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第十二章 放浪編
第72話 待ち時間(下)
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ギルドの個室に連れこまれ、大柄なギルマスからお説教を受けた後、俺はシュテインから持たされていた書類を彼に手渡した。
「おう?
こりゃ、王家の紋章じゃねえか!」
手紙を目にしたギルマスは驚きの声を上げた。
「おい、お前!
シローと言ったか。
お前、銀ランクの冒険者だったのか?」
「はい、そうです」
「どこのギルドに所属してる?」
「ええと、ベラコスです」
「なるほど、サウタージ姉さんか……。
いつ銀ランクに昇格した?」
「つい最近ですが?」
「……うーん、国王直筆の推薦状があるなら仕方ねえか。
まあ、サウタージ姉さんが銀ランクに認めたってなら、問題ねえだろう」
「なんの問題がないんです?」
「お前は今日から金ランクだ」
「えっ!?」
「金ランクになると、様々な優遇が受けられる。
説明の冊子は、後で受付で渡してもらえ。
ギルド章はすぐには用意できんから、三日ほどしたら取りにこい」
「……はい、分かりました。
ところで、一つ聞いていいですか?」
「ああ、なんだ?」
「ギルドランクって最高が金なんですか?」
「そんな分かりきったこと聞いてどうする。
まあいい、昔はミスリルってランクがあったらしいが、今は最高で金までだな」
「そうですか」
なるほど、俺が向こうの世界で持っている黒鉄ランクは、こちらの世界群が向こうの世界群と分かれた後で作られた制度らしい。
「ギルド章、見せてみろ」
ブラントは俺が渡した銀ランクのギルド章を調べていたが、呆れたようにこう言った。
「まさか、メグミの記録が抜かれるとはな」
「記録?」
「ああ、今までは、メグミって娘(こ)が金ランク昇格の最短記録を持ってたんだ」
おっ、例の迷い人だな、ドラゴンを連れてるっていう。
「だけど、この事は黙っておけよ」
「なぜです?」
「メグミは冒険者たちから、凄く好かれてる。
もし、彼女の記録をお前みたいな、どこのオークの骨かも知れないようなヤツが塗りかえたと分かってみろ。
冒険者たちから爪弾きにあうぞ」
「もちろん、黙っておきます。
さっきの騒ぎで、みんながその方を大事にしてるって、十分以上に分かりましたから」
「そうしろ」
「じゃ、帰ってもいいですか?」
「ああ、そのちっこい魔獣は、もう従魔登録してるか?」
グラントがキューとブランを指さす。
「はい、してあります」
「じゃ、もう何もいうことはねえな。
せっかく金ランクになったんだ。
塩漬け依頼(長期に未解決の依頼)を片づけて、ギルドに貢献してくれよ」
「で、できれば」
◇
俺はさっきキューが問題を起こしたギルドの待合室まで戻った。
なぜか一緒についてきたギルマスが、両手を打ちならす。
冒険者たちが一斉にこちらを見た。
「おい、ちょっと聞いてくれ!
今日からお前らの仲間となったシローだ。
こいつは、成りたてだが金ランクだぞ。
困ったことがあれば、助けてもらえ」
「スゲー!
金ランクかよ!」
「討伐、ご一緒してください!」
「お姉さんと一緒に食事しないか?」
グラントは俺をその場に残し、奥へ引っこんだ。
やってくれるぜ、でっかいオヤジ。
ついさっき、ごたごたのきっかけになった若い冒険者二人が、俺の両手をそれぞれ取り、彼らのテーブルまで強引に連れていく。
「兄さん、金ランクだったんだな!」
「疑って悪かったよ。
冒険者としての心得を教えてもらえるかい?」
せっかくなのでメグミという迷い人について尋ねておく。
「ええと、メグミさんってどこにいるんです?」
「ああ、今はスティーロって街にいるよ」
「彼女、困ってませんか?」
「ははは、俺たち、一の子分だって言っただろう?
俺たちもついてるし、家族もいるし、すっごく幸せそうだよ」
「レフ、メグミさんは、いつでも幸せそうだよ」
「そりゃそうだ、あははは!」
そうか……それなら、もし世界群が繋がっても、地球に帰る気はないかもしれないな。
とにかく、一度会って話をしてみるか。
いずれにしても、世界群を救ってからになるけどね。
ライとレフ二人に高価なステーキをおごってもらった俺は、その旨さに感動した。
サシは少なめだが、とにかく柔らかく、舌の上でとろけるのだ。
肉と言うより、濃厚なチーズに近い味だ。
アイアンホーンという魔獣の肉だそうだ。
向こうに帰る前に、大量に仕入れておこう、って、何をするにもやっぱりこの世界群を救って、ポータルズ世界群に帰らないと始まらないのか。
『(・ω・)ノ ご主人様、珍しく気合いが入ってるね!』
ああ、絶対ナルとメルにこの肉を食べさせてやる!
