14 / 35
14.大人の対応って大事です!
しおりを挟む
全ての準備が終わり、ダイニングの中央に置かれた焦げ茶色の無垢材のテーブルに全ての料理を並べ終えたところで、歩夢君に二人を呼びに行ってもらった。
碧さんはともかく、さっきの発言でたぶん八代葉月に警戒されてる気がするから、俺が呼びに行かないほうがいいだろうと思ったんだけど……。
「すごいご馳走だね。準備大変だったでしょ?」
「いえ、今日は歩夢君が手伝ってくれたので」
「そうなんだ。じゃあ俺は後片付け手伝うよ」
ダイニングに入るなりテーブル上の料理を見て笑顔でそう言ってくれた碧さんに対し、やや遅れて姿を現した八代葉月は物凄く不機嫌そうに料理を一瞥し、何も言わずに椅子に座った。
この表情と態度を見る限りこれから和やか食事にしようという雰囲気はまるで感じられない。
うーん。思いっきり売られたケンカを買った挙げ句に、そのまま放置してしまったのはさすがにまずかったか……。
さっきの自分の態度を反省するのと同時に、八代葉月の中での俺の印象は最悪だろうということを改めて実感する。
まあ、それはお互い様で、本人からの希望もあったし、普段は必要最低限の接触しかするつもりないから、テーブルを共にして食事をするのもこれきりだと思うけど。
相手は大人気アイドル。同じ家にいてもきっと顔を会わせることなんて稀だろう。
でも今日は初日で全員が揃ってるんだし、表面上だけでも普通の雰囲気で食事がしたい。
そうは言っても今この状態じゃきっと周りが気を遣うよな……。
せっかくの食事が味気ないものになりそうで、手伝ってくれた歩夢君に申し訳なくなった俺は、早速大人の対応をすることに決めた。
「八代君。さっきはすみませんでした。ついカッとなって色々言っちゃって……。大学に通いながらってことで仕事が中途半端になるんじゃないかって心配してるんだと思いますが、自分の役目はちゃんと果たすつもりでいます。もちろん余計な干渉はしません。【Jewel Rays】の皆さんのお役に立てるよう頑張りますので、改めてよろしくお願いいたします」
頭を下げた俺に八代葉月は不愉快そうに眉を寄せる。
──あ、やっぱりダメかな……?
完全に勢いとはいえ、結構なこと言っちゃったもんな……。
こっちが謝ったんだからそっちも態度を改めるべきだ、なんて思わない。俺だって許せないことは許せないし、謝ってもらいたくない人に謝ってもらったって神経逆撫でされるだけだってのはよくわかってる。
こういうのってあんまりしつこく言うことでもないからな……。
あまりに反応のない八代に内心苦笑いしていると。
「葉月」
碧さんが鋭い声で八代の名前を呼ぶ。
八代は益々眉間の縦皺を深くするとキッと俺を睨み付け、不本意だというのがありありとわかる態度で俺を見据えた。
うわー。こりゃ相当根に持ってんな……。
なんて思っていたら。
「……さっきは悪かった」
耳を澄ませないと聞こえないほどの小さな声で八代が俺に謝ってきたのだ。
まさかそんな言葉を聞けるとは思ってもいなかった俺は、すぐに反応出来ずに固まってしまったのだった。
碧さんはともかく、さっきの発言でたぶん八代葉月に警戒されてる気がするから、俺が呼びに行かないほうがいいだろうと思ったんだけど……。
「すごいご馳走だね。準備大変だったでしょ?」
「いえ、今日は歩夢君が手伝ってくれたので」
「そうなんだ。じゃあ俺は後片付け手伝うよ」
ダイニングに入るなりテーブル上の料理を見て笑顔でそう言ってくれた碧さんに対し、やや遅れて姿を現した八代葉月は物凄く不機嫌そうに料理を一瞥し、何も言わずに椅子に座った。
この表情と態度を見る限りこれから和やか食事にしようという雰囲気はまるで感じられない。
うーん。思いっきり売られたケンカを買った挙げ句に、そのまま放置してしまったのはさすがにまずかったか……。
さっきの自分の態度を反省するのと同時に、八代葉月の中での俺の印象は最悪だろうということを改めて実感する。
まあ、それはお互い様で、本人からの希望もあったし、普段は必要最低限の接触しかするつもりないから、テーブルを共にして食事をするのもこれきりだと思うけど。
相手は大人気アイドル。同じ家にいてもきっと顔を会わせることなんて稀だろう。
でも今日は初日で全員が揃ってるんだし、表面上だけでも普通の雰囲気で食事がしたい。
そうは言っても今この状態じゃきっと周りが気を遣うよな……。
せっかくの食事が味気ないものになりそうで、手伝ってくれた歩夢君に申し訳なくなった俺は、早速大人の対応をすることに決めた。
「八代君。さっきはすみませんでした。ついカッとなって色々言っちゃって……。大学に通いながらってことで仕事が中途半端になるんじゃないかって心配してるんだと思いますが、自分の役目はちゃんと果たすつもりでいます。もちろん余計な干渉はしません。【Jewel Rays】の皆さんのお役に立てるよう頑張りますので、改めてよろしくお願いいたします」
頭を下げた俺に八代葉月は不愉快そうに眉を寄せる。
──あ、やっぱりダメかな……?
完全に勢いとはいえ、結構なこと言っちゃったもんな……。
こっちが謝ったんだからそっちも態度を改めるべきだ、なんて思わない。俺だって許せないことは許せないし、謝ってもらいたくない人に謝ってもらったって神経逆撫でされるだけだってのはよくわかってる。
こういうのってあんまりしつこく言うことでもないからな……。
あまりに反応のない八代に内心苦笑いしていると。
「葉月」
碧さんが鋭い声で八代の名前を呼ぶ。
八代は益々眉間の縦皺を深くするとキッと俺を睨み付け、不本意だというのがありありとわかる態度で俺を見据えた。
うわー。こりゃ相当根に持ってんな……。
なんて思っていたら。
「……さっきは悪かった」
耳を澄ませないと聞こえないほどの小さな声で八代が俺に謝ってきたのだ。
まさかそんな言葉を聞けるとは思ってもいなかった俺は、すぐに反応出来ずに固まってしまったのだった。
1
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説
ドラマのような恋を
Guidepost
BL
2人の出会いは曲がり角でぶつかるというお約束……
それと落ちたレタスだった。
穂村 葵(ほむら あおい)と桐江 奏真(きりえ そうま)はそんな出会い方をした。
人気ありドラマや歌手活動に活躍中の葵は、ぶつかった相手がまさか自分の名前も顔も知らないことに衝撃を受ける。
以来気になって葵は奏真を構うようになり――
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる