セカンドライフ!

みなみ ゆうき

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本編

52.負けました!

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誰もいなくなった室内には、何故か生徒会長様と俺だけが残されていた。


副委員長……。何でこの人も連れてってくれなかったんだ……。

ある意味一番苦手な相手であり、しかもあんなあられもない姿を見られた直後というどう考えても気まずい状態に、思わずため息を吐きたくなってしまう。

それに加え、佐伯に使われたローションの影響で身体の中から勝手に沸き上がってくるヤバい感覚がそろそろ限界に達しそうになっており、俺はとにかく一刻も早くこの全ての状態を解消したくて気ばかりが焦っていた。


早く出ていってくれないかな……。

チラッと会長様のほうを窺うと、何故か信じられないものを見るような目付きで俺をガン見している。


は? どういうこと?

怪訝そうな顔で見返すと、会長様が気まずそうに口を開いた。


「……お前、ホントに中里光希か?」


何を今更、と思ったところで、佐伯が余計な真似をしてくれたお陰で、ほとんど素の状態だったことを思い出す。


そういえば俺、変身解除されてた……。


「……そうですけど、何か?」


開き直ってそう言ってみたものの、どういうことか説明しろと言われてたらどうしようかと内心冷や冷やしてしまう。

こうなった俺の事情を話すのも御免だが、はっきり言って今の俺には悠長に話をするだけの余裕はないのだ。


「……お前、大丈夫か?」


顔色を悪くする俺を気遣ったらしく、労るような言葉を掛けられたが、俺はすぐに頷く事が出来なかった。

身体を少し動かすだけでも快感が増幅していくような気がするし、正直喋るのもしんどい。

ジンジンと疼くような感覚が俺の思考を確実に鈍らせていくのだから、全くもって大丈夫とは言い難い。


──佐伯のヤツ、次に会ったら絶対殴る。

そう固く心に誓いながらも、何もしなくとも身体が疼いて堪らないという生まれて初めての経験に、俺は徐々に冷静さを失っていった。


ヤバい……。今すぐイキたい……。

一回イケば少しはこの身体の疼きも楽になるかもしれない。

そう考えた俺は、一刻も早く寮の部屋に戻って自慰行為に及ぶことに決めた。


しかし。

高等部の敷地の一番端にあるこの旧図書館から、反対側の端にある寮まで結構な距離を歩かねばならない事を思い出し、すぐに絶望的な気分にさせられる。


はっきり言ってそこまで我慢できるだけの余裕はない。

仕方ない……。
会長様にはとっとと出ていってもらって、ここでコトに及ぶことにするか……。


そうと決まれば即行動。

邪魔な会長様にはさっさと出ていってもらおう。


「……会長様もありがとうございました。後はひとりで大丈夫なんで、気にぜず仕事に戻って下さい」


暗にさっさと出ていって欲しいと言ってみたのだが、最悪なことに会長様はそれをあっさり聞き流してくださった。


「お前、伊織に何か使われたんじゃないのか?」


バレてる……。

けれど、わざわざ答える必要もないので口を噤んでいると。


「アイツはそういうの好きだからな。お前に対してもそういう手を使ったんだろうなと思ってた。──それにお前の不審な態度でバレバレだ。知られたくなかったら、もうちょっと上手く隠せよ」


軽く鼻で嗤われてしまった。

確かに切羽詰まって余裕がなかったのは認めるが、堪え性がないように言われるのは腹立たしい。

全部おかしなモンが入ったローションのせいだっつーの!


「……だったら何だって言うんですか?」


苛立ちも露に軽く睨み付けると、何故か会長様の片方の口の端が持ち上がったのが見えた。

嫌な予感しかしない……。


「俺が手伝ってやるよ」

「……は?何を?」

「そういうのは、後ろに指突っ込んでキレイに洗い流すのが一番手っ取り早い対処法なんだよ。自分で見えない処なんだから、他人にしてもらったほうが確実だろ?」

「え……」


そっか、そういう事になるのか……。確かにそこをキレイにしなきゃ意味ないよな……。

単に普通の自慰行為で済む話じゃなかったらしい。


「自分でするんで結構です」


即座に断りを入れると、興味深そうに目を眇められた。

正直その行為を自分ですることに抵抗がないといえば嘘になる。コイツにされんのも嫌だけどな。


「お前に自分で出来るのか?見たところ、そうやってただ喋ってるだけでも辛そうに見えるけど」


俺の戸惑いはしっかり顔に出ていたらしく、会長様はすかさず嫌なポイントを突いてきた。


相変わらず性格悪ぃな!オマエも一回同じ目に遭ってみろっての!!

