上 下
31 / 34

坊ちゃんと私の学園生活④

しおりを挟む


学園生活が始まり、坊ちゃんの体験授業は続いている。

坊ちゃんに実技は無用な気もするけれど、城から出たことのない坊ちゃんにとって、全てが真新しいのか楽しそうなので、全部受けるなんて言い出さないか今からヒヤヒヤもの。

もしそんなことを言われても、私は黙って付いていくだけなんだけれど、1つだけ避けてくれたら嬉しい教科がある。

「初めましての方がいますので、改めて自己紹介をしておきます。私が魔法陣工学を担当するクラーク・マリアンです」

そう。目下教壇に立つ変態教師ことクラーク教授の授業。

彼女は相変わらず長いローブを纏い、側からは変態教師だとは微塵も感じさせない。こうしてみるとちゃんと教授としての威厳もあるように見える。
ただ、私を睨んでいるのは相変わらずだけれど。


「初めての方がいるとはいえ、授業は復習しません。魔法陣とは生活の中では切っても切れないものです。何故なのか代表的な例をあげて貰いましょう。カーベニオン君?」

「はい。魔法陣とは霧散してしまう魔力を固定する為に使います。固定魔法や魔道具など、私達の生活の中で必要不可欠な術です」

坊ちゃん、よく出来ました!
すると、クラーク教授がニヤリと笑いかける。
なんだか嫌な感じ。

「宜しい。では、魔法陣とはどのようにして霧散する魔力を固定しているのでしょうか?レナさん?」

「魔法陣は図形や呪文に強制力を与えて固定させますが、大切なのはその物質に魔力で刻むということです。金属なら土魔法で。水には水魔法で。そこにある物質を作動するように書き換える力こそが魔力固定の要となります」 

これってもう習ってる内容なのかしら?
いくら私がこの中で1番年上だとしても、初めてでこんな質問なんて随分と目の敵にされたようね。

「……上出来です。魔法陣は魔力で綴らなければならない上に、その物質と相性の良い魔力でなければなりません。一般的な魔道具はそこまで拘る必要はありませんが、魔道具研究には土魔法の方が有利だったりします」

何とか大丈夫だったみたいだけど、この授業だと毎回当てられそうで面倒ね……

頭が痛い思いをしていると、くるくるとした赤髪の女の子が手を上げた。

「土に火魔法を刻む時も土魔法ということですよね?」

「はい。例えば罠として火魔法を固定したい時は、土の魔力で火魔法の図形を刻みます」

「混乱するぅ」「土魔法が有利ってのがズルいよ」なんて教室内がざわつくけど、確かに火魔法なら火属性の魔力を使いたいわよね。

「勿論、別魔力で刻んでも効果はあります。が、定着力が弱まるので使い捨てになります。これがスクロールなどに用いられてますね」

スクロールは一度切りの魔法が使える便利グッズ。
属性が少ない冒険者などは回復のスクロールや、いざという時の攻撃魔法をスクロールで持っていたりする。かなり高額だけれど。

「スクロールや、魔道具。魔法陣はあらゆるところで活躍しています。これらは魔法発動や魔道具作りの魔導工学にも大事な知識ですので、魔道工学を受講したい方は魔法陣工学をきっちり習得しておくと良いでしょう」

魔道具制作はかなりの修練が必要と聞いたけど、需要が高いし良い稼ぎになりそう。
けど、教師がなぁ……

「レナ」

私の方へ顔を寄せて、小声で話しかける坊ちゃん。
嫌な予感しかしない。

「僕、魔法陣工学受けてみようかなぁ」

「……止めたい所は山々なんですが」

「え、クラーク教授の教え方はとても分かりやすくて良さそうだよ?」

「稼げる内容ゆえにお止め出来ないのが悔しいです」

「レナはいつも侍女をやめるような言い方をするよね…」

「人生何があるか分からないですから」

「妙に達観してるんよなぁ」

「坊ちゃんの横にいれば誰だってそうなります」

「いや、レナの性格だよね?!」

「そこ!私語を慎みなさい!」

坊ちゃんの声が大きいからバレてしまったではないですか!

