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第十章 奴隷世界スレッジ編

第22話 家族と仲間

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 冒険者ギルドの通信網で、シローの家族と仲間へ報告がなされた。
 
 ミミとポルは、待機していたアリストギルドで、キャロからリーダーの行方を聞いた。
 
「ポン太、どうすればいいと思う?」

 いつもは、主導権を取りたがるミミだが、事が重大なためか、珍しくポルに、おうかがいをたてた。

「そうだね……まず、リーヴァスさんたちと合流するのがいいと思うよ」

「それもそうね。
 でも、リーヴァスさんやルルさんたちは、今、天竜国にいるんでしょ?」

「うん、そうなんだけど、キャロさんの話では、竜人国にはギルドができてるらしいんだ」

「そうか、それなら、そこに連絡すれば、リーヴァス様に繋がるかもしれないのね」

「うん。
 ただ、天竜国と竜人国との連絡は、リーダーがいないと、直接行くしかないでしょ」

「それはそうね。
 天竜国は、空に浮かんでるんだもん」

「そこが、何とかなればいいんだけど……ギルドには、獣人世界と竜人世界を結ぶポータルの情報があるみたいだから、せめてそれだけでも教えてもらえるといいけど」
 
「お城にも、連絡しておいた方がいいかもね」

 こうしてミミとポルは、これからの行動を決めた。

 ◇

 お城に駆けつけたポルからの連絡で、女王畑山は、史郎と加藤が、おそらくスレッジに通じているだろうポータルに入った事を知った。 

「あいつら、何やってんのよっ!」

 さすがの畑山も、愛する加藤が、行方もはっきりしないポータルに入ったと知り、不安が隠せない。

「お姉ちゃん、ボーさんがついてるから、大丈夫だよ」

 翔太が言葉をかけるが、畑山の顔からは、緊張が消えなかった。

「とにかく、何かあったら、すぐに動けるようにしておきましょう」

 美しい顔をキッと上げる畑山からは、何としても加藤の力になりたいという気持ちがうかがえた。 

「とにかく、マスケドニアには、私が連絡しなくちゃね」

 個人的なことにホットラインを使うのは気がひけるが、加藤はマスケドニアとも縁が深い。それに、恋のライバルとはいえ、ミツには彼の消息を伝えてやりたかった。

「ボー、あいつが無茶しないように見張っててちょうだいよ」

 彼女は、誰にも聞こえないように、そうつぶやいた。 

 ◇

 こちらは、獣人世界グレイル。
 聖女舞子は、夜遅くにギルマスのアンデが尋ねてきたことで、史郎に何かあったとすぐに気づいた。

「すでに調査隊を、シローが伝えた場所に送っています。
 彼らからの報告を待ち、今後の事を決めます」

 シローの情報にあったポータルが、通常のものか、一方通行のものか、調べなくてはならないし、どんな場所に出るかも確認する必要がある。
 恐らくはスレッジに繋がっていると思われるが、その確認が終わらなければ、何もできない。

「何か、できることは、ありませんか?」

「今の所は、何も」

 聖女の心配そうな声にも、アンデはそう答えるしかなかった。

「大聖女様、とにかく何かあれば、すぐに動けるようギルドで準備しておきます」

「分かりました」

 史郎の事が心配で、その日、舞子は夜通し起きていた。

 ◇

「シローさんとカトーさんが、ポータルを渡った?」

 ギルド間の通信で、連絡を受けとった赤竜族の娘リンは、すぐにそれをジェラードに報告した。  
 報告によると、シローたち二人は、捕えられた竜人を追いかけポータルを渡ったということだ。
 ジェラードは、シローたちの身を案じると同時に、二人が今まで竜人のためにしてくれた功績に加え、今回も彼らのために命を懸けてくれたことを思い、身震いするような感動を覚えた。
 何としても、無事に帰ってきてくれ。
 そう祈らずにはおられなかった。

「リン、天竜様が次においでになるのは、六日後だ。
 それまでに、天竜国にいるシローの仲間に渡せるだけの、報告書を仕上げてくれ」

「はい、すぐに、とりかかります」

「それから、この件に関しては、マルロー様に指揮をとっていただこう」

「おじい様に?」

「そうだ。
 こちらもすぐに連絡してくれ」

「分かりました」

 ジェラードは自分にできることがわずかしかないことことに、忸怩たる思いだった。

 ◇

 血相を変えた天竜の長が真竜廟を訪れたのは、ルルたちが一日のスケジュールを終え、眠りについた直後だった。

『天竜よ、何があった?』   

「りゅ、竜王様、リーヴァス殿はどちらに?」

『彼なら、ゆりかごの部屋じゃ』 

「し、失礼します」

 人化している長が、ゆりかごの部屋に通じる扉をドンドンと叩く。
 すぐにリーヴァスが部屋から出てきた。

「長、なにか起きましたか?」

「シロー殿に関する緊急の手紙が、竜人国から届きました」

 長が、大判のぶ厚い封筒を、リーヴァスに手渡す。
 リーヴァスは、その場で封を開け、目を通しはじめた。

「なるほど、これは、ただ事ではありませんな」

「いったい、何があったので?」

「そうですな、これから家族でそのことを話しますから、長もお聞きになるとよいでしょう」

「よろしいのですか?」

「もちろんです。
 これは、天竜の方々にも、知ってもらった方がよいようです」

 リーヴァスは、ゆりかごの部屋に、天竜の長を招きいれた。
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