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本編
2.不能になりました!
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「そういう日もあるから気にしないで」
気まずそうな表情でそそくさとベッドを下りてバスルームへと向かった彼女の後ろ姿を、俺はただ言葉もなく呆然と見送っていた。
──信じられない。
今はその一言に尽きる。
俺をどん底の気分に落としてくれた子達がたむろするカフェを出て、予定どおり今日のデート相手とホテルに移動した俺だったが、いざコトに及ぼうとした時に自分の身体の異変に気付かされた。
──アレが勃たない。
彼女の身体に触れても、彼女からの奉仕を受けてもピクリともしなかった。 こんなことは初めてだ。
これってインポってやつじゃ……。
何の反応もしなかった自分の息子をじっと見つめてみる。
こういうことは精神的な要因が大きいと聞くが、俺が思い当たる原因はさっきのカフェでの事しかない。
しかも俺の身体の異変は息子だけじゃない。
彼女に触れた時に少しだけ違和感のようなものを感じた気がしたが、彼女に触れられて違和感がもっとはっきりとした感覚に変わった。
──その違和感の正体は嫌悪感。
いつもは魅惑的な彼女のすべてが、今の俺には触れられるのも耐え難いと思うほどの嫌なものに変わってしまったのだ。
……どうしよう。
絶望的な気持ちで、思わず自分の身体を抱き締める。
ヤバい!ヤバい!!マジでありえないって!!!
半ばパニックになった俺は、自分で脱ぎ散らかした服をかき集め、とりあえず外に出られる程度に身支度を整えると、脱兎のごとく部屋を飛び出した。
誰もいない高級ホテルの廊下を走り抜け、ちょうどいいタイミングでやってきたエレベーターに慌てて乗りこむ。
一刻も早くこの場所から離れたい一心で、イライラしながら階下への到着を待った。
到着を知らせる音が鳴り、扉が完全に開ききる時間さえももどかしく感じた俺は、少しだけ開いた扉に身体を捩じ込むようにしてエレベーターの外へと飛び出す。
扉が開くと同時に凄い勢いで中から出てきた俺を、周りの人間が不思議そうな表情で見ていたのがわかったが、そんなことは構っていられない。
カッコつけの俺にはありえないことだが、この時ばかりは他人にどう見られてるかなんて気にする余裕もなかった。
今までと違う自分の身体に戸惑い、パニックになった俺はホテルを飛び出し、まるで何かから逃げるかのように一心不乱に街中を走り抜けた。
薄闇の中、人気のない公園を見つけ足を止める。
誰も座っていないベンチに腰をおろして、すっかりあがってしまった息を整えていると、だんだんと冷静な自分が戻ってくる気がした。
そして冷静になった頭で、ようやく自分がどういう理由であのホテルを訪れていたかを思い出し、青くなった。
マズイ……。置き去りにしちゃった……。
彼女がバスルームを使っている間に、勝手に姿を消したことになる。
慌ててスマホを取りだし彼女に連絡しようとしたが、画面に表示された彼女の名前を見ただけで先ほど感じた嫌悪感を思い出し、身震いしてしまった。
連絡しようとしただけで、これだけ生理的に受け付けられない以上、彼女との関係は終わりが見えている。
今更取り繕って、彼女に謝って許してもらう気にはなれない。
彼女だけではなく、今まで関係を持った全ての女達が酷く疎ましく感じられる。
俺はスマホに登録されている全ての連絡先を削除してから、二度とこの端末を使わないつもりで電源をオフにしたのだった。
気まずそうな表情でそそくさとベッドを下りてバスルームへと向かった彼女の後ろ姿を、俺はただ言葉もなく呆然と見送っていた。
──信じられない。
今はその一言に尽きる。
俺をどん底の気分に落としてくれた子達がたむろするカフェを出て、予定どおり今日のデート相手とホテルに移動した俺だったが、いざコトに及ぼうとした時に自分の身体の異変に気付かされた。
──アレが勃たない。
彼女の身体に触れても、彼女からの奉仕を受けてもピクリともしなかった。 こんなことは初めてだ。
これってインポってやつじゃ……。
何の反応もしなかった自分の息子をじっと見つめてみる。
こういうことは精神的な要因が大きいと聞くが、俺が思い当たる原因はさっきのカフェでの事しかない。
しかも俺の身体の異変は息子だけじゃない。
彼女に触れた時に少しだけ違和感のようなものを感じた気がしたが、彼女に触れられて違和感がもっとはっきりとした感覚に変わった。
──その違和感の正体は嫌悪感。
いつもは魅惑的な彼女のすべてが、今の俺には触れられるのも耐え難いと思うほどの嫌なものに変わってしまったのだ。
……どうしよう。
絶望的な気持ちで、思わず自分の身体を抱き締める。
ヤバい!ヤバい!!マジでありえないって!!!
半ばパニックになった俺は、自分で脱ぎ散らかした服をかき集め、とりあえず外に出られる程度に身支度を整えると、脱兎のごとく部屋を飛び出した。
誰もいない高級ホテルの廊下を走り抜け、ちょうどいいタイミングでやってきたエレベーターに慌てて乗りこむ。
一刻も早くこの場所から離れたい一心で、イライラしながら階下への到着を待った。
到着を知らせる音が鳴り、扉が完全に開ききる時間さえももどかしく感じた俺は、少しだけ開いた扉に身体を捩じ込むようにしてエレベーターの外へと飛び出す。
扉が開くと同時に凄い勢いで中から出てきた俺を、周りの人間が不思議そうな表情で見ていたのがわかったが、そんなことは構っていられない。
カッコつけの俺にはありえないことだが、この時ばかりは他人にどう見られてるかなんて気にする余裕もなかった。
今までと違う自分の身体に戸惑い、パニックになった俺はホテルを飛び出し、まるで何かから逃げるかのように一心不乱に街中を走り抜けた。
薄闇の中、人気のない公園を見つけ足を止める。
誰も座っていないベンチに腰をおろして、すっかりあがってしまった息を整えていると、だんだんと冷静な自分が戻ってくる気がした。
そして冷静になった頭で、ようやく自分がどういう理由であのホテルを訪れていたかを思い出し、青くなった。
マズイ……。置き去りにしちゃった……。
彼女がバスルームを使っている間に、勝手に姿を消したことになる。
慌ててスマホを取りだし彼女に連絡しようとしたが、画面に表示された彼女の名前を見ただけで先ほど感じた嫌悪感を思い出し、身震いしてしまった。
連絡しようとしただけで、これだけ生理的に受け付けられない以上、彼女との関係は終わりが見えている。
今更取り繕って、彼女に謝って許してもらう気にはなれない。
彼女だけではなく、今まで関係を持った全ての女達が酷く疎ましく感じられる。
俺はスマホに登録されている全ての連絡先を削除してから、二度とこの端末を使わないつもりで電源をオフにしたのだった。
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