「おう?
こりゃ、王家の紋章じゃねえか!」
手紙を目にしたギルマスは驚きの声を上げた。
「おい、お前!
シローと言ったか。
お前、銀ランクの冒険者だったのか?」
「はい、そうです」
「どこのギルドに所属してる?」
「ええと、ベラコスです」
「なるほど、サウタージ姉さんか……。
いつ銀ランクに昇格した?」
「つい最近ですが?」
「……うーん、国王直筆の推薦状があるなら仕方ねえか。
まあ、サウタージ姉さんが銀ランクに認めたってなら、問題ねえだろう」
「なんの問題がないんです?」
「お前は今日から金ランクだ」
「えっ!?」
「金ランクになると、様々な優遇が受けられる。
説明の冊子は、後で受付で渡してもらえ。
ギルド章はすぐには用意できんから、三日ほどしたら取りにこい」
「……はい、分かりました。
ところで、一つ聞いていいですか?」
「ああ、なんだ?」
「ギルドランクって最高が金なんですか?」
「そんな分かりきったこと聞いてどうする。
まあいい、昔はミスリルってランクがあったらしいが、今は最高で金までだな」
「そうですか」
なるほど、俺が向こうの世界で持っている黒鉄ランクは、こちらの世界群が向こうの世界群と分かれた後で作られた制度らしい。
「ギルド章、見せてみろ」
ブラントは俺が渡した銀ランクのギルド章を調べていたが、呆れたようにこう言った。
「まさか、メグミの記録が抜かれるとはな」
「記録?」
「ああ、今までは、メグミって娘(こ)が金ランク昇格の最短記録を持ってたんだ」
おっ、例の迷い人だな、ドラゴンを連れてるっていう。
「だけど、この事は黙っておけよ」
「なぜです?」
「メグミは冒険者たちから、凄く好かれてる。
もし、彼女の記録をお前みたいな、どこのオークの骨かも知れないようなヤツが塗りかえたと分かってみろ。
冒険者たちから爪弾きにあうぞ」
「もちろん、黙っておきます。
さっきの騒ぎで、みんながその方を大事にしてるって、十分以上に分かりましたから」
「そうしろ」
「じゃ、帰ってもいいですか?」
「ああ、そのちっこい魔獣は、もう従魔登録してるか?」
グラントがキューとブランを指さす。
「はい、してあります」
「じゃ、もう何もいうことはねえな。
せっかく金ランクになったんだ。
塩漬け依頼(長期に未解決の依頼)を片づけて、ギルドに貢献してくれよ」
「で、できれば」
◇
俺はさっきキューが問題を起こしたギルドの待合室まで戻った。
なぜか一緒についてきたギルマスが、両手を打ちならす。
冒険者たちが一斉にこちらを見た。
「おい、ちょっと聞いてくれ!
今日からお前らの仲間となったシローだ。
こいつは、成りたてだが金ランクだぞ。
困ったことがあれば、助けてもらえ」
「スゲー!
金ランクかよ!」
「討伐、ご一緒してください!」
「お姉さんと一緒に食事しないか?」
グラントは俺をその場に残し、奥へ引っこんだ。
やってくれるぜ、でっかいオヤジ。
ついさっき、ごたごたのきっかけになった若い冒険者二人が、俺の両手をそれぞれ取り、彼らのテーブルまで強引に連れていく。
「兄さん、金ランクだったんだな!」
「疑って悪かったよ。
冒険者としての心得を教えてもらえるかい?」
せっかくなのでメグミという迷い人について尋ねておく。
「ええと、メグミさんってどこにいるんです?」
「ああ、今はスティーロって街にいるよ」
「彼女、困ってませんか?」
「ははは、俺たち、一の子分だって言っただろう?
俺たちもついてるし、家族もいるし、すっごく幸せそうだよ」
「レフ、メグミさんは、いつでも幸せそうだよ」
「そりゃそうだ、あははは!」
そうか……それなら、もし世界群が繋がっても、地球に帰る気はないかもしれないな。
とにかく、一度会って話をしてみるか。
いずれにしても、世界群を救ってからになるけどね。
ライとレフ二人に高価なステーキをおごってもらった俺は、その旨さに感動した。
サシは少なめだが、とにかく柔らかく、舌の上でとろけるのだ。
肉と言うより、濃厚なチーズに近い味だ。
アイアンホーンという魔獣の肉だそうだ。
向こうに帰る前に、大量に仕入れておこう、って、何をするにもやっぱりこの世界群を救って、ポータルズ世界群に帰らないと始まらないのか。
『(・ω・)ノ ご主人様、珍しく気合いが入ってるね!』
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