告白ごっこ

みなみ ゆうき

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7.茶番③

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高崎に連れられてやってきたのは、デートスポットとしても有名な、海の見える公園だった。

夕暮れ間近の公園は、犬の散歩をする人や遊び終わってこれから家路につこうとしている親子連れの姿も数多く見える。

そんな日常によくある幸せそうな光景を見ていると、心の中に細かい針のようなものが次々と刺さっていくような感覚に襲われる。
俺はそれにあえて気付かない振りをしながらいつもと変わらない表情で、高崎のすぐ後ろを歩いていった。


目的地はこの公園の最大の売りであろう、海が一望できる高台。

さすがは人気スポットと言うべきか。転落防止の柵の周辺にはロマンチックなシチュエーションで二人きりの時間を楽しもうとするカップルの姿がチラホラ見えた。

まさかこんな場所に連れてこられるとは……。

ベッタベタのデートコースにちょっとひく。

俺が本当にコイツのことが好きだったのなら、もしかしてちょっとくらい俺の事好きになってくれたのかな、とか期待しちゃったりするんだろうけど、生憎そんな風には思ってない上に、コイツがどういうつもりで俺をかまってきているのか知ってるだけに、何のつもりなんだろうとしか思えない。

う~ん。俺はこれにどういう反応をするのが正解なんだ?

反応に困った俺は、とりあえず自分の過去の経験から答えを探すことにした。


好きな人と一緒に眺める景色。

それがどこであるかということは関係なく、一緒にいられるっていうことが特別過ぎて、ずっとドキドキしてた覚えしかない。

──ダメだ。全然参考にならない。


「どうした? 難しい顔して」


高崎が俺の顔を覗き込む。
あまりに近すぎる距離に咄嗟に身体を引きそうになったものの、寸でのところで踏みとどまることに成功した。
こういう不意討ちをされると思わず素が出てしまいそうになるため、簡単にボロが出てしまいそうだ。気をつけないと。


「いや、昴流がこういうところに俺を連れてきてくれるとは思わなかったから。……ちょっと戸惑ってただけ」


俺はオマエの事好きなんだよ? それわかってて、こういういかにもな場所に連れてきてる? 誤解しちゃうよ? いいの? 的なニュアンスにも聞こえる言葉をチョイスして、ボケっと考え事をしていた言い訳をする。

実際の感情は別物だけど、嘘は言ってない。

高崎は俺の言葉にフッと口元を緩めた。
おぉ、なんかこの表情、イケメンって感じ。なんて思ってたら。


「行きたいところって言われて思い付いたのがここだった。海が嫌いな人ってあんまりいないじゃん。俺もまさか男二人で来るとは思ってなかったけど、瑠衣とならいいかなって思って」


コメントまでイケメンだった。

どうやら高崎はとりあえず海に行っとけば間違いないとか思ってるタイプの人間らしい。
きっと今までターゲットにされてきた女の子達はみんな、ここに連れて来られて喜んだんだろうな。こういうシチュエーションで口説かれれば、悪い気はしないどころか簡単にオチそうだし。

俺の事もこういう風に思わせ振りな態度で益々好きにさせておいて、目的を達成しやすくする作戦なんだろう。なるほどね。

じゃあ、こういう感じの返しはどうだろう?


「……そんな言い方されると、ちょっとくらいは友達以上になれてるのかなって期待しちゃう。……ズルいよ」


そっと目を伏せ、いじらしさを演出。

高崎みたいな根っからの女好きからしてみれば、男がこういうことしても何の効果もないんだろうけど、『高崎を好きな俺』の反応としては間違ってないと思うんだ。


暫しの沈黙の後、高崎は俯き加減になっている俺の顎にそっと手をかけると、俺を見ろとばかりに上を向かせた。
さっきよりも更に至近距離にある高崎の顔をさすがに直視できず、俺は思わず目を逸らしてしまった。


すると。

ほんの一瞬。

──何かが唇を掠めていった。
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