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第八章 地球訪問編
第45話 地球の家
しおりを挟む俺は、故郷の町にある広い畑をタダ同然の値段で買いとり、そこに帰還時に住む家を建てることにした。
一般の人がこれを行うと、法的に面倒な事が色々あるのだが、行政機関からの干渉は一切無かった。
建物は上から見た形をロの字型にし、地下一階、地上二階という構成にする。
これまで土魔術で造った建造物では、最大のものとなる。
外壁の一辺が五十メートルほどあるので、十メートルほど上空に浮かせたボードの上から魔術を使う。
二階部分が地面からせり出してくる。
頭の中に構造をしっかり思いえがき、さらに一階部分を引っぱりあげる。
後は地下だ。
地下は一階部分に入り、そこから造った。
ロの字型になっている建物部分の下に、そのまま地下があることになる。
最初、ロの字中央、建物が無い部分にも地下を作るつもりだったが、何となく気が変わり、そのままにしておいた。
明りは全て「枯れクズ」を利用する。
水は水の魔道具、お風呂の湯は温泉水アーティファクトを使う。
せっかくなので、風呂は真竜廟の「宝の湯」と同じくらいの広さにした。
風呂の湯は、入浴後、点収納に「付与 時間」で保管しておけば、いつでも取りだしてつかえるからね。
こうなると、水の浄化システムが欲しくなるな。
『(・ω・)ノ ご主人様ー、水を綺麗にしたいの?』
それは、したいけど……もしかして!?
『(*'▽') できますよー』
でたっ! 久々に聞いたよ、点ちゃんの「できますよー」
でも、どうするの?
そんな魔術あったっけ。
『(・ω・) 水魔術の応用でもできないことはありませんが、「付与 融合」がつかえますよ』
ああ、そうか。お湯の中に小石でも沈めて、それに汚れを融合しちゃえばいいんだね。
そういえば、ドラゴニアで毒に使ったね。
『d(u ω u) その通りです』
まてよ、そうすると……。
あるアイデアが、思い浮かんだが、これは時間もかかりそうだし、次に地球に帰ってきた時だな。
とにかく助かったよ。点ちゃん、ありがとうー。
『(*'▽') エヘヘヘ』
こうして、「地球の家」が完成した。
◇
俺は、「地球の家」のハウスウォーミング・パーティーを開くことにした。
せっかくだから、ここのところ忙しく働くスタッフの慰労を兼ねたものにする。
招待したのは、『初めの四人』、ポンポコ商会支店員、『異世界通信社』社員だ。
ゲストとして、エミリーも呼んだ。
『(・ω・)ノ ご主人様ー、パーティーばっかりしてない?』
点ちゃん、人間はね、忙しいばかりだと死んじゃうから、パーティーも必要なんだよ。
『|д゜) ふ~ん……』
う、疑ってるね。間違いなく疑ってる。
点ちゃんに疑われながらも、とにかくパーティーは始まった。
食事は、地元の店から出前を取った。
飲み物は、白神酒造が無料で差しいれてくれた。
俺の好きなジュースが入っていたのは、注文した舞子がそのことに触れたのかもしれない。
食事の後は、広いお風呂を披露した。
今日はみんなが水着を持ってきている。
水着混浴ということになる。
イケメンの後藤さんは、体もシェイプアップされている。
そして、なぜか、これもシェイプアップされたマスターサブローと向かいあい、二人でポーズを取っていた。
なんだろうね、あれは。
そして、その二人を見た畑山さんが、加藤にこう言った。
「あんたも、あれくらい鍛えなさいよ」
その後、加藤は洗い場で、腕立て伏せに汗を流していた。
彼女から言われ、必死に腕立てする勇者ってどうよ。
お風呂から出ると、お茶を飲みながら、よもやま話に花を咲かせる。
「そういえば、シローちゃん。
この前のパーティーでエミリーパパと一緒に来てた二人、誰だったの?
あたし、どっかで見た覚えがあんのよね~」
「あー、サブローさんが言ってるのは、迫力がある白人男性と、ちっちゃなおじさんだね。
ちっちゃなおじさんは、日本国首相、白人の方はアメリカ大統領だよ」
「まーたまーた、シローちゃんは話を面白くするのがうまいんだから」
「あれ?
サブローさん、あれ、本物の首相と大統領だよ」
「プリンスまで、あたしをからかうのね!
ふん、驚いてあげないんだから」
「「白騎士、生意気ー」」
黄騎士と緑騎士が突っこむ。
「あれ、本物」
黒騎士が、ボソッと言う。
柳井さんが、サブローさんにお酒を注いであげている。
「まあ、リーダーの非常識は、今に始まった事じゃないですから」
「そうですよ。
あれは、本物でしたね」
「まーた、後藤ちゃんまで」
桃騎士が、小型PCで、ちゃちゃっと何かしたと思ったら、その画面をサブローさんに向けた。
「えー、何々。
先日は、美味い酒をありがとう。
一樽注文させてもらったよ。
サム=トーマス。
トーマスって、機関車みたいな名前ねえ」
「サム=トーマス。
現アメリカ大統領の名前ね」
ヒロ姉が、いつもの口調で言う。
「え、ええっ、てことは、まさか……ホントなのっ!?」
「だから、最初っからそう言ってるのに」
翔太君が呆れた顔をする。
「ど、どうしよう。
あたし、『あなた、なかなか素敵な方ね』って言っちゃった……」
「サブローさんは、肝が据わっていなさる」
遠藤が感心したように言う。
くねくね体をくねらすサブローさんの頭を、桃騎士のハートステッキがポコンと叩く。
「プリンスを信じなかったあなたに愛は無い」
彼女らしくない冷たい声だ。
「白騎士失格」
「「ダサいー」」
サブローさんは、仲間からさんざん叩かれ、涙目になっている。
「シローちゃん、助けてぇ」
しょうがないから、最後に渡すつもりだったお土産を公開する。
「うおっ!
これってホカホカのカニじゃん!」
加藤は、ニューヨークのソフトシェルクラブ。
「ああ!
目の錯覚じゃないわよね。
これって本物!?」
チョコレート好きの畑山には、ウィーンで買ったザッハトルテだ。
「史郎君、ありがとう。
でもこれ、どうやって?」
果物好きの舞子には、オーストラリアはケアンズで買ってきた、とれたてマンゴーだ。
実はこれが一番大変だった。
シンガポールに落としていた点に瞬間移動した後、点ちゃん1号でケアンズまで飛んで手にいれた。
「「うわー、ホッキーポッキーだ!」」
黄騎士、緑騎士は、ケアンズで買ってきた蜂蜜入りバニラアイスをつついている。
各自が好きそうなものを、世界中から集めてきた。
「いやー、魔法って凄いわね」
ヒロ姉は、香港で買ってきた小籠包を食べている。
彼女にとって凄さの基準は、美味しいものが手に入れられるかどうかのようだ。
こうして、食事を終えた後、さらに満腹になる一同だった。
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