エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

第一章

35 敵艦、迫る

(あれが……)
　水平線付近に浮かび上がった複数の薄い影。
　方位は『アマネ』の艦首を0°としたときの相対方位で左30°ほどで、数は四つ。一番左の艦影が一番大きく、右に行くほど少しずつ小さくなっている。
　敵艦隊は斜めに並んで進む梯形陣で『アマネ』に向かって直進してきていた。
(──来る！)
　本当に今から戦いになるという恐怖がひしひしとカウルの胸を蝕んでいく。
　どこにも逃げ場はない。
「──おいっ！おいっ！！」
　大きな怒鳴り声にカウルがはっと我に帰り、シーナのほうを振り向く。
「ぼさっとするな！弾を寄越せ間抜け！！」
　凄まじい剣幕にカウルは反射的に背嚢に手を突っ込んだ。
　慌てて引っ張り出した対装甲狙撃銃用の大型弾倉が手の中で跳ねて甲板の上に落ちる。
「おいっ！！」
　間髪を容れずシーナにまたもや怒鳴られ、カウルはすぐに落ちた大型弾倉を拾うと、震える両手にぐっと力を込めて、ぎゅっと目を瞑り意識を集中させる。
　カウルの手のひらが淡く光り、大型弾倉に『心』が注入された。
「すみません！」
　これ以上何か怒鳴られる前に、カウルは急いでその弾倉をシーナに差し出す。
　シーナが弾倉を手に取る。だが──
「足りねえよ馬鹿！！もっと入れろ！！」
　なぜかシーナが、大型弾倉をカウルに突き返してきた。