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第十章 奴隷世界スレッジ編

第53話 決戦前2

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 敵の接近を確認するため、里の上空にばら撒いておいた観測用の点からパレットに、砂煙をあげ近づく、何かの映像が送られてきた。

 敵の到着は、早くとも四日後とみていたから驚いた。
 珍しく点ちゃんの情報が間違っていたのかと思ったのだ。

 しかし、映像に映るものがはっきりしてくると、その可能性は消えた。
 近づいてくるのが、ポポの群れだったからだ。

 点ちゃん、ポポちゃんに、仲間を呼んでって頼んだの?

『(・ω・) 頼んでませんよー。でも、友達が来るって言ってます』  
  
 ふ~ん、じゃあ、ポポが自分で仲間を呼んだのかな。

「シロー、何か起きたのか?」

 チビの家で歓待を受けているところだったので、俺が急に立ちあがると、隣にいた皇女シリルが心配そうな顔をしている。
 彼女には敵の襲撃について、まだ詳しく話していないんだけどね。

「ポポの群れが、里に近づいているようです」

「敵が操っておるのか?」

「いえ、例のポポが呼んだようです」

 里にいる間に、ポポの背に乗ることを覚えたシリルは、すでに彼女と友達になっている。ああ、俺たちと一緒にいるポポが雌だってことは、長老に教えてもらったんだけどね。

「そうか!
 他のポポにも乗ってみたいのう」

 そんなことを言う所をみると、ナルやメルと気が合いそうだな、シリルは。
 
『(*'▽') そのナルちゃんとメルちゃんが来たよー。イオちゃんもいるよ』

 おいおい、点ちゃん、さすがにそれはないだろう。
 彼女たちは、天竜国と竜人国にいるんだよ。
 ここに来るにしても、ポータルを二つ渡らないといけないし、いくらなんでも無理でしょ。

『(・ω・)ノ□ はい、映像をどうぞ』

 丸太を積んで作った、壁の一面が白くなる。
 そこに、さっきパレットで見たポポの群れが写しだされた。
 先頭を走る三匹のポポの上には、確かにナル、メル、イオの姿がある。
 それぞれの前に座っているのは、幼児と化した子竜ではないか。

「ど、どういうこと!?」

 俺は慌ててチビの家から走りでると、一人用ボードを出し、それに飛びのった。

 ◇

 前方に山が近づいてきたので、イオは青くなっていた。
 まさかと思うが、このスピードであの山を駆けのぼったりしないよね。
 彼女がそんな心配をしたとき、上空に何かが見えた。

「「パーパ!」」

 ナルとメルが、ポポの足音に負けない大声で叫ぶ。
 上空に見えていた点は、あっという間に大きくなると、足を停めたポポの群れ近くに降りた。
 それは、ボードに乗ったシローだった。

 ナルとメルが、シローに飛びつく。
 イオも飛びつきたかったが、安堵のあまり腰が抜け、動けなくなってしまった。

「イオ!
 君も、来たんだね!
 大変だったろう」

 イオは、なぜか涙が止まらなくなった。
 大声を上げて泣くイオを背負うと、シローは大きめのボードを出した。

 彼は、それにナル、メル、イオを乗せ、里に向かった。

 ◇

 俺が里に帰ると、加藤たちはもちろん、里の巨人たちも出迎えてくれた。

「里長、これが俺の娘、ナルとメルです。
 こちらは、俺の友人でイオです」

「「こんにちはー」」
「こ、こ、こんにちは」

 ナルとメルは、巨人の前でも物怖じしていないが、さすがにイオは彼らの大きさに怖気づいているようだ。

「シロー殿の娘子とご友人じゃな。
 どうか里でくつろいで下され」

「ご主人様、ボク、友達になりたい」

 チビが目をきらきらさせている。

「いいけど、強く触ったりしたら怪我しちゃうから、気をつけるんだよ」

「分かってる」

 チビは長い間、奴隷商人に連れられていたから、その辺の事は心配いらないだろう。 
  
「遊ぼー!」

「「うん、いいよー!」」
「わ、私もいいよ」

 チビは、ナル、メル、イオの三人と森へ行ってしまった。
 シリルが、文字通り指をくわえてそれを見ている。
 さっきまで、ナルに抱かれていたブランが俺の肩に乗る。
 俺の額に肉球を押しつけてくる。

 ナルの記憶が俺の頭に入ってくる。
 なるほど、ナルとメルは、そうやって二つのポータルを渡ってきたのか。
 しかし、これじゃあ、今頃ルルたちや竜人国のギルドは大騒ぎだろう。
  
 今回の事が全て終わったら、きちんとお話ししないといけないね。 
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