「申し訳ありません」

「2人は後で準備室へ来て下さい」  

無駄に接点が出来てしまった……やはりハーレムは逃れられないのかしら。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
 剣の腕を見込まれ、復活した古の魔王を討伐する為に勇者として異世界に召喚された男、唐観武光(からみたけみつ)……  しかし、武光は勇者でも何でもない、斬られてばかりの時代劇俳優だった!!  とんだ勘違いで異世界に召喚された男は、果たして元の世界に帰る事が出来るのか!?  愛と!! 友情と!! 笑いで綴る!! 7000万パワーすっとこファンタジー、今ここに開幕ッッッ!!

対人恐怖症は異世界でも下を向きがち

こう7
ファンタジー
円堂 康太(えんどう こうた)は、小学生時代のトラウマから対人恐怖症に陥っていた。学校にほとんど行かず、最大移動距離は200m先のコンビニ。 そんな彼は、とある事故をきっかけに神様と出会う。 そして、過保護な神様は異世界フィルロードで生きてもらうために多くの力を与える。 人と極力関わりたくない彼を、老若男女のフラグさん達がじわじわと近づいてくる。 容赦なく迫ってくるフラグさん。 康太は回避するのか、それとも受け入れて前へと進むのか。 なるべく間隔を空けず更新しようと思います! よかったら、読んでください

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

独自ダンジョン攻略

sasina
ファンタジー
 世界中に突如、ダンジョンと呼ばれる地下空間が現れた。  佐々木 光輝はダンジョンとは知らずに入ってしまった洞窟で、木の宝箱を見つける。  その宝箱には、スクロールが一つ入っていて、スキル【鑑定Ⅰ】を手に入れ、この洞窟がダンジョンだと知るが、誰にも教えず独自の考えで個人ダンジョンにして一人ダンジョン攻略に始める。   なろうにも掲載中

異世界でナース始めました。

るん。
ファンタジー
──現代日本の看護師として働くスミレ(26)は疲れ果てていた。 が、ある日突然異世界へ巫女?として召喚された……!! 召喚理由を聞くと病の王女を治してほしいとのことだったが、魔法なんてゲームでしか使ったことがないし当然できない。 元の世界へ帰ることはできないと告げられたが、元の世界に何も未練はない。ただ、病棟に入院前していた患者さんに会えないことを寂しく思うぐらいであった。 魔法も使えず、このまま王宮に腫れ物…?の様に扱われるぐらいなら、王宮を出て一般人として(というか魔法が使えないので一般人)働き、生きていきたいと考えていたところに街の診療所で働く医者と出会い異世界でナースとして働くことに───? ※初投稿です。趣味でゆっくり描いていきます。 誤字脱字、文書を書くのは初めてなので拙い部分が目立つと思いますが、頑張って書いていきますので よろしくお願いします。 ★しっかり長編を読みたい方にオススメ! ✩閲覧ありがとうございます!! 作品を気に入って頂けましたら感想も是非お待ちしております!! 第一章完結しました!第二章もよろしくお願いします! ✩他サイトにも同時掲載始めました!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

外道魔法で異世界旅を〜女神の生まれ変わりを探しています〜

農民ヤズ―
ファンタジー
投稿は今回が初めてなので、内容はぐだぐだするかもしれないです。 今作は初めて小説を書くので実験的に三人称視点で書こうとしたものなので、おかしい所が多々あると思いますがお読みいただければ幸いです。 推奨:流し読みでのストーリー確認( 晶はある日車の運転中に事故にあって死んでしまった。 不慮の事故で死んでしまった晶は死後生まれ変わる機会を得るが、その為には女神の課す試練を乗り越えなければならない。だが試練は一筋縄ではいかなかった。 何度も試練をやり直し、遂には全てに試練をクリアする事ができ、生まれ変わることになった晶だが、紆余曲折を経て女神と共にそれぞれ異なる場所で異なる立場として生まれ変わりることになった。 だが生まれ変わってみれば『外道魔法』と忌避される他者の精神を操る事に特化したものしか魔法を使う事ができなかった。 生まれ変わった男は、その事を隠しながらも共に生まれ変わったはずの女神を探して無双していく

処理中です...