無理矢理快感を引き摺り出されて、じわじわと追い上げられていく状況で、普段どおり涼しい顔して俺様ぶっていられるっていうのなら馬鹿にされても仕方ないと思えるが、そういう経験のないヤツにそんな事を言われたくない。

そう感じた瞬間──。


快感に支配され、余裕がないながらも、俺の中の負けず嫌いがムクリと頭をもたげた。


「出来ますよ」


俺は涼しい顔でそう言うと、それを証明するように、ソファーに座り片膝を立て、大きく脚を開いてからズボンのファスナーに手を掛けた。


「……は…ぁ……」


その動作だけでも息が上がる。座ったことで余計な接触が出来た分、そこからじわじわと快感が這い上がってくるようだ。


「これからここで一回抜いて、少し楽になってから自室に戻って処置するんで大丈夫です。なので早く出てってもらえますか?」


余裕の表情で嫣然と微笑んでみせる。

普通なら男の自慰行為を見たいと思う男はそういない。

会長様もすぐに出ていくだろうと高を括っていた。


ところが俺の予想に反して一向に立ち去る気配を見せない会長様に、俺はさすがに焦りを感じてしまう。


「……それとも、そこでずっと見てるつもりですか?俺のオナニー。もしかして会長様はそういうプレイが好みとか?」


赤裸々な言葉で軽く挑発すると、会長様の目が僅かに見開かれた。

ここまで言われてまだ居座る人間はいないだろう。勝ったな……。

俺が内心ニヤリとすると、逆に会長様にニヤリと嗤われ、不覚にも一瞬怯んでしまう。


「だったら見せてもらおうか。確かにお前の言うとおり、羞恥プレイは嫌いじゃないしな」


会長様はその辺にあった椅子をわざわざ俺の前に持ってくると、長い脚を組んで座ってしまった。

俺は追い詰めたつもりが、逆に追い詰められてしまったのだと気付き青くなる。


そうだ。すっかり忘れてた……。コイツら普通じゃなかった!!
そもそも普通じゃないからこんな目にあったんじゃん、俺……。


さっきの話は正常な判断が出来ない状態で言ったことなので出来れば無効にしてもらいたいところだが、今更出来ませんというのも俺のプライドが許さない。


「……じゃあ、遠慮なく」


俺は仕方なくズボンの中に手を入れると、かなり元気になっている自分の性器に直接触れた。


「……ん…っ…」


軽くひと撫でしただけでも、ゾクゾクとした快感が這い上がってきて、声が漏れる。


すると。


「そんなんじゃ何も見えねぇよ。下全部脱いで、両膝立てて大きく脚拡げろ」


命令口調で所謂M字開脚の体勢を所望され、俺は愕然としてしまった。

それでも出来ませんと言いたくない一心で、半ば自棄になりながらも勢いよくズボンを脱ぎ捨て、潔く脚を開いていく。


「色気がねぇなぁ……」


苦笑されてしまったが、知ったこっちゃない。


「別に会長様を喜ばすためにやってるんじゃないので、そんなモン求められても困ります」


キッパリと言い切ると、俺は軽く目を閉じて自慰行為に集中する。

さっき少し触ってしまったことで、かなり余裕がなくなっていたこともあり、思っていたよりもずっと早くイケそうな気がしたオレは、さっさとコトを済ませてしまうことにした。


実は俺。自慰行為はあんまり得意じゃない。

最初が他人の手だったせいなのか、自分でするのはあんまり気持ちよく感じられなかったりする。

思春期に入る頃には女性関係も華やかになっていて、それこそ自分でする必要性も感じなかったから、そっちのテクニックを磨く必要もなかったせいもあると思う。


勃たなくなってから何度かチャレンジしてみたこともあったが、気持ちよくなるどころかちっとも反応しない自分のモノに焦りと苛立ちと不安を感じてしまい、益々勃たなくなる悪循環に陥ってしまうだけだったので、早々に諦めた。

