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坊ちゃんの正体

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華美ではないが、風格ある廊下を抜けて重厚感ある扉をノックする。すかさず、中から入るように声がかけられた。

「此度は何をした?」

入るやいなやそう問いかける、黒髪で緑色の力強い目がこちらを睨みつける。寧ろ何用だと聞かない御館様。貴方様も慣れてしまったのですね……お疲れ様です。

「坊ちゃんが風魔法で空を飛びました」

「は?また新しく発動したのか?」

「水、炎、土だけでなく風も操れるみたいですね」

「みたいって呑気だな、お前は…」

「恐れ入ります」

「いや、褒めてない」

マイペースって大事なんだと思うんだけどな?慌てても仕方ないし…
若干呆れたような御館様は、坊ちゃんの前へ移動する。

「テオン」

「はい」

「私はいつも何と言っていた?」

「きちんと先生が出来るまでは、魔法は父さんの前か、レナに了承を貰ってから」

「レナに了承は貰ったか?」

「……見せて了承を貰おうと…」

「貰ったのか?」

「貰ってません……」

どんどん縮こまる坊ちゃん。規格外であろうと、父親はやはり怖いらしい。

「こんな時はどうするのだったか?」

「はい。父さん約束を破ってごめんなさい。レナ、次はきちんと相談する…」 

「よろしい」

そう言うと、御館様は両手を広げて坊ちゃんを誘う。坊ちゃんがおずおずと近付くと、がしっと音が鳴りそうな程、だから強く抱きしめた。

「よーし!やはり我が息子はなんと賢いのだ!!」

「と、父さん!髭が」


「3種の魔法が発現するとは!将来は国1番の魔法士だろう!」

また始まった。御館様、親馬鹿なんだよね…。
流石坊ちゃんの親というか、懐が大きいというか、理解力が高すぎるというか。

それもこれも、坊ちゃんが異世界転生の俺つえぇ系主人公だからだろう。

赤ちゃんの頃から落ち着きがあり、寝返りを打つ前から魔法に興味深々で、言葉は歩く前から。文字を覚えたのは3歳という驚異の神童。

無能な振りをして家で冷遇されるどころか、ちょっとドジでぽんぽんと魔法をぶっ放すもんだから神童振りに磨きがかかってしまうという、転生ガチャどころか神に愛された主人公タイプなのだ。
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