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第一章
二人の力で①
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ドォン……ドォン……
校長の巨大な魔法術を防いだハートであったが、安堵する暇もなく今度は他の五人の魔法教師たちの攻撃にさらされていた。
風の魔法術で空に浮くハートに対して、風の魔法教師も同様の術を発動させ、他の魔法教師たちを空に浮かせた。
先に空を飛んで接近してきたのは火の魔法教師。その杖から吹き出した炎が一直線にハートに向かって伸びる。
また、雷の魔法教師の杖からもハートに対して稲妻が放たれた。
「くそっ!」
魔術師同士の空中戦。ハートは空中を飛び回ってそれらをかわし、また回避できないときは魔法陣による防御──マグナスの本の一ページに記されていた『魔力防壁』でしのぐ。
──反撃をしないと!
ハートに焦りが生まれる。
先ほどまでは大技を用いていた教師たちだったが、今は発動までの隙の小さな中程度の魔法術を多用することでハートを手数で圧倒していた。
(こんなの──全員を無傷で元に戻すなんて無理だ)
余裕を失ったハートにそんな考えがよぎる。
バラバラバラバラッ!
マグナスの本のページが自動でめくれ、新たな魔法術のページがハートに提示された。
──新しいやつか!
期待してそのページを目にするハート。その頭に魔法術の情報がインプットされる。
しかし──
(こんなの──使えない!)
それが広範囲で、かつ高い殺傷力を持つ魔法術であることを瞬時に理解したハートは、その威力を恐れ、その魔法術の使用にはとても踏み出せなかった。
どうする──おそらくこの本は、その膨大な中身から自分が望むような魔法術を提示してくれるのだろう。
自分は一瞬、先生たちを傷つけてしまっても構わないのではないかと考えた。だから、殺傷力のある強力な魔法術がページに出てきたのだ。
(無傷で元に戻す魔法は──)
先ほどリルフィリアたちを囲んでいた兵士たちを、無傷のまま制圧したような魔法をハートは思い描く。
ハートの思いに応じてか、バタバタと本がめくれ、別のページが出てきた。
(────これだ!)
その全容を理解したハート。先ほど見た魔法術とは別のものだが、この魔法なら先生たちにかけられたシャルロッテの『ヒューマンテイム』を解くことができるはずだ。
(これを発動できれば──)
しかしその直後に、ハートの上空に黄色の魔法陣が出現し、そこから無数の岩が雨あられと降り注いだ。
「っ!」
ドドドドドッ!
『魔力防壁』によってそれを退けるハート。しかし──
ブワッ!!
「わあっ!」
突如、強烈な突風が全身を襲い、ハートは大きく後方に飛ばされた。
奥の地上に控える風の魔法教師による攻撃だった。
(くそっ)
ダメージはなかったがハートは空中で体勢を崩してしまう。
すぐさま風魔法で体のバランスを取り戻したハートであったが、
「────ぶっ!!」
その直後、高圧力の水流がその体を直撃した。
ドオッ!
水流に押され、地面に墜落するハート。
他の教師と同じく、空中で構えていた水の魔法教師の一撃であった。
「ぐっ───あっ!」
苦悶の表情で立ち上がったハートであったが、その頭上に大きな魔法陣が輝いているのに気がついた。
残るもう一人──地上の深奥に控える校長による魔法陣であった。
(まずい──)
危険を察知したハートはそれを防御しようとするが、ハートの『魔力防壁』が展開されるより早く、校長の魔法陣が強い光を発した。
間に合わない──ハートが目を見開いた、その時。
「出でよ!イフリート!!」
(──!?)
覚えのある声とともに、頭上にあった校長の魔法陣が消えた。
(なにが──)
とっさに、声のした方を振り向くハート。
その先には、炎のような体毛をなびかせる大型の獣──炎の使い魔『イフリート』と、それを操る少女リルフィリアの姿があった。
校長の巨大な魔法術を防いだハートであったが、安堵する暇もなく今度は他の五人の魔法教師たちの攻撃にさらされていた。
風の魔法術で空に浮くハートに対して、風の魔法教師も同様の術を発動させ、他の魔法教師たちを空に浮かせた。
先に空を飛んで接近してきたのは火の魔法教師。その杖から吹き出した炎が一直線にハートに向かって伸びる。
また、雷の魔法教師の杖からもハートに対して稲妻が放たれた。
「くそっ!」
魔術師同士の空中戦。ハートは空中を飛び回ってそれらをかわし、また回避できないときは魔法陣による防御──マグナスの本の一ページに記されていた『魔力防壁』でしのぐ。
──反撃をしないと!
ハートに焦りが生まれる。
先ほどまでは大技を用いていた教師たちだったが、今は発動までの隙の小さな中程度の魔法術を多用することでハートを手数で圧倒していた。
(こんなの──全員を無傷で元に戻すなんて無理だ)
余裕を失ったハートにそんな考えがよぎる。
バラバラバラバラッ!
マグナスの本のページが自動でめくれ、新たな魔法術のページがハートに提示された。
──新しいやつか!
期待してそのページを目にするハート。その頭に魔法術の情報がインプットされる。
しかし──
(こんなの──使えない!)
それが広範囲で、かつ高い殺傷力を持つ魔法術であることを瞬時に理解したハートは、その威力を恐れ、その魔法術の使用にはとても踏み出せなかった。
どうする──おそらくこの本は、その膨大な中身から自分が望むような魔法術を提示してくれるのだろう。
自分は一瞬、先生たちを傷つけてしまっても構わないのではないかと考えた。だから、殺傷力のある強力な魔法術がページに出てきたのだ。
(無傷で元に戻す魔法は──)
先ほどリルフィリアたちを囲んでいた兵士たちを、無傷のまま制圧したような魔法をハートは思い描く。
ハートの思いに応じてか、バタバタと本がめくれ、別のページが出てきた。
(────これだ!)
その全容を理解したハート。先ほど見た魔法術とは別のものだが、この魔法なら先生たちにかけられたシャルロッテの『ヒューマンテイム』を解くことができるはずだ。
(これを発動できれば──)
しかしその直後に、ハートの上空に黄色の魔法陣が出現し、そこから無数の岩が雨あられと降り注いだ。
「っ!」
ドドドドドッ!
『魔力防壁』によってそれを退けるハート。しかし──
ブワッ!!
「わあっ!」
突如、強烈な突風が全身を襲い、ハートは大きく後方に飛ばされた。
奥の地上に控える風の魔法教師による攻撃だった。
(くそっ)
ダメージはなかったがハートは空中で体勢を崩してしまう。
すぐさま風魔法で体のバランスを取り戻したハートであったが、
「────ぶっ!!」
その直後、高圧力の水流がその体を直撃した。
ドオッ!
水流に押され、地面に墜落するハート。
他の教師と同じく、空中で構えていた水の魔法教師の一撃であった。
「ぐっ───あっ!」
苦悶の表情で立ち上がったハートであったが、その頭上に大きな魔法陣が輝いているのに気がついた。
残るもう一人──地上の深奥に控える校長による魔法陣であった。
(まずい──)
危険を察知したハートはそれを防御しようとするが、ハートの『魔力防壁』が展開されるより早く、校長の魔法陣が強い光を発した。
間に合わない──ハートが目を見開いた、その時。
「出でよ!イフリート!!」
(──!?)
覚えのある声とともに、頭上にあった校長の魔法陣が消えた。
(なにが──)
とっさに、声のした方を振り向くハート。
その先には、炎のような体毛をなびかせる大型の獣──炎の使い魔『イフリート』と、それを操る少女リルフィリアの姿があった。
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