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誕生日パーティーの私
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????????
街の路地裏で、井戸端会議が盛り上がっている。
『聞いたかい?なんでも、東の方でフェンリルが出たらしいんだよ』
『聞いたよ~、何とも惨かったらしいじゃないか!奥方とご長男が死んだんだって?』
『俺は新聞で読んだぜ!確か領主様も怪我して動けねーって話だ』
『何でフェンリルなんか……ここ100年出てなかったんだろう?』
『詳しくは分からんが、災難なことだよ。ご長男様の誕生日でお偉方も集まってんだから被害がどれほどか検討も付きやしねえ』
東の端?ああ、なんか表で新聞屋が騒いでたな。あたしには関係ない話だ。
『奥方なんて、綺麗で有名な方じゃないか、ほら!あんた新聞寄越しな!』
『なんでえ!俺の金で買ったんだぞ!』
『ケチケチしないんだ、どうせ載ってる絵だけ見て終わりな癖に。ほら!この人だよ!婚姻式の時に話題になったもんだ……悲しいことさね』
どれどれ?あー…なんて綺麗なんだろう。
きっと息子も綺麗な顔してんだろうな。上の人ですらころっと死ぬんだから、明日は我が身ってね……
『何見てんだい!どっかいきな!!』
????????
フェンリルの騒動から帰って、私は泥のように眠った。思いの外心配というストレスが負担だったのか、契約が負担だったのか。
子フェンリルは額に魔石もなかったので、魔物で大型の銀狼だとして育てることになった。
フェンリルだと知るのはあの日黒の森に行った部隊と御館様、奥様と執事長。
私といえば減給にはならなかったものの、坊ちゃんを助け出したのに、危険な行為をして軍規を乱したとしてボーナス無し!くうう私のボーナス……
「レナ、顔!」
「私はいたっていつも通りでございます」
「いやいや、目がいつもより座ってるからね?」
そうは言われても、これは私の予想外なことなので仕方がない。
やっとボーナスがないことに目を向けられるようになったところで、今日は待ちに待ったエイル様の誕生日パーティー!
これまで花の手配、使う食器の種類、流行りを取り入れつつ伝統も入れる飾り付け、招待客リストに合わせての部屋の用意から料理に飲み物まで、ありとあらゆる進行に携わり、目が回るようだった。
けれども、祭って準備の方が楽しかったりするのよね。テンションが上がって疲れなんて感じなかった。
それなのに、今疲れてる。大分疲れてる。
「レナはいつもおさげだし、たまには下ろしても良いかもね」
「でもイヤリングが目立たないじゃない?」
「ネックレスだけ目立たせる?」
「それなら、私が合いそうなの貸してあげるわね」
「いやいや、奥様!お待ち下さい!」
これは一体全体どういうことなのか?!そしてそのネックレスは怖くて着けられません!!
全てをチェックし終わったと思ったら、奥様の衣装部屋へ連れてこられて始まったファッションショー。いや、私忙しいんだけれど?!
「私は侍女服で参加致しますから」
「正式なパーティーでは、お付きもそれなりのドレスを着なきゃいけないのよ」
「いや、でも私は仕事が」
「それを言ったら、侍女としてパーティーに出席して流れを見るのも仕事よ?」
これだから奥様には勝てないの!
「ううっ」
「何もエイルのパートナーとして出席しろっ言ってないのだから、気軽に考えましょ」
「誕生日パーティーでそんなことをしたら婚約と間違えられますよ……」
「……パートナーとして出ましょう。そうしましょう!」
「奥様、これ以上いじめるとレナが拗ねますので」
「ちゃちゃっとやってしまいましょう」
流石坊ちゃんのハーレム要員にはならなかった使用人の鑑のようなご先輩方!!
なんだかんだ連携でも結局おめかしするんじゃないかーーー!!
街の路地裏で、井戸端会議が盛り上がっている。
『聞いたかい?なんでも、東の方でフェンリルが出たらしいんだよ』
『聞いたよ~、何とも惨かったらしいじゃないか!奥方とご長男が死んだんだって?』
『俺は新聞で読んだぜ!確か領主様も怪我して動けねーって話だ』
『何でフェンリルなんか……ここ100年出てなかったんだろう?』
『詳しくは分からんが、災難なことだよ。ご長男様の誕生日でお偉方も集まってんだから被害がどれほどか検討も付きやしねえ』
東の端?ああ、なんか表で新聞屋が騒いでたな。あたしには関係ない話だ。
『奥方なんて、綺麗で有名な方じゃないか、ほら!あんた新聞寄越しな!』
『なんでえ!俺の金で買ったんだぞ!』
『ケチケチしないんだ、どうせ載ってる絵だけ見て終わりな癖に。ほら!この人だよ!婚姻式の時に話題になったもんだ……悲しいことさね』
どれどれ?あー…なんて綺麗なんだろう。
きっと息子も綺麗な顔してんだろうな。上の人ですらころっと死ぬんだから、明日は我が身ってね……
『何見てんだい!どっかいきな!!』
????????
フェンリルの騒動から帰って、私は泥のように眠った。思いの外心配というストレスが負担だったのか、契約が負担だったのか。
子フェンリルは額に魔石もなかったので、魔物で大型の銀狼だとして育てることになった。
フェンリルだと知るのはあの日黒の森に行った部隊と御館様、奥様と執事長。
私といえば減給にはならなかったものの、坊ちゃんを助け出したのに、危険な行為をして軍規を乱したとしてボーナス無し!くうう私のボーナス……
「レナ、顔!」
「私はいたっていつも通りでございます」
「いやいや、目がいつもより座ってるからね?」
そうは言われても、これは私の予想外なことなので仕方がない。
やっとボーナスがないことに目を向けられるようになったところで、今日は待ちに待ったエイル様の誕生日パーティー!
これまで花の手配、使う食器の種類、流行りを取り入れつつ伝統も入れる飾り付け、招待客リストに合わせての部屋の用意から料理に飲み物まで、ありとあらゆる進行に携わり、目が回るようだった。
けれども、祭って準備の方が楽しかったりするのよね。テンションが上がって疲れなんて感じなかった。
それなのに、今疲れてる。大分疲れてる。
「レナはいつもおさげだし、たまには下ろしても良いかもね」
「でもイヤリングが目立たないじゃない?」
「ネックレスだけ目立たせる?」
「それなら、私が合いそうなの貸してあげるわね」
「いやいや、奥様!お待ち下さい!」
これは一体全体どういうことなのか?!そしてそのネックレスは怖くて着けられません!!
全てをチェックし終わったと思ったら、奥様の衣装部屋へ連れてこられて始まったファッションショー。いや、私忙しいんだけれど?!
「私は侍女服で参加致しますから」
「正式なパーティーでは、お付きもそれなりのドレスを着なきゃいけないのよ」
「いや、でも私は仕事が」
「それを言ったら、侍女としてパーティーに出席して流れを見るのも仕事よ?」
これだから奥様には勝てないの!
「ううっ」
「何もエイルのパートナーとして出席しろっ言ってないのだから、気軽に考えましょ」
「誕生日パーティーでそんなことをしたら婚約と間違えられますよ……」
「……パートナーとして出ましょう。そうしましょう!」
「奥様、これ以上いじめるとレナが拗ねますので」
「ちゃちゃっとやってしまいましょう」
流石坊ちゃんのハーレム要員にはならなかった使用人の鑑のようなご先輩方!!
なんだかんだ連携でも結局おめかしするんじゃないかーーー!!
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