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学園まで(解決?)
しおりを挟む貴重品を乗せている荷馬車に知らない人を乗せるわけにはいかないので、申し訳ないけど元の荷馬車に盗賊達をグルグル巻きにしてから放り込み、女性達にも乗って貰う。
野生の勘で離れていた盗賊達の馬に引かせていざ出発。
森を抜け街道を進み、暫くして王都の関所に辿り着いた。
逃げ出した人身売買の商人だけ捕まえられなかったのが残念だったけれど。一体どこへ行ってしまったのだろう。今度会ったら絶対捕まえてやる。
犯罪奴隷制度はあるけど、攫って売ったら当たり前に犯罪だからね。奴隷に登録されたら判別出来ないのが厄介なところだけれど。
そうして、攫われた人達も預けてはい、万事解決!となる筈だったのだけど……
「どうしますか?」
「この子、帰る場所がないのね」
「うーん」
「現実的には孤児院に預けるのが良いかと」
結局、フードを被った子が一向に喋らないし私のスカートを握って離さない為、警邏隊にも預けられず途方に暮れている。
しかし、もう学園の寮に入らなければいけない。
「警備の者達に預けて、一緒に帰って貰えば良いのでは?カーベニオンには色々仕事も保護法もありますし」
「レナってたまに現実的だよね」
「解決策を提案しているのに、何故不満気なのですか」
「だって攫われて、助けられてってまだ半日の話だよ?怖いんじゃないかな?」
「それはそうでしょうけれど、私は坊ちゃんの日程を管理する義務があります」
「あなた、まともな面もあるのね……」
エリザベス嬢は一体私をなんだと思っているのか。
「そんなに可哀想だと思うなら、坊ちゃんの小間使いとして連れて行きますか?」
すると、フードの子はパッと顔を上げて私を見つめた。まあ、可愛いらしい黄色の目。ん?黄色の目?
「わ、わたし、あの、あなた様が良いです!」
待って、なんだかフードがピクピク動いてるけれど?
「わた、わたしまだ非力ですけど、役に立ってみせるので、どうかお願いします!師匠!」
「「「師匠??」」」
興奮したその子のフードが脱げて、ツンと立った大きな耳が頭の上でピクピクと動いている。
これは、獣人族の子?
「あなた…」
「わ、わたし、黒猫族のミーネは、あなたについて行きたいのです!」
そう言って、ミーネは真っ直ぐに私を見つめる。
「え?私?助けたのは坊ちゃんですよ?」
「そ、それはありがとうございました!で、でも、あの俊敏な動き、悪党への無情な判断、配下への指示!どれも強者のなせる技!」
「えーと」
なんか私極悪感出てない?
「つまり、次々と盗賊の脚を折って渡る素早さと無情さ。護衛騎士達への指示……ってことかな?」
「はいなのです!」
「護衛騎士にはただ偉そうにしてただけよね?」
「いやいや、的確に指示したじゃないですか~」
エリザベス嬢はさっきから酷くない?
「まあ、小間使い程度なら寮へ置いておけるんじゃないかしら?流石に学園内は連れて行けないけれど」
「私、絶対師匠の邪魔は致しません!」
私そんな器じゃないんだけれど……妙に懐かれちゃったな。ケモノっ娘だから絶対ハーレム要員だと思ったんだけど、まさか私にこんなイベントが。
「ミーネは……ミーネはずっとお師匠様を探していたのです!ついに見つけました!これからよろしくお願いします、師匠!」
目がキラキラと輝いて、頬まで赤くして言われたら、断れないじゃないのよ~!
「分かりました。私自身未熟で教えられることは少ないけれど、それでも良ければ付いてきなさい」
「はい!」
可愛い~!黒猫は人懐っこいからついつい猫の子を見てるよう。思わずミーネの不揃いな短い黒髪を撫でる。
「明日は髪も整えてあげます。こんなに短く……苦労してきたのですね」
「これは、ちょっと資金が必要で売ってしまったのです」
「それが苦労だということです」
「そうですか?髪を売ったお陰で師匠に見つけて貰えたのです。ミーネは満足しています!」
「なんて健気なの…」
エリザベス嬢、そうですよね。健気で可愛いですよね!
「万事解決したね!そろそろ行こうか」
「っは、はい!よろしくお願いします」
男の人が苦手なのかしら?ミーネが私の陰に隠れてしまう。まあ、商人に攫われて、盗賊に襲われて怖くなるのは当たり前ね。
それにしても、商人は何処へ行ったのかしら?
取り逃がすなんて、私もまだまだってことね。反省しよう。
~~~~~~~~
「ほら、チビ達これで飯食うぞ」
やった~!とはしゃぐチビ達に、思わず笑ってしまう。盗賊の報奨金を丸々くれるなんて太っ腹なのかそれか、ただの馬鹿だろ?
ただ攫われた振りして震えてこんな金貰えたんだ。今日はついてたね。
こんな不思議な依頼なんてもう無いだろうが、暫くは食い繋げられるから有り難いことだ。
何がしたかったんだか、あの嬢ちゃんは。
「変なことには関わらない、深掘りしない」
スラムの掟ってね。
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