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第1部

*自慰

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午後の練習最中に藤本には注意をされ、挙げ句の果てに練習から外され、あまりの不甲斐なさに滅入っていたが、大塚とサッカーの事、そして沢海の事を話をして少し考え方が落ち着いた。

自分の頭の中を整理する為にも、全体練習が終わるとボールを掻き集め、クリーナーでボールを磨く。
普段、自分のスパイクは毎日磨くものの、機材磨きはあまり手を掛けていないので無心になってボールを奇麗にする。

全体練習の後は個々が居残り練習やストレッチ、クーリングダウンなど自由に時間を過ごしている。

宮原が全てのボールを磨き終わる頃には殆どのチームメイトは部室でシャワーを浴び終え、帰宅をしていた。

ボールをネットに入れ直し、用具室に入れると宮原は部室に入ろうとノブを握る。

「ーーーボケーッとして、何か考え事をしているみたいですけど」
「他に何か変わった様なことはなかったか?」
「ーーーん……?
特には……あ、そういえば……」

『ーーー2人で何、話してんだろ……?』

室内から沢海と松下の声が聞こえ、部室のドアを開ける。

2人は既に練習着から制服に着替え、ベンチシートに腰を掛けて話をしていた。
宮原が室内に入ると2人は話すのを止め、沢海が声を掛ける。

「お疲れ様。
ボール磨き、ありがとう。
ーーー悪かったな。お前に全部任せてしまって」
「ーーーいえ。
自分たちが使っているものなんで…」

沢海は柔らかく微笑みながらお礼を言い、宮原は下を向いてたじろいでしまう。
宮原はギクシャクとした動きで室内に入り、2人から少し離れたベンチシートに腰掛け、スパイクを脱ぐ。
靴紐を解くと左足のスパイクを足裏から支えて、膝を庇う様に踵を外している。

「ーーーまだ膝が痛むのか?」

沢海に問い掛けられ、宮原は沢海からの視線を外し、そのまま黙り込んでしまう。
『やっぱり、沢海は自分の事を見ている』
ーーーそう考えると意識をしてしまう。
些細な動作のひとつひとつを見ている。

宮原は動揺する気持ちを抑えながら、顔を上げた瞬間、直ぐ傍に近付き、立っていた沢海の存在に驚いてしまう。

「うわっ!ーーーっと、すみません…」

あからさまに沢海を避けてしまい、お互いに距離を取ってしまう。
意識をしない様に考えれば考える程、更に意識をしてしまう。

松下が立ち上がり、「沢海先輩、オレ、帰ります。
ーーーじゃな、宮原。また明日な」と、出て行ってしまう。

パタンと扉が閉まり、沢海と2人きりになる。

「ーーーーー」

物音が聞こえず、シンと静まり返る部屋。
時折、シャワールームから聞こえる水音がタイルを濡らし、響いている。

鼓動がドキドキと早鐘を打ち、沢海にまで聞こえてしまうのではないかと恥ずかしくなってしまう。

『ーーーどうしよう…
何か話した方がいいのかな…
何を話せばいいのかな…』

宮原が思考を巡らせていると沢海は宮原に手を伸ばしてきた。

自分の方へ伸ばされてた手が視界に入り、宮原は首を竦めてしまう。
『触れられる』と構えてしまい、目をギュッと閉じてしまう。

そんな宮原を沢海は困った様に見つめ、宮原の頭に付いていた芝を取り除く。
沢海はそのまま宮原の前髪を梳くと顔を顔を真っ赤にして俯く表情が見えた。

宮原は沢海のされるがままに、受け入れている。

沢海は笑いながら「なんで頭にピッチの芝、付けてんだよ」と踵を返す。

離れていく足音に宮原は強張りを解き、視線を上げる。

沢海は自分のボストンバッグを手に取ると出入り口に向かう。

「あと、ここの電気の消灯と鍵は校門脇の守衛室に返却な。
ーーーじゃ、あまり遅くならないうちに帰るんだぞ」
「ーーーはい」

沢海は簡単に要件だけを伝え、部室を出ていく。

扉が閉まると宮原は全身の力が抜け落ちてしまい、ベンチシートに横向きに倒れてしまう。
盛大な溜息を吐き、手で顔を覆う。
過剰に反応をし過ぎてしまい、1人で狼狽している。

