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第八章 地球訪問編

第31話 『異世界通信社』の新入社員

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 ニュースでは、異世界との接触について、すでに事実として報じられるようになっていた。

 新聞、テレビ、ラジオ、ネットはこのことで持ちきりだ。
 しかし、俺たちの周囲はいたって静かだった。
 どうやら首相は、女王様の言葉に従ったようだね。

 二日間の休暇できちんと睡眠をとった柳井さん、後藤さんは、イキイキと働いていた。

「私、こんな大きな仕事に自分が関われるなんて思ってもみなかったわ」

 柳井さんは、謙虚だ。

「いやー、仕事がこんなに楽しいものなんてね」

 後藤さんが笑っている。

 俺たちがいるのは、「ホワイトローズ」の地下だ。

 都市部にあるので、地下に十分な空間があるか心配していたが、数本のパイプを除けば、問題なかった。
地下室は、そのパイプをかわす関係上、下に行くほど大きくなるように作った。
 あまり大きくすると崩落の危険があるから、土魔術で固めながら掘った。
 複数の太い支柱もきちんと作ってある。
 地下4階建ての大作だ。
 柳井さんと後藤さんの居住スペースも作った。

 会社の業務に関してだが、初めはどのメディアの報道も全部許していたが、今では制限を付けた。
 どういうことかと言うと、『異世界通信社』を通しての情報にクレジットを付けさせる事にしたのだ。クレジットとは、新聞記事の最後に書いてある「〇〇社提供」というやつだ。

 以降、「初めの四人」に関する情報は、必ず「異世界通信社」のクレジットを打つこと。 
 それを怠った場合、「異世界通信社」からその社へ情報は提供しない。 
 その社に他社が情報を漏らした場合も同じ扱いとする。

 そういう連絡をマスメディア、各報道機関に入れてある。
 これは、後藤さんからの進言だ。

 だから、現在、一般向けに流れている異世界の情報には、全て「異世界通信社」の名前が躍っている。こうして「異世界通信社」は、一躍世界中で知らぬ者がない会社となった。
 また、社員も一人増えた。

 新入社員については、次のようなことで決まった。

 ◇

 首相官邸の地下で閣僚との会見をした際、俺は銃を撃とうとした実行部隊を一人残して消した。

 その一人というのが、黒服を脅し、『初めの四人』の情報を政府筋に流させた男だ。
 俺は奴を畑山邸に送っておいた。
 その男を見た遠藤と言う黒服は、観念して自分の喉を匕首で突こうとした。
 しかし、俺が点を付けておいたから、そこから展開されたシールドが彼を守った。

 官邸から、畑山邸に瞬間移動した俺が目にしたのは、がっくりと崩れおちる遠藤の姿だった。

「おやっさん、す、すんません」

 男泣きにくれている遠藤の横に、畑山のおやじさんが立った。

「遠藤、おめえ、脅されてたらしいな」

 遠藤は何も言わなかった。

「おめえは、今日限り組を破門だ。 
 ただ、少しでもワシやこの組に何かを感じてるならシロー兄貴の世話になれ」

「お、親分……」

 遠藤は再び、号泣を始めた。

「シローさん、半端なやつですが、どうかこいつの事よろしくお頼みしやす」

 こうなったら仕方ないよね。
 ただ、「アニキ」と「オジキ」だけは何としても拒まねば。

「辛い思いをしたね。 
 妹さんを守りたいっていう、あなたの気持ちがよく分かったよ」

 俺は、そう言って遠藤に肩を貸してやり、なんとか立たせた。
 彼がおやじさんに深々と頭を下げるのを待ち、点ちゃん1号に瞬間移動した。
 そこで待機していた、柳井さんと後藤さんに、彼を新入社員として紹介したってわけ。

 ちょうど人手が足りないところに、天の配剤だと俺は考えていた。

 ◇

 俺たちの周囲が落ちついてきた、ちょうどそのタイミングで、同窓会の話が来た。

 加藤宅を訪れ、クラスメートを『体力測定』に連れてきた、白神という同級生から連絡があったのだ。
 彼から俺へは連絡方法が無いから、加藤からの念話でそれを伝えられた。
 畑山さんと舞子には、中西という女子から連絡があったそうだ。
 今はどうしているか知らないが、確か白神と中西はつきあっていたはずだ。
 大方、卒業前に二人の幸せを見せつけたくなったのかもしれない。

『(・ω・)ノ ご主人様がひねくれてるー』

 だって、点ちゃん、つきあってるんだよ。
 リア充死すべしって言ってもいいよね?

『( ̄ー ̄) ……どうしようもないな、この人』

 点ちゃんが……点ちゃんが冷たい。

『(+ω+) もう、呆れかえって何も言えません。
 ルルさんにさっきの記憶を見せてねって、ブランちゃんに頼んでおこー』

 どうしてそんなに俺の心をえぐるような事を……。

『(*ω・)=ll⇒ もう少しえぐったら、穴が開いて風通しがよくなるね』

 グサッ

 も、もういいです。私が悪うございました。

『(u ω u)b 分かればよろしい』

 ……。

 こうして心に深い傷を負った俺は、結局、同窓会に参加することを決めた。
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