自慰行為がはっきり言って軽いトラウマ状態にまでなっていたのだが──。


ヤバ……。もうイキそう……。

あり得ないほどの早さで昇り詰めていく自分に驚くと同時に、いくら何でも早すぎるだろうとツッコミたくなる。


「光希」


名前を呼ばれて、目を開けるとそこには俺の自慰行為を見つめる会長様の姿があった。

目の前にいるのはわかってはいたが、じっと見られてるのがわかる状態というのはかなり恥ずかしい。

思わず視線を逸らしてしまうと、すぐに俺様口調の命令が飛んできた。


「俺の目を見ながらイッてみせろ」

「な…っ……!」


恥ずかしすぎる要求に言葉を詰まらせていると、会長様は人の悪そうな笑みを見せながら挑発的な台詞を吐いてきた。


「これは羞恥プレイなんだろ?だったらそのくらい出来るよな?」


ここで出来ないなどと言えば、馬鹿にされることは目に見えている。

俺は挑むようにして会長様の目を見つめると、一心不乱に自分を追い上げていった。


「も……、イク……っ……」

「ちゃんと見ててやるから気持ちよくイケよ」


そう言われると同時に自分の精を解き放つ。


「ん……っ……!」


ビクビクと身体を震わせながら達した俺を見て、会長様は口角を上げて満足そうな顔をしていた。


「はぁ……」


脱力しながら大きく息を吐き出した直後、俺は自分の身体の異変に気付く。

たった今イッたばかりだというのに、俺のモノはまだ硬度を保ったままであり、その上、身体の疼きはさっきより明らかに強くなっていたのだ。


「何で……?」


自分の身体に起きている事態が上手く飲み込めず呆然と呟くと、会長様が追い討ちをかけるように絶望的な解説をしてくれた。


「媚薬の効果が出てんだろ。直腸は吸収がいいって云うし、お前のその様子じゃ今更部屋に戻って慌てて処置したところで手遅れだ」

「マジか……」

「後はクスリの効果がなくなるまで待つしかないだろうなぁ」


この状態で待つって、はっきり言って拷問に近い。

俺は今更ながらになんとか効果を和らげようと、自分の後孔に手を伸ばしてみたが、少し触れただけでも襲ってくる狂おしいほどの快感に一瞬にして怯んでしまった。

それでも何とかしようと、大きく脚を拡げて少しずつ中に自分の中指を埋めていく。


「ふ……っ……、ん…っ……、はぁ……っ……」


第二関節まで入れたところで、まだ中に残っているものを何とか掻き出そうと指を動かしてみるが、その度に訪れる得も言われぬ快感に、油断するとすぐにイッてしまいそうになる。

もう一度イッたところでこの疼きが治まるわけでもなく、体力だけが消耗していくことは目に見えている。
体力温存のためにも何とかギリギリまで射精を抑えようと、空いている左手で自分自身を強く握って必死に堪えた。


「そんなに意地にならずに素直に俺を頼ればいいものを……」


ため息混じりにそう言われカチンときた俺は、過ぎた快感のせいで生理的な涙が浮かんだままの瞳で会長様を思い切り睨み付けてやった。


「あのなぁ、そんな目したって逆効果だ」


会長様は椅子から立ち上がり俺の前に跪くと、おもむろに内部に埋められていた俺の手を外し、代わりに自分の指先を当てがってきた。


「お前と違ってお前のココは素直だな。ヒクヒクしながら貪欲に俺の指を求めてきてる」


そう言うなり、既にかなり解れている状態の内部に、一度に二本の指を侵入させてきたのだ。


「は…ぁ…っ、ん…っ……!!」


突然の衝撃に抑えきれない声をあげながら仰け反った俺を見て、会長様がクスリと笑う。


「どうせなら、思い切り気持ちよくなったほうがいいと思わねぇ?」

「あ…ぁ……ッ……!!」


悪魔の囁きと共に、二本の指で何度か中をかき混ぜながら前立腺を刺激され、またしても俺は簡単にイッてしまった。

それでもまだ身体の疼きは治まらず、触れられていない奥のほうが更なる刺激を求めてヒクつき始める。


「指だけじゃ物足りないって顔してる。もっと奥にも欲しいんだろ?」


まだ中に入れられたままの指をクニクニと軽く動かされ、身体をビクビク震わせながら、俺は遂に自分の中から止めどなく沸き上がってくる欲望に屈する決断を下した。


もういいや。俺の負けでも……。
コイツに勝ったところで、別に良い事があるわけじゃねぇし。

そう思ってみたが、やはり素直に負けを認めるのが悔しかった俺は、不本意だと云わんばかりの素っ気ない態度で降参の言葉を口にした。


「……勝手にしろよ」


そう言った途端。


それまで余裕を見せていた会長様の表情がガラリと変わり、その瞳に獰猛な光が宿ったのを見た俺は、早くも自分の決断に後悔することとなったのだった。
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