「ーーーもう……
オレ、意識し過ぎだっての……」

火照る顔に緊張から解かれた汗が額を伝う。
汗を拭こうと手を伸ばすとタオルではなく、シャツが手に触れる。
「あれ?」と思い、そのシャツを見てみると左下にレギュラー番号でもある「2番」とプリントされてあり、それが沢海のものだと分かる。

宮原は慌ててドアを開け、沢海の姿を探す。

「沢海先輩!
沢海先輩!!
忘れ物ありますよーーー!
ーーー沢海先輩ーーー!」

だが、辺りは既に人の気配いはなく、薄暗い校舎の外灯がぼんやりと点いているだけだった。

「ーーーもう行っちゃったか…」

宮原は諦めてドアを閉めると、ベンチシートに腰を下ろした。

沢海のシャツが汗で少し濡れているのが分かる。
それを握り締めている手を、ゆっくりとシャツを胸元に引き寄せた。
手に触れるシャツの感触と沢海の雄の匂いに目眩がする。

「沢海先輩……」

ピクンと反応を示す宮原のペニスがハーフパンツを僅かに持ち上げる。

「ーーー勃って…る……?」

宮原の下半身に甘い疼きが生まれる。
そっとハーフパンツの上からペニスの形に指を沿わせると簡単に硬度が増してくる。

「ーーーッあ……やばっ……いってばーーー」

止まらない自分の手の動きに腰が痙攣する。
もっと強い刺激が欲しくなる。
もっと激しい刺激が欲しくなる。

『ーーー沢海先輩ーーー
ーーーちょっとだけ、ちょっとだけだったら…』

ベンチシートから腰を浮かし、短パンを少しだけ刷り下げる。
下着に張り詰めたペニスが引っ掛かり、ペニスがピンと下腹に弾かれる。
脈を打ち、真っ赤な先端から透明な液が露のように
膨らんでいる。
そんな淫猥な情景に宮原は身震いした。

恐る恐るペニスに手を伸ばすと快感に熱い息が漏れる。

「あ…っ……は……ぁあーーー」

我慢出来ないとばかりに先走りが垂れ、宮原のペニスの先から根元まで濡らしていく。
丁度それが潤滑剤の様にぬるりと滑り、宮原の快感を高めていく。

ーーーもう止まれない。

宮原は片手でペニスを握り、手の筒の中で根元から扱く。

ぬちぬちと卑猥な音を立て、尿道から透明から白濁に変化した精液が溢れてくる。

強弱をつけて扱き上げると腰が動いてしまう。

手にしたシャツから逸れていく、沢海の匂い。
抱き寄せられた時、口付けをされた時、身体に触れられた時、鼻腔を擽る沢海の雄の体臭。

『もう、こいつに手、出さないでもらえる?
ーーーオレんの、だからさ』

甘い、言葉。
その言葉に自分が溶かされていく。
何も考えられなくなる。
『ーーー沢海先輩が好きだ』という事だけで全てが何も要らなくなる。
唯一、ただ1人だけの存在があるだけで、それ以上は何も欲しくはない。

「沢海……センパ…イーーー」

耐え切れない。
『ーーー沢海先輩が好きだ』と心も身体も満たされていく。

沢海に口付けされた事を思い出し、自分の口唇をなぞる。

「…何度もーーー
キス……されたん、だよな……」

熱を持った舌が宮原の口中に入り込み、全てを求めているかの様に蠢かす。
荒い呼吸が耳元を擽り、吐息が耳の中を伝う。
背中がゾクゾクするような痺れに身体を反らせる。

「ーーーッツ……クッーーー」

宮原はペニスを握り締め、呆気なく射精してしまう。

どろりとした精液が手の中に収まらず、ベンチシートに、床に、沢海のシャツに染みを作ってしまう。

「アッ……ダメだーーってば……
ーーーッツ……止まんな…い
あ、あぁ…んーーー」

ビュッビュッと尿道口が開き、精液が指の隙間から垂れていく。
宮原は自分のペニスを握り、射精を止めようとするが内腿が震え、我慢が出来ない。

「ーーーあ、ん……イヤだーーー
ーーー沢海、先輩……」

精液で汚してしまった沢海のシャツが手から滑り落ち、宮原のペニスを撫でる。
そんな僅かな刺激でも宮原は腰を揺らめかせ、もっと深い快楽を求めてしまう。

求めていく情欲に罪悪感は薄れていった。


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