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第八章 地球訪問編

第5話 家庭訪問 渡辺家

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 顔中にひっかき傷を負った加藤と一緒に朝食を食べ終えると、俺たちは加藤家を出発した。

 舞子の家には、加藤のおばさんから電話を入れてもらった。
 加藤家の時同様、上空に停めた点ちゃん1号からボードで渡辺家の庭に降りる。
 瞬間移動も使えないことはないが、みんなには「帰宅した」という実感を味わってもらいたいからね。

 舞子が律義に、実家のブザーを鳴らす。

「はーい」

 すぐに声がすると、玄関の引き戸が開いた。出てきたのは、舞子の母親だった。

 顔色がいい。めちゃくちゃ元気そうだ。
 俺が前に来た時は、舞子がいなくなって床に伏せるぐらいふさぎこんでいたのに。
 舞子を抱きしめたおばさんは、涙を流しならがら微笑んでいた。

「舞子、お帰り。
 史郎君、信じてたわ。
 ありがとう」

 おばさんが俺の手を両手で包みこむ。
 おばさんには、いつか舞子がいる世界に連れていくって約束してたからね。結局、舞子を連れてくることになったけど。
 おばさんが元気になっていて、俺は本当に嬉しかった。

「今日は、みんな泊ってくれるんでしょ?」

「ええ、話すことが沢山あるので、そうできればありがたいです」

「ウチは大歓迎よ。
 さあ、入って」

 舞子の家でも和室に通された。舞子の実家は神社だから当たり前なんだけどね。
 加藤は、畑山さんに手を取られている。昨日、夜中に何かがあったらしい。
 
 おばさんが、お茶を持ち入ってくる。なぜか、俺だけはジュースだ。

「史郎君は、これが好きだよね」

 今でも好きだからかまわないんだけど、子供の頃すごく好きだったんだよね。

「ええ、好きですよ」

 なぜか、舞子が赤くなっている。おばさんは、俺と舞子の顔を見て微笑むと、部屋を出ていった。

「しかし、加藤の家族って、林先生の問題、何事でもないように扱ってたわね」

 畑山さんが俺に話しかける。

「ああ、すごいよね。 
 おばさんから『自分に恥ずかしくないようにね』とか言われると、もう公開する以外ないだろう」

「ウチのお父さんも、同じようなこと言う気がするな」

 確かに、渡辺のおじさんならそう言いそうだ。
 俺たちが、林先生の事を話しあっていると、玄関の引き戸がガラッと勢いよく開く音がして、舞子のお父さんが現れた。
 作務衣から湯気が立っている。

「遅くなって悪かった。 
 遠くのお社の手伝いに行っててね」

「お父さん、ただいま帰りました」

「舞子、お帰り。
 やっぱり史郎君は、約束を守ってくれたな。
 ありがとう」

「いえ、俺だけの力で出来たことではありませんから」

「おじさん、こいつ変わってないでしょ」

「ああ、加藤君もお帰り。
 君の言う通りだな」

「おじさん、お久しぶりです」

「麗子ちゃんか。
 ますます綺麗になってるね」

「もう、おじさんったら、お上手なんだから」

 なぜか畑山さんは、舞子のお父さんの前では人格が変わるんだよね。なんでだろう。

「おじさん、聞いてください。
 この馬鹿加藤ったらひどいんですよ」

「れ、麗子さん、その話はここでは……」

 あれ? 何だ、今の。
 俺の聞き間違いかな? 
 加藤が畑山さんの事、「麗子さん」って言った気がする。

『(・ω・)ノ 昨日、夜中にそう呼ぶように約束させられていましたよ』

 お、点ちゃん、知ってたのか。
 点を付けてる対象からの音と映像は、全て点ちゃんがチェックしてるからね。

「今回は時間があるんだろう。
 向こうでのことを聞かせてくれないか」

「分かりました。
 おばさんが来るまでは、舞子さん以外が話しますね」

「気を遣わせるね。
 じゃ、着替えてくるから、その後お願いするよ」

 おじさんは、セーターとチノパン姿で戻ってきた。
 俺たちは、それぞれが、異世界で何をやってきたか大まかに話した。

「へーっ、麗子ちゃんは、女王様か。
 ぴったりだね」

「そんなことありませんよー」

 なんか、キャラ崩壊してるな。しっかりしろ、女王陛下。

「加藤君は、勇者か。
 それも君らしいな」

「あー、自分では、勇者というタイプじゃないと思うんですが」

「いや、お前は勇者だな、やっぱり」

 ダメ押ししてやる。

「そんなこと言って、一番すげえのは、お前じゃないか」

 加藤は、エルファリアで俺が無数の魔獣と二万人のダークエルフと戦ったことを、我が事のように話しだした。
 恥ずかしくなり、俺が席を立とうとしたとき、おばさんが昼食を持ってきた。
 昼食は具沢山のうどんだった。

「「「うわーっ!」」」

 みんなの声が重なる。異世界にいると、みそ汁やうどんが無性に食べたくなることがあったんだよね。どうやら、それは俺だけじゃなかったみたいだ。

 食べたかったものが食べられ、幸せな気持ちになった俺たち四人は、それぞれの体験をしゃべりまくった。
 ご両親から、前回見せた映像をもう一度見せてくれと頼まれたので、獣人たちから歓迎を受け、その前で演説する舞子の動画を映した。
 それを初めて見た畑山さんと加藤も、群衆の前で堂々と話す舞子に驚いていた。

 普通これだけ一方的に話すと相手が引いてしまうと思うのだが、おじさんとおばさんは、終始ほほ笑みながら俺たちの話を聞いてくれた。

 結局その勢いで夕食に突入し、しゃべりつかれた俺たち四人は、夕食が終わり入浴すると、すぐに寝てしまった。
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