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第十一章 ポータルズ列伝

プリンス翔太編 第12話 守るべきもの

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 競技会が終わってお城に帰ると、エミリーがボクに飛びついてきた。
 彼女は、地球世界から来ている同い年の少女なんだ。
 ボクは驚いた。いつも静かな彼女がこんなに感情を露わにすることは珍しいんだ。

「ショータ! 
 すごくかっこよかったよ!
 特に最後、壁をドーンってやったの」

 エミリーは青い目をキラキラさせて、魔術競技会の話をした。シローさんに透明化の魔術をかけてもらって客席にいたらしい。ただ、最後の『花火』は、見ずにお城へ帰ったそうだ。
 いろんな場面でボクが他の人に負けられないのは、特別な事情があるからなんだけど、一番の理由がエミリーなんだ。

 彼女は、偉大な存在である聖樹様から、特別なお役目を頂いている。どんなお役目かは、ここでは言えないけどね。そして、ボクが彼女の『守り手』をおおせつかっているんだ。
 言葉通り、エミリーを危険から守るお役目なんだよ。ボクの魔力が普通より大きいことも、きっとそれが関係していると思う。
 ボクが大きすぎる魔力を暴走させないように、魔術の先生とシローさんが話しあった上で、ボクをアーケナン魔術学院に留学させることに決めたそうだよ。

「ショータ、お庭に行こう!」

 エミリーがボクの手を引っぱる。
 城のお庭は森のようになっていて、そこには神獣様が住んでいる。ボクとエミリーは、神獣様と遊ぶのが日課になってるんだ。

 ◇

 次の日、学校に行くと、クラスのみんながボクの所に集まってきた。

「ショータ、お前、すげえな!」

 ヒゲのお兄さんが話しかけてくる。

「最後のドーンってやつ、も~しびれちゃった!」

 ボクの左腕を抱えたジーナが、ブロンドのポニーテールを揺らす。

「ショータ、私に水魔術教えてね」

 眼鏡のドロシーが、赤い顔でボクの右手を握った。

「うふん、ショータ~、私にもいろいろ教えて~」

 ララーナさんが、ボクの肩に手を置いて背中に体を押しつけてくる。

「あんたたち! 
 プリンスから離れなさいっ!」

 いつの間にか、戸口にルイが立っていた。
 皆が、さっと散って席に着いた。

「今日の放課後、シローさんが、お家の方に来てほしいとのことでした」

 ルイはそう言うと、みんなを見まわしてから教室を出ていった。
 教室は、シーンとしている。
 少しすると、誰かがポツリと言った。

「プリンス」

 やばい。秘密にしていたのに、プリンスだとばれちゃったかも。

「プリンス……ショータ様にぴったりのお名前」

 ジーナが、うっとりした顔でこちらを見ている。それより、「様」ってどうかな。同級生なのに。

「プリンスよ」
「プリンスね」
「プリンスだな」

 皆が、口々にささやく。
 ああ、これはもうだめだね。みんなは、ボクが本当にプリンスだとまで思ってないみたいだけど、あだ名がついちゃった。
 地球の小学校でも、あだ名は「プリンス」だったんだよね。

 これで、ボクがプリンスって呼ばれないのは、シローさんの家だけになっちゃった。今日は、学校帰りにあそこで癒されよう。

 シローさんの家に行くことを思うと、ボクの心は羽のように軽くなった。
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