上 下
488 / 607
第十一章 ポータルズ列伝

プリンス翔太編 第1話 異世界留学

しおりを挟む
 ボクの名前は、畑山翔太。小学六年生だよ。
 でも、ボクはみんなと一緒に小学校には通っていないんだ。なぜかというと、異世界に留学に来ているから。

 ボクの『英雄』シローさんが、パンゲアって言う世界に魔法で連れてきてくれたんだ。
 ここは、その世界のアリストという国だよ。この国は、ボクのお姉ちゃんが国王をやっているんだよ、すごいでしょ。
 アリスト国のお城がある町には、『アーケナン魔術学院』があって、そこがボクの留学先なんだ。

 ボクが住んでいるところ?
 実は、お城に住んでるんだ。お姉ちゃんが女王様っていうのもあるんだけど、いつの間にかボクは『プリンス』っていう名前を付けられちゃったんだ。

 でもね、本当の理由は、お城にいるエミリーって女の子を守るためなんだ。
 これは、絶対に話しちゃいけない秘密なんだけど。
 どうやって守るかって?
 ボクは魔術が使えるんだ。

 地球からこの世界に来た人は、『覚醒』というのをすることがあるの。
 ボクは魔術師に覚醒したんだよ。レベルは30。
 ボクの年で、魔術師レベル30は、とても珍しいみたいだよ。

 今日は、初めて学院に行く日だから少し緊張してるんだ。



 お城から秘密の通路を通って、どこかの地下室に着いた。

「プリンス、足元にご注意ください」

 そう言っているのは、ここまでボクを案内してきたルイだよ。
ルイは、軽くウエーブがかかったブロンドの髪をした小柄な女の人で、十六才なんだ。
 彼女もアーケナン魔術学院の生徒だから、ボクからしたら先輩になるね。
 顔つきは、地球の白人に近いかな。

 地下からの階段を昇ると、木造の質素な室内だった。
 木製の机と椅子があって、地球で言うと六畳くらいかな?
 窓を閉めているから、薄暗いね。

 ボクが周囲を見られるのは、ルイが唱えた魔術のお陰なんだ。
 光るボールのようなものが、空中に浮いている。
 地下通路を進む時も、この灯りで足元を照らしたんだ。

「こちらです」

 ルイはそう言って、ドアを開けた。
 まぶしい朝の光が入ってくる。ドアの外は、小さな庭になっていた。

 ボクは、ルイの後について町の中を歩いた。
 ヨーロッパの歴史ある町のような雰囲気で、お姉ちゃんは、「地球世界の中世みたい」と言ってたっけ。
 パンを焼くような匂いがする。

 ルイとボクが歩いていると、町を通る人やお店の人が、みんなボクの方を見るんだ。
 これはお姉ちゃんから言われていたから分かっていたことだけど、この世界では、黒い髪がすごく珍しいんだって。
 だから、みんなが注目するんだね。

 石畳の道は、革靴のボクには少し歩きにくかった。
 学校までもう少し遠かったら、足が痛くなっていたと思う。

 学校の門は凄く立派で、レンガのようなもので造られていた。
 継ぎ目がないから、もしかしたら、魔術で造ったのかもしれない。

 門の所には、茶色いワンピースを着た三十才くらいの女性と、白いあごヒゲのおじいさんが立っていた。
 おじいさんは、ルイが羽織っているような、黒いローブを着ている。

「学院長、マチルダ先生、おはようございます」

 ルイが二人に挨拶した。

「おはよう」
「うむ、おはよう」

 ボクが異世界の言葉が分かるのは、魔道具の指輪が言葉を自動で翻訳しているからなんだ。
すごいでしょ。

「そちが、ショータじゃな」

 白いあごひげの男性が、にこにこした顔でこちらを見ている。でも、目が少し怖いね。

「はい、ショータです。
 よろしくお願いします」

 ボクが頭を下げようとすると、ルイに止められる。

「ショータ様、むやみに頭を下げてはいけませんよ」

 ルイが耳元で囁く。

「まあ!
 礼儀正しい男の子ね。
 私が担任のマチルダです。
 今日からよろしくね、ショータ君」

「は、はい、
 よろしくお願いします」

 ボクとルイは、マチルダ先生の後について、校舎の中に入ったんだ。

 ◇

 教室は、日本の学校とすごく似ていた。
 普通の学校と同じくらいの部屋に、机と教壇がある。
 ただ、生徒の人数は、二十人くらいだった。
 そして、年齢もいろいろのようで、ボクより少し年長に見える人から、髭が生えた、どうみても大人の人までいた。

「きゃーっ! 
 可愛い!」
「黒髪! 
 ステキっ!」
「こっち見てーっ!」

 女の人たちから声を掛けられる。
 でも、ボクは別に動揺しなかった。
 日本でもそうだったから、慣れているんだ。

 マチルダ先生が、ボクを紹介してくれる。

「今日から、君たちと一緒に学ぶショータ君よ。
 学園都市世界からの留学生ね」

 本当は地球世界からなんだけど、それは秘密にするように言われてるんだ。

「うわー! 
 ショータ君、凄い! 
 異世界留学じゃん」
「ショータ~。
  こっち見てー」
「可愛い上に優秀って、もう最高!」

 皆がうるさいから、ボクは自分の言葉で紹介するのをためらっていた。

 バンッ!

 ボクの後ろに立っていたルイが、黒板を叩いた。
 教室は、シーンとなった。

「ショータ様、ご紹介を」

「学園都市世界から来た、ショータです。
 よろしくお願いします」

 ボクの自己紹介が終わると、ルイは教室を出ていった。彼女は、この学校の二回生のはずだから。

 ボクは、教室の一番前の空席に座わるよう言われた。

 さっそく、マチルダ先生が魔術の授業を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...