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第八章 地球訪問編

第40話 国際会議

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 俺が日本に帰って一週間後、ニューヨークの国連ビルでは、報道機関を閉めだし、異世界に関する会議が行われていた。
 現在、発言しているのは中国代表だ。

「しかし、本当に異世界などあるのですかな。
 ましてや、地球からそこに行き、また帰ってきたなどと」

「彼らが異世界からの帰還者だというのは、すでに明らかです」

 これは日本代表だ。帰還者が日本人だという事もあり、今回は日本が議長国を務めている。開催地が日本にならなかったのは、常任理事国の中に、それに関し強硬に反対した国があったからだ。
 その反対した国、つまり中国の代表が、再び手を挙げる。

「このいただいた資料からだけでは、本当のことかどうか分かりませんな」

 資料というのは、日本で俺たちについてすでに分かっていることと、加藤のジャンプ映像、プレスクラブでの映像などだ。
 そこで、アメリカ代表が手を挙げる。
 
「それは、わが国の大統領を疑うということですか?」

「どういうことでしょう?」

「大統領ご自身が、彼らの力をその目で確認しているということです」

 会場がざわつく。ざわつきは次第に大きくなり、議長が静粛を呼びかけるほどになった。
 異世界からの帰還者について半信半疑だった各国代表も、アメリカ大統領がその力を直接目にしたとあらば、信じざるを得まい。

「彼らを我が国に預からせていただきたい」

 発言したのは、ロシア代表だ。
 彼が続ける。

「我が国は、以前から極秘裏に異世界に関する研究を行ってきた。
 我が国こそ、異世界からの帰還者が住むべき場所である」

 もちろん、異世界についての研究うんぬんはでっち上げだ。
 しかし、独自のルートから、『初めの四人』に関する情報を手に入れていたロシアは、彼らの存在が、世界のパワーバランスを決定づけると分かっていた。
 そうなると、手段なぞ選んではおられない。

「いや、異世界について、そして魔術についての研究は、わが国が最も進んでいるということに関して、みなさんよくご存じでしょう。
 異世界人は、わが国にもらい受けたい」

 これはイギリス代表の発言だ。
 確かに、彼の国は魔術の研究が盛んだ。 
 しかし、異世界の事などつい最近知ったばかりだ。

 この後も、フランス、ドイツ、イタリアと、先進各国が次々と異世界人を「所有する」権利を主張した。

 インド代表が同様の発言をしている時、会場が突然静かになった。
 彼が、発言を中止したからだ。
 なぜか?

 会議場は円形になっており、中央は空いている。
 そこに、突然四人の少年少女、つまり、俺たちが現れたからだ。
 日本とアメリカの代表が、椅子を倒しガタっと立ちあがる。

「初めまして。
 議題となっている『初めの四人』です」

 畑山さんが発言する。今日の俺たちは、異世界の服を着ている。
 当然畑山さんは、女王としての正装だ。

「私たちの意見も聞かず、好き勝手な議論、ご苦労様です」

 彼女が議場をぐるりと見回す。
 それだけで、各国代表は、亀のように首をすくめた。

「すでに日本、アメリカ両国には、我々の意思を伝えてありますが、この場を借りて、世界の方にもそれを聞いていただきたいのです。
 議長、よろしいですか?」

 議長を務める日本代表の男が、魅入られたように頷く。

「では、『初めの四人』の総意を伝えます」

 畑山さんの凛とした声が会場に響く。

「我々並びにその関係者への調査、攻撃が行われた場合、その国の上層部を消去します。
 何かするなら、その覚悟で。
 政府関係者以外の者が、そういう行動を取っても同様です。
 我々には、どこかの国が誰かに依頼してそういう行動をとったとしても、それを知る手段があります。
 くれぐれも軽はずみな行動はなさいませんよう。
 では、仲間からも一言あります」

 俺が、言葉を引きとる。

「以降、俺たちへの接触は、全て『異世界通信社』を通しておこなってもらいます。
 また、通商などの意思がある国は、もうすぐ設立される『ポンポコ商会地球支店』にコンタクトを取ってください。
 最後に、今、名前を挙げた会社に所属する者、その会社との取引先、および我々の家族が、先ほどアリスト国女王陛下がおっしゃられた『関係者』となります」

 俺は、ここで、言葉を一旦切った。

「特に、ここにいる先進国、大国の方々に伝えたい。
 先ほど、異世界の研究などしていないのに、それを理由に我々に対する権利を主張した国がありましたね」

 思い当たることがある国の代表が下を向く。

「あなた方、力ある国は、今までそのダブルスタンダードを使い、いわゆる後進国を散々苦しめてきました。 
 ここで、はっきりさせておきましょう。
 我々の前で、そのような対応をした国とは、それ以降、一切のおつきあいをしません」

 俺は、懐から「枯れクズ」の欠片を取りだした。
 辺りに虹色の光を放つそれを頭上に掲げる。

「これは異世界でも俺たちだけが入手できるもので、光エネルギーを蓄える働きがあります。
 これにより、エネルギー問題とそれに伴う環境汚染問題などの多くが解決するでしょう。
 我々と協力関係を望む国には、これを有償で提供します」

 ここまで来ると、各国代表は身を乗りだし、食いいるように俺の話を聞いている。

 最後に、畑山さんが言葉を引きとる。

「我々の言葉を信じるも信じないもあなた方の勝手です。
 ただ……」

 彼女が、ゆっくりと体を一回りさせ、会場の全員と目をあわせる。

「あなた方が誠実に対応するなら、こちらも同じ態度で臨みましょう。
 私が治める国、アリスト王国との条約も歓迎します」

 彼女が腰を折り礼をしたので、残りの三人もそれにならう。

 日本代表、アメリカ代表が拍手を始めると、会場が歓声に包まれた。
 特に貧しい国の代表は、まっ赤な顔で、涙を浮かべ拍手している。
 俺は、会場にいる全員に点を付けると、三人に瞬間移動の合図をする。

 舞子、畑山、加藤の順で消え、最後に俺が消える時、指を鳴らすと、会場にあった机が全て姿を消した。
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