓として招かれたものたちは、この花の上を歩けることを大変な栄誉とするらしい。
まあ、異世界人のこちらには、ありがたみがないわけだが。

そんなことを考えているうちに、王の間の前に来た。
ふんだんに銀色の金属を使った扉の前で待つ。
銅鑼のような音がして、扉がゆっくり開き始める。

視線が上を向かないよう自分のつま先を見ながら歩く。
横に騎士のサポートがあるからできるんだけどね。

礼をする位置まで来たようだ。
騎士が立ち止まる。

「跪いて頭を垂れよ」

跪いて頭を下げると、前方から威厳のある声がした。

「頭を上げよ」

執事さんから習った通り、1mくらい前の地面がみえるところまで頭を上げる。

「異世界からの稀人でございます。」

おや、この声はレダさんか。
ということは彼は騎士の中でもかなり位が高いな。
近衛騎士団長とかかな。

「レダーマン、ご苦労であった。」

やばい、吹き出しそうになった。
かっこいいけどマンってなんですかマンって。
ウル〇〇マンですか。
自分ならボーマン、ボーノマン。
やばい肩が震えてくる。
おもしろすぎる。

「そちらが稀人か。
して、自分たちの世界のことを話せるか。」

息をのむ気配がした。

「はい。 地球と申します世界から参上しました。」

一瞬王の取り巻き達が大きくどよめく。

「ほうほう! 地球とな、地球のどこから来たのだ」

「日本という国でございます。」

どよめきがさらに大きくなる。

「静まれ! 王の御前であるぞ。」

レダーマンの張りのある声で静寂が戻る。

「やはりそうか! 皆が黒髪であるから、もしやと思っていたがやはりな!」

やはり?  すでにこの世界に地球および日本の情報がある程度あるらしい。

そして黒髪? 荷馬車のおっちゃんや衛士たちが驚いたのは髪の色か。

でも、なんで黒髪がそれほど騒がれるんだ?

「ここに試しの水盤がある。
これでおぬしたちの魔法適性がわかるし、隠れている才能があれば花開くぞ。
調べてみぬか?」

調べてみぬかって、これ明らかに強制だよね。
ここでNOっていったら、間違いなく首が飛ぶよね。

「ははっ、御意に。」

四人はそれぞれが付き添いの騎士に立ち上がらされると、王の横に控えていた恰幅のよい黒ローブが水を張ったお皿のようなものを掲げて近づいてくる。
四人の所まで来るとお皿に向かって何か詠唱している。

次第にお皿に張られた水が輝きだした。

「では、まずあなたから」

畑山女史が水盤の上に手をかざすと、水盤に文字が浮かび上がったようだ。

こちらからは見えないし、どうせ見えても理解できないだろう。

「おお!」

周囲がどよめく。

「聖騎士とは、珍しい。
しかもレベル50とは!」

畑山はどうしたらいいのか分からず、きょろきょろしている。
全く彼女らしくない。
それは舞子のキャラだろ。
盗用禁止!

「では、次はあなたが」

舞子が水盤の上に手をかざすと、さらに強い輝きが水盤をつつむ。

「聖女だ! 聖女様が誕生したぞ!」

取り巻き達はお祭り騒ぎである。
騎士たちのぽかーんと開けた口をみても、聖女がかなりレアであると分かる。

「今回の稀人はすごいな」
「こりゃ、下手したら勇者までいくかもな」

周囲の騒ぎは、なかなか鎮まらない。

王が立ち上がった気配がした。

「ドン!」

王笏が地面を打つと一気にざわつきが引いていく。
やるな王様。

「つぎはあなたが」

聖女の誕生で興奮したのか、黒ローブおじさんの声が少し震えている。

加藤が水盤に手をかざすと、舞子の時と同じか、さらに強い光が放たれた。

「・・・ゆ、勇者だ・・
とうとうやったぞ・・
勇者誕生だー!」

あまりの盛り上がりに、うぉ~んという振動が王の間を満たす。

「やったか! とうとうこの国にも、悲願の勇者が生まれたか」

おや、王様。 何気に大事な情報もらしちゃってない?
勇者って一人じゃないのね。
他の国にもいるってことね。
これはメモメモと。
頭の中にだけど。

「最後の稀人よ、手をおかざし下さい」

周囲の期待がさらに高まる中、史郎が手をかざす。
しかし、勇者の上ってなんだろう。
とか馬鹿なこと考えちゃいけないよね。
でも加藤だよ、加藤。

シーン・・

あれ? おかしいな。 
水盤が反応しない。

あ、微妙にうっすら光ってるよこれ。
でもこれ気づくかどうかってレベルだよね。

「魔術師レベル1・・」

え?
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