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第一章
激突、大魔法!
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「何してんだこんな夜に……」
『ビブリア』に響き渡る爆音と明滅する夜空に、住人たちは魔法学校の周り──敷地の囲い柵に沿って取り囲むように集まっていた。
「そこをどけ!」
騒ぎを聞き付けて『ビブリア』に常駐する騎士団の兵士たちがやってきた。
彼らは、先に集まった住民たちの群れをかき分けて、魔法学校の正門から中に入ろうとする。
「おい!あれ──」
すると、野次馬の住人の一人が突然、空を指差した。
「なんだあれ……?」
周りの者たちも『それ』に気がついた。
彼らが目にしたのは、空高く立ち上がった青い光の柱と、その光の柱の中をゆっくりと降りてくる何かの『影』──揺らぎながら舞い降りる細いヴェールのような何か──であった。
(なんだっ!?)
魔法教師たちを押さえ込んでいたハートは、背中のほうで何かが起きたのを感じとり、リルフィリアの方を振り向いた。
(これは、降霊術──?!)
リルフィリアを中心に展開された魔法陣と彼女を包む光の柱を目にしたハートはそう察知した。その力強い魔法力を肌で感じとる。
バリバリバリッ!
「っ!」
何かがひび割れるような音が鳴り、ハートが正面に視線を戻す。
見ると先ほど放った土属性の重力魔法『グラビティ』の魔法陣を破って、奥から一人の人影──魔法学校の校長がこちらに向けて進み出てくる。
(何をするつもりだ……)
他の教師たちとは一線を画すその存在感に、身構えるハート。
すると校長は、その両手に持つ魔法の杖を、広げながら空に向けて掲げた。
ゴゴゴッ──
魔法力の粒子が校長の周りに渦巻く。
すると、ハートの前方の上空に、巨大な魔法陣が出現した。
これまで教師たちが展開してきた魔法陣のどれもが比較にならないほどの大きさ──禍々しい赤黒い光を放つ魔法陣が、ビブリアの夜空に怪しく輝く。
まずい──その凶悪な魔法力に、ハートが身の危険を直感する。
「させるかっ!」
背中で降霊術を発動している最中のリルフィリアは無防備な状態だ。
ハートは校長が放とうとしている巨大な魔法術を阻止すべく、マグナスの杖を彼に向けた。
杖の先に水魔法の魔法陣が出現し、そこから水流が放たれる。
相手を傷つけるわけにはいかない──勢いはあるが非殺傷的な水流が一直線に校長に向かって伸びていく。
───ドドドッ!
「っ!」
しかし、横から別の水流が伸びてきて、ハートの放った水流と激突した。
『グラビティ』からかろうじて立ち直った、水の魔法教師による水流魔法であった。
(しまった──)
手加減のあまり、半端な魔法を使ってしまった──自身の魔法を妨害されてしまったハートが臍を噛む。
奥の校長先生は健在だ。
「──栄えし者を滅ぼす流星」
校長の魔法術の詠唱はその間も途切れず進んでいる。
(もう止められない──!)
上空の魔法陣が一層強く光を放った。
「くそっ!」
この段階では魔法術を中断させることはできないと察したハートが、とっさに左手の本を見る。
バラバラとマグナスの本がめくれ、その本の後ろ側のページが開かれた。
「っ──」
提示された魔法術の全容を瞬時に理解するハート。
本の最後の近くに記されたその魔法は、これまでの魔法術をよりさらに難解複雑なものだ。 それはその魔法術の強力さを示唆していた。
(これしかない──)
杖をつき出すハート。杖の上部に据えられた赤と緑の魔石がカッと輝いた。
「時代を画する天地の変異──『マグナ=イクステンシオ』」
校長の詠唱とともに、上空の魔法術から『それ』は姿を現した。
巨大な岩塊──いや、岩と形容するにはあまりに巨大過ぎる『それ』は、もはや夜空を流れる星の欠片であった。
ゴゴゴゴゴッ!
唸りをあげて、滅びの流星がハートたちの方へ落下し始めた。
「くそっ──」
こんなものが炸裂したらハートたちはもちろん、魔法学校はおろか『ビブリア』の街も壊滅してしまう。
──絶対、止めなければ。
ハートの杖の先に巨大な橙色の魔法陣──太陽のごとく眩い光輪が現れた。
「星をも飲み込む大火の片鱗──」
ハートが強く叫ぶ。
「──出でよ紅炎、『プロミネンス』!!」
ハートの魔法陣から、巨大な炎が吹き出した。
「──熱っ」
その強大な熱量に、魔法を発動しているハートすら顔を歪めた。
息をすれば喉が焼けるほどの熱線が、周囲に迸っている。
ゴオオオッ!!
放たれた巨大な炎は、天空の魔法陣から堕ちてくる流星に向かって進み、それを丸ごと包み込んだ。
──────────────
あとがき:お気に入り登録が50になりました!ありがとうございます!!
