上 下
380 / 607
第九章 異世界訪問編

第41話 地球世界の神樹8 -- 日本 --

しおりを挟む

 俺たちの神樹様を巡る旅は、北海道、東北、中部が終わり、近畿、中国地方へ移った。

 四国には神樹様がいらっしゃらないようだ。
 次にエミリーが点ちゃん1号を止めたのは、なんと『地球の家』の上空だった。

 彼女はしばらく目をつぶっていたが、ニッコリ微笑むと俺に合図をした。
 俺はその意味が分かったので、点ちゃん1号を降下させず、針路を西に向けた。

 九州を南に下り、海の上に出る。
 エミリーが指ししめす方角にあるのは、屋久島だった。

 再び四人用ボードを三枚出すと、それに皆を乗せる。
 ボードと全員に透明化の魔術を掛ける。

 降下中に、山道を歩く人々の姿が見えた。
 目的地は有名な縄文杉の近くらしい。
 俺が透明化の魔術を使ったのは、そういう理由からだ。

 現地に到着すると、ちょうど遊歩道から陰になっている場所だったので、透明化を解いておく。
 目の前には、巨大な杉の木が立っている。

 翔太が根を傷つけないよう慎重に土を掘る。
 エミリーが、特別な『枯れクズ』を埋めた。
 エミリーの光る手が太い幹に近づく。

 点ちゃんが構築した念話のネットワークを通じ、神樹様の念話が聞こえた。

『おやおや、あんたたちは誰だね』

『こんにちは、花子さん。
 私はエミリー、『聖樹の巫女』よ』

『なんと、巫女様かい?! 
 長生きはするもんだねえ』

『聖樹様とお話はしてる?』

『ほほほ、このばあさまにそんな力があったのは、もうずうっと昔じゃよ』

『今ならできるから、やってみて』

『できるわけないが、巫女様の頼みじゃからな。
 ちょいとやってみようかい』

 神樹様との念話が途切れる。

『は、話せた! 
 聖樹様と話せたよ!』

『これからは、いつでもお話しできるよ』

『さすがは巫女様じゃ、ありがたきことよ』

『こちらは、翔太とシロー、そして、その家族よ。
 聖樹様からうかがっていない?』

『おお、聖樹様が話しておったのは、その方らか。
 巫女様がお世話になっとるな。
 ありがとうよ』

『いいえ、彼女は俺たちの家族のようなものですから』

『お主、シローじゃな。
 我らのために働いてくれて感謝感謝じゃ』

『とんでもないです。
 俺が好きでやってることです。
 それに神樹様、聖樹様に何かあると大変ですから』

『それはそうじゃがな。
 色々とすまぬのう。
 そういえば、少し前に北の方の仲間が消えた気配があったが、何じゃったかの』

『きっと、白山の神樹様のことですね。
 恐らく自動車道の建設で……』

『山の中に道を通して何の益がある。
 愚かな事じゃな』

『おっしゃる通りです』

『近くの木にも多くの人間が訪れよる。
 我らはそっとしておいて欲しいのにじゃ』

『花子おばあちゃん、ごめんね。
 人間の勝手で苦労かけるわね』

『……このばばは巫女様に会えただけで、もう満足じゃよ』

 それから皆が一人ずつ挨拶した。

『おや、お前も巫女ではないか。
 仲間が世話になっとるの』

 神樹花子様から声を掛けられたのは、コルナだ。

『畏れ多いことです』

 コルナが平伏して言う。

『ワシが若いころは、よくあの爺様と話をしたものよ。
 なつかしいのお』

『花子さん、もうすぐまたお話できるはずですよ』

『おお、巫女様がおっしゃるなら、そうなのじゃろう。
 楽しみじゃな』

『待っててね』

 神樹花子様が、ぼんやり光る。
 俺たちに祝福を下さっているのだろう。

 俺たちからは、コリーダの歌でお返しをした。
 花子様は、すごく喜んでくれた。

 こうして、日本における神樹様を癒す旅は終わりを告げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...