上 下
20 / 34

誕生日パーティーの私

しおりを挟む
????????

街の路地裏で、井戸端会議が盛り上がっている。

『聞いたかい?なんでも、東の方でフェンリルが出たらしいんだよ』

『聞いたよ~、何とも惨かったらしいじゃないか!奥方とご長男が死んだんだって?』

『俺は新聞で読んだぜ!確か領主様も怪我して動けねーって話だ』

『何でフェンリルなんか……ここ100年出てなかったんだろう?』

『詳しくは分からんが、災難なことだよ。ご長男様の誕生日でお偉方も集まってんだから被害がどれほどか検討も付きやしねえ』

東の端?ああ、なんか表で新聞屋が騒いでたな。あたしには関係ない話だ。

『奥方なんて、綺麗で有名な方じゃないか、ほら!あんた新聞寄越しな!』

『なんでえ!俺の金で買ったんだぞ!』

『ケチケチしないんだ、どうせ載ってる絵だけ見て終わりな癖に。ほら!この人だよ!婚姻式の時に話題になったもんだ……悲しいことさね』

どれどれ?あー…なんて綺麗なんだろう。
きっと息子も綺麗な顔してんだろうな。上の人ですらころっと死ぬんだから、明日は我が身ってね……

『何見てんだい!どっかいきな!!』



????????



フェンリルの騒動から帰って、私は泥のように眠った。思いの外心配というストレスが負担だったのか、契約が負担だったのか。

子フェンリルは額に魔石もなかったので、魔物で大型の銀狼だとして育てることになった。
フェンリルだと知るのはあの日黒の森に行った部隊と御館様、奥様と執事長。

私といえば減給にはならなかったものの、坊ちゃんを助け出したのに、危険な行為をして軍規を乱したとしてボーナス無し!くうう私のボーナス……

「レナ、顔!」

「私はいたっていつも通りでございます」

「いやいや、目がいつもより座ってるからね?」

そうは言われても、これは私の予想外なことなので仕方がない。

やっとボーナスがないことに目を向けられるようになったところで、今日は待ちに待ったエイル様の誕生日パーティー!
これまで花の手配、使う食器の種類、流行りを取り入れつつ伝統も入れる飾り付け、招待客リストに合わせての部屋の用意から料理に飲み物まで、ありとあらゆる進行に携わり、目が回るようだった。

けれども、祭って準備の方が楽しかったりするのよね。テンションが上がって疲れなんて感じなかった。

それなのに、今疲れてる。大分疲れてる。

「レナはいつもおさげだし、たまには下ろしても良いかもね」

「でもイヤリングが目立たないじゃない?」

「ネックレスだけ目立たせる?」

「それなら、私が合いそうなの貸してあげるわね」

「いやいや、奥様!お待ち下さい!」

これは一体全体どういうことなのか?!そしてそのネックレスは怖くて着けられません!!

全てをチェックし終わったと思ったら、奥様の衣装部屋へ連れてこられて始まったファッションショー。いや、私忙しいんだけれど?!

「私は侍女服で参加致しますから」

「正式なパーティーでは、お付きもそれなりのドレスを着なきゃいけないのよ」

「いや、でも私は仕事が」

「それを言ったら、侍女としてパーティーに出席して流れを見るのも仕事よ?」

これだから奥様には勝てないの!

「ううっ」

「何もエイルのパートナーとして出席しろっ言ってないのだから、気軽に考えましょ」

「誕生日パーティーでそんなことをしたら婚約と間違えられますよ……」

「……パートナーとして出ましょう。そうしましょう!」

「奥様、これ以上いじめるとレナが拗ねますので」

「ちゃちゃっとやってしまいましょう」

流石坊ちゃんのハーレム要員にはならなかった使用人の鑑のようなご先輩方!!

なんだかんだ連携でも結局おめかしするんじゃないかーーー!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生悪役令嬢は、どうやら世界を救うために立ち上がるようです

戸影絵麻
ファンタジー
高校1年生の私、相良葵は、ある日、異世界に転生した。待っていたのは、婚約破棄という厳しい現実。ところが、王宮を追放されかけた私に、世界を救えという極秘任務が与えられ…。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...