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第十章 奴隷世界スレッジ編

第58話 決戦4

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 敵兵が総攻撃を掛けてきた。
 俺は決断を迫られていた。点魔法で敵の多くを消すかどうかの。
 その時、風に乗り空から翔太が降りてきた。

「翔太!
 エミリーの側に居ろと言ったろう!」

 こういう時なので、思わず俺の声が荒くなる。
 しかし、翔太は落ちついていた。

「おばば様から、こちらに力を貸すように言われて来ました」

「おばば様から?」

「ボーさんが困ってるからって」

 おばば様には、全てお見通しか。

「で、おばば様は、どうしろと言ったんだ?」

「まず、こんなところでどうでしょう」

 翔太はワンドを取りだすと、かなり長い呪文を唱えた。
 どこかで聞いたことがある呪文だ。
 彼がワンドを前に振ると、その先から光の玉が飛びだした。

 間違いない、あの魔術だ。

 光の玉は、放物線を描き上昇していく。
 その頂点で、巨大な火球となった。
 こちらに押しよせ掛けていた敵軍の動きが停まった。

 複合魔術『メテオ』の火球は、敵とこちらの間にある草原、その敵寄りに落下した。

 グウオオオオン

 体ごと飛ばされそうな爆風が吹きつける。
 味方の軍勢が乱れた。
 しかし、同盟軍はそれどころではなかった。
 
 多数の兵士が爆風に吹きとばされた。
 さすがに戦意を失った兵士が、多数逃げだした。

「あんなの、どうしろってんだ!」
「ひ、ひい、助けてくれー!」
「死にたくないーっ!」

 逃走は逃走を呼び、敵の多くが逃げはじめた。

 爆風で巻きおこった砂煙が落ち着いた時、残った敵は当初の十分の一もいなかった。
 百万の兵が十万以下になったということだ。

 しかし、残ったからこそ、その十万は屈強の兵士が揃っていた。

「敵に背中を向ける臆病者は放っておけ!」
「帝国の誇りにかけて、背中は見せん!」
「皇国の誓いにかけて、敵を討つ!」

 彼らはかえって士気を高め、こちらに押しよせようとした。
 その出足がピタリと停まる。

 空が翳ったので見上げると、上空に多数の竜が舞っていた。
 こういう時でなければ、それは感動的な光景だったろう。
 
「ボーさん、あれは?」

 翔太が大きく見開いた目でそちらを眺めている。

「ああ、天竜だな」

 遥々ポータルを越え異世界まで駆けつけてくれた友人たちに、感謝の気持ちが込みあげてきた。 
 
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