ご支援に感謝して、次は60目指して頑張ります!
『ビブリア』に響き渡る爆音と明滅する夜空に、住人たちは魔法学校の周り──敷地の囲い柵に沿って取り囲むように集まっていた。
「そこをどけ!」
騒ぎを聞き付けて『ビブリア』に常駐する騎士団の兵士たちがやってきた。
彼らは、先に集まった住民たちの群れをかき分けて、魔法学校の正門から中に入ろうとする。
「おい!あれ──」
すると、野次馬の住人の一人が突然、空を指差した。
「なんだあれ……?」
周りの者たちも『それ』に気がついた。
彼らが目にしたのは、空高く立ち上がった青い光の柱と、その光の柱の中をゆっくりと降りてくる何かの『影』──揺らぎながら舞い降りる細いヴェールのような何か──であった。
(なんだっ!?)
魔法教師たちを押さえ込んでいたハートは、背中のほうで何かが起きたのを感じとり、リルフィリアの方を振り向いた。
(これは、降霊術──?!)
リルフィリアを中心に展開された魔法陣と彼女を包む光の柱を目にしたハートはそう察知した。その力強い魔法力を肌で感じとる。
バリバリバリッ!
「っ!」
何かがひび割れるような音が鳴り、ハートが正面に視線を戻す。
見ると先ほど放った土属性の重力魔法『グラビティ』の魔法陣を破って、奥から一人の人影──魔法学校の校長がこちらに向けて進み出てくる。
(何をするつもりだ……)
他の教師たちとは一線を画すその存在感に、身構えるハート。
すると校長は、その両手に持つ魔法の杖を、広げながら空に向けて掲げた。
ゴゴゴッ──
魔法力の粒子が校長の周りに渦巻く。
すると、ハートの前方の上空に、巨大な魔法陣が出現した。
これまで教師たちが展開してきた魔法陣のどれもが比較にならないほどの大きさ──禍々しい赤黒い光を放つ魔法陣が、ビブリアの夜空に怪しく輝く。
まずい──その凶悪な魔法力に、ハートが身の危険を直感する。
「させるかっ!」
背中で降霊術を発動している最中のリルフィリアは無防備な状態だ。
ハートは校長が放とうとしている巨大な魔法術を阻止すべく、マグナスの杖を彼に向けた。
杖の先に水魔法の魔法陣が出現し、そこから水流が放たれる。
相手を傷つけるわけにはいかない──勢いはあるが非殺傷的な水流が一直線に校長に向かって伸びていく。
───ドドドッ!
「っ!」
しかし、横から別の水流が伸びてきて、ハートの放った水流と激突した。
『グラビティ』からかろうじて立ち直った、水の魔法教師による水流魔法であった。
(しまった──)
手加減のあまり、半端な魔法を使ってしまった──自身の魔法を妨害されてしまったハートが臍を噛む。
奥の校長先生は健在だ。
「──栄えし者を滅ぼす流星」
校長の魔法術の詠唱はその間も途切れず進んでいる。
(もう止められない──!)
上空の魔法陣が一層強く光を放った。
「くそっ!」
この段階では魔法術を中断させることはできないと察したハートが、とっさに左手の本を見る。
バラバラとマグナスの本がめくれ、その本の後ろ側のページが開かれた。
「っ──」
提示された魔法術の全容を瞬時に理解するハート。
本の最後の近くに記されたその魔法は、これまでの魔法術をよりさらに難解複雑なものだ。 それはその魔法術の強力さを示唆していた。
(これしかない──)
杖をつき出すハート。杖の上部に据えられた赤と緑の魔石がカッと輝いた。
「時代を画する天地の変異──『マグナ=イクステンシオ』」
校長の詠唱とともに、上空の魔法術から『それ』は姿を現した。
巨大な岩塊──いや、岩と形容するにはあまりに巨大過ぎる『それ』は、もはや夜空を流れる星の欠片であった。
ゴゴゴゴゴッ!
唸りをあげて、滅びの流星がハートたちの方へ落下し始めた。
「くそっ──」
こんなものが炸裂したらハートたちはもちろん、魔法学校はおろか『ビブリア』の街も壊滅してしまう。
──絶対、止めなければ。
ハートの杖の先に巨大な橙色の魔法陣──太陽のごとく眩い光輪が現れた。
「星をも飲み込む大火の片鱗──」
ハートが強く叫ぶ。
「──出でよ紅炎、『プロミネンス』!!」
ハートの魔法陣から、巨大な炎が吹き出した。
「──熱っ」
その強大な熱量に、魔法を発動しているハートすら顔を歪めた。
息をすれば喉が焼けるほどの熱線が、周囲に迸っている。
ゴオオオッ!!
放たれた巨大な炎は、天空の魔法陣から堕ちてくる流星に向かって進み、それを丸ごと包み込んだ。
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