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学園まで
しおりを挟む誕生日パーティーも終わり、あっという間に学園に行く日がやってきた。
フェンのことは公然の秘密だけれど、私がフェンリルと契約したのは秘密なので、瞬間移動が使えないのが悔やまれる。まあ、まだ亜空間を開いたことはないんだけれど。
今日まで準備を重ね、散々親子水入らずで過ごしたんだけれど、奥様は離れがたいよう。さっきからぎゅうぎゅうと坊ちゃんを抱きしめている。
「母さん、苦しいって」
「良いですか。何事も程々に。魔法の威力はおさえて、人様に怪我を負わせないようにね」
「心配事はそこ?」
「あはは、そこ以外はテオンは心配いらないってことだね」
「エイル様、それはフォローではないのでは?」
あはは!じゃないんですよ、エイル様。
「エイルがまだ学園にいてくれたら良かったんだけれど、早期卒業してしまうのは仕方ないこと。くれぐれも怪我を負わさないでちょうだいね…」
「大丈夫です、私が付いておりますので」
「それが心配なのよ」
「なんと!後処理は自信がありますのに」
「後処理よりも事前回避!」
「かしこまりました」
「全くもう…」なんて溜め息をつかれたのは心外ですよ、奥様。
「テオン。くれぐれも家名に甘えることなく、精進してこい。……程々に」
「父さんまで……」
とか言いながら寂しそうな御館様。坊ちゃんは規格外でもまだ子供だもんね。親としては心配な筈。
「大丈夫、ちゃんと魔法の制御を学んで帰ってくるよ!安心してね、父さん、母さん、兄さんも」
「僕は心配はしてないよ。レナもフェンも一緒だしね。たまには手紙を出して欲しいな」
「はい!必ず出します!」
そうして、私達は意気揚々と馬車へ乗り込んだ。後ろには騎馬の護衛数名と、に馬車が一台の大移動だ。
「エイル様が早期卒業?!そんな……」
「学園にいた時に聞かなかったの?」
「学年が離れていたので中々お会い出来ず……」
「兄さんは優秀だから当然だけどね」
馬車の中には坊ちゃんと私。そして、エリザベス嬢も一緒だ。フェンはとりあえず馬車の外を走っている。
どうせ同じ場所へ行くのだから、警護もしやすいという理由で、エリザベス嬢は昨日から城に泊まっていたのだけれど……
「エイル様がいるいない関係なく、学園では勝負ですよ、エリザベス嬢」
「なんであなたが一緒に乗ってるのよ……と言いたいけれど、良いわ!テストでは覚悟なさい!」
「飽きないね~2人とも」
「テオンは黙ってて!」
「嫌だよ。馬車の中は狭いんだから、もっと楽しく凄そうよ」
「道のりは長いですしね。カードゲームでもしますか?」
「良いわね!」
そうして、私達は坊ちゃんが開発したトランプをしたり、おやつを食べたり、野宿したりと王都への道のりを我慢強く過ごした。
途中、魔物避けがあるとはいえ、魔物の群れを予め狩ったりと私的には順調な度だった。
途中の大きめな街へ寄れば、冒険者ギルドへ寄り狩った魔物を換金する。たまに討伐依頼が出ている魔物だったりすると料金が上がるので、正直楽しくて仕方なかった。
将来は馬車で旅する冒険者になろうか?
『テオンの侍女ってやっぱり変』
換金する度にエリザベス嬢から頂くお言葉もむしろ褒め言葉になってきた。
このまま私だけが得をする旅になるかと思いきや、そこは坊ちゃんの旅路。
王都へ入ろうかという境界の森の奥で事件は起きた。
なんだか魔力がざわついていたので、護衛を先に行かせると、荷場所が盗賊に襲われているとのこと。
これは迂回も出来るけれど
「坊ちゃんどうしますか?」
「聞くまでもないでしょ?助けるよ!」
おお、その気概